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Lag Phase関係の論文のメモ

読んだ論文を片っ端から忘れ、引用が必要になった際にまた探して読み直すという、シーシュポスみたいなことをしていたのでメモをつくりました。

自分が分かればいい、という範囲で書いているので丁寧ではないけど専門が近い人にはめちゃくちゃ有用な気がします。随時更新します。

Diauxic Shift (2015)

Diauxic Shift の間に観察されるLag Phaseは長年、新しい代謝状態に遺伝子発現を持っていくためにかかる時間だということが示唆されてきた。

しかしglucoseからlactoseへの代謝切り替えにそんなに時間がかかるか?予め準備しておけばええやん、ということで色々と研究をしていたら、Lag Phaseの長さはSingle cell levelでは相当ばらついていることが分かった。

実はglucoseがなくなりlactoseがあるということをちゃんとした精度で測定するにはそれなりのエネルギーコストが必要で、これを重視するとglucose存在下での成長速度が下がってしまう。一方でそれを重視しないと何が存在しているのか分からず正しく代謝経路を活性化するのに時間がかかる。

この意味でのGrowth-Sensing Tradeoffがあるので、それを入れ込んで適当にモデル作ったら実験とうまく合ったよ、という話。(2020.04.28)


Lag Phaseのトランスクリプトーム解析 (2013)

E.ColiのLag Phaseにおけるトランスクリプトーム解析をやったよ、という話。培地はM9にアラビノースを足したやつで、Lag phaseのかなり早い段階でアラビノースをPPP経由で代謝するための酵素群の発現が一気に上がっている。

そもそもそんなに早くアラビノースの存在を検出出来るのもすごいなと思うが論文の主題はそっちではなく、アラビノースの遺伝子群を一気に上げて暫く経った後に成長関係(リボソームとか)の遺伝子群の発現を上げているということ。

こういう、限られた資源しか手元にない場合にはまず一部だけにめちゃくちゃ投資して、そこをガッツリ動かしてから他に波及させていくという戦略をbang-bang strategyというらしい。戦後日本の傾斜生産方式みたいなやつかな。Baranyi growth modelでbang-bang strategyをやったら最適性が示せたよ、というおまけがついている。

ちなみにこれはlagなのでいいのだけど、2019年にStationary Phaseのトランスクリプトーム解析とプロテオーム解析を、紫色細菌の一種であるRhodobacter sphaeroidesにやった論文が出ており、Stationary Phaseではpost-transcriptional regulationがかなり強くなってTranscriptomeとProteomeの結果は相当違うということが示唆されている

(なんか埋め込めなかった:https://bit.ly/2yP6VY4)

(2020.04.28)

Lag Timeの進化実験 (2014)

Balabanグループの実験。e.coliをオーバーナイトカルチャーしてStationaryに入れ、それをまた翌日新しいメディアに移す。ただしその時MICの15倍のアンピシリンを入れる。アンピシリンは一定時間Tが経ったら除く。

T=3, 5, 8 hrsに関して実験が行われ、最終的にe.coliはラグタイムが伸びるように進化した。

mutationが確認されたのはTA moduleとaminoacyl-transfer
RNA synthetaseだった。

まぁとても自然なことだけども、ラグタイムの平均が伸びると同時に分散も大きくなっている。Tの揺らぎは十分小さいので、分散の拡大はTへのadaptationだけでは説明がつかないっちゃあつかない。(2020.04.28)


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