やっちゃってる感

私はテレビ東京の「所さんのそこんトコロ」が好きで、よく見ているのですが、ひとつだけ気に入らないコーナーがあって、それは「開かずの蔵」を発掘するというものです。

この「開かずの蔵」のVTRを見ていて、本当にいつも思うのですけれど、文化財の理解に乏しい素人のお笑い芸人を、場を盛り上げる程度で派遣しないで欲しい、ということなのです。結論から申し上げますと、本当に「人の家の物の扱いが雑」「文化財に対する扱いが雑」ということです。

芸人を派遣しているテレビ側(製作者側)も、「所さん」というネームバリューに安心して公開している持ち主も、どっちも「素人」だから仕方ないのは分かります。ただ、価値を考えないで普通に触ったり開けたりする行為は、文化財の保護という観点から反する場合があるし、この番組が狙っているところの、いわゆる「お宝の価値」を下げます。

古文書や掛け軸も、普通の本を開くみたいにペラペラやっていますが、そういう開き方では紙が痛むし、場合によってはビリビリっと切れます。虫損で紙と紙が貼りついている場合もあるから、開け方次第では、文字や絵の部分が破けることもあります。

たいてい白い手袋をして触っているようですが、なんにでも手袋すればいいわけではありません。手袋を付けて触れることで、却って繊維が絡んで、古文書などが痛んでしまう場合もあります。

現場には、鑑定士みたいな人も来ている場合があるけれど、要するにこの人たちは、古いものの扱いに慣れているのではなくて、扱いが雑なだけな人もいます。彼らは、これらが現金に代わることを知っているから興味があるだけで、正しく文化的価値を守っているわけではありません。

今日の放送のように、「郷土史家」という肩書の方が来ることがあるようですが、彼らの中には、いわゆる「旧家」という場所に、自分が正面突破できないので、こういう機会に乗り込んできているだけということもあり、後で名前を頼りに書いたものを調べてみると、モノによっては、トンデモ考証をしている人もいます。

念のために書いておきますが、私は「所さん~~」は好きです。お笑い芸人さんがロケに来ること自体もいいです。懐かしい顔ぶれが活躍していれば、私も嬉しい。ただ、せめて彼らに正しい文化財の扱い方を、きちんとプロがレクチャーして欲しいわけです。貴重な折本を、ガストのメニューみたいに開くような扱いは、文化財の保護の観点からもやめさせるべきです。掛け軸を巻物でも開くように「空中で広げる」のも、完全にバイヤーの行為であって、文化財としての扱いは、ド素人並みです。

扱い方が分からないなら、最初から触らない。触らせない。これが原則で、分からないけど「金になりそうなものがあるから引っ張り出す」という、まさに「火事場泥棒」的なスタンスは、せっかくお蔵を開いてくれた持ち主にも失礼だから、改めるべきでしょう。彼ら持ち主が「どうせ価値が分からないから大丈夫」と思って調子に乗っているのであれば、製作者は厳しく責任を問われるべきです。なぜなら、「メディア」という力を使って、文化財の破壊を助長しているからです。

少なくとも、同局の「なんでも鑑定団」から、ひとりぐらい「鑑定士」という人を派遣するか、古文書史料の扱いを分かっている玄人の学芸員を呼ぶのが妥当で、素人のお笑い芸人は、どういう扱い方をすればいいかを教わってから触れればいいと思います。

現代人は、基本的に「古い紙」の扱いに慣れていません。「現代の紙」と同列に扱うところが、すでに間違いです。汚い紙=価値がない、という現代的発想も弊害です。古文書が読めなくても、「紙の扱い」は理解に努めて欲しいですね。

すみません。今日はこんな感じです。

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