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フィルムからオンラインへ(#5 ニュース映画で現代社会を勉強しましょう)

フィルムからオンラインへ

政策ニュース映画はフィルム媒体によって記録され、公開後多くがそのまま保管されましたが、所在が不明になっているものも多くあります。昭和50年年代頃から、それらのいくつかはビデオテープに変換され、図書館や博物館などで公開されています。それらも既に劣化が始まっていますが、元のフィルムはそのタイミングで破棄されたものも多くあります。

さらに平成に入ってからメディア技術がデジタルに移行し、アナログビデオ形式から、デジタルに変換されています。そのままDVD化されて、図書館や博物館などで公開されている例もありますが、さらに平成20年以降から、動画サイトの自治体チャンネル等、オンラインで政策ニュース映画を公開している例も登場してきています。

媒体2

調べてください: メディア技術の進歩の歴史と、社会、経済の状況を対比してみてください。特に、高度経済成長、バブル、デジタル技術の登場、インターネットの民間開放などのトレンドは重要です。それらはいつ起こり、どういう変化をもたらしましたか。

多くの映像が、こうした媒体の変換のタイミングで破棄されたり、あるいは放置されて行ったようです。ネット上には、多くの政策ニュース映画が公開されていますが。それらの背後には、そこまでたどり着けていない貴重な映像が数多く存在しているのです。

忘れ去られた記録

映画や写真の撮影に使われるフィルムは、いくつかの層から構成されていますが、特に画像層という画像を作る部分と、支持体(ベース)という画像層をサポートする層を張り合わせて構成されています。

1930年代に使われたのが、硝酸セルロースフィルム(ニトロセルロース)ですが、発火し易い材質だったので、酢酸セルロース(TAC)のフィルムが開発され、1940年代半ば以降はこれが使われ始めました。別名、安全フィルムとも言います。さらにポリエステルフィルム(PET)のフィルムが開発され、1980年以降に広範に使用されるようになります。

このうち、TAC製のフィルムは、ベースとなるセルロースアセテートが有機物ですので、経年変化、化学反応を起こして少しずつ劣化していきます。酸加水分解によって酸を発生しますので、これをビネガーシンドロームと呼びます。日本の環境に近い、湿度70%、温度29度環境では、30年程度で発症すると言われています。
実は、戦後に撮影された政策ニュース映画の殆どが、この劣化の恐れがあり、既に多くのフィルムの劣化が始まっています。自治体による政策ニュースは、公文書ではなく行政刊行物の一種として扱われており、保存、管理に関する規定はありません。そのため散逸してしまったものや媒体フィルムの劣化などの問題を抱えているものなども多くあります。
さらにそれらの刊行物は、大量に複製されて配布されたため、史料として比較的ぞんざいな扱いを受けているケースが多く見受けられます。例えば川崎市には、「市政時報」という行政刊行物があり、昭和24年5月20日に、川崎市名義で創刊されています。以降毎月20日に発行され、現在も「かわさき市政だより」という名称で、毎月2回発行されています。
川崎の市政ニュース映画は、昭和27年から製作されていますが、同時期の川崎時報を見ると、ニュース映画と同様なテーマや、撮影時のアウトテイクらしい写真などが使われており、関連性が非常に高いようです。

時報

昭和24年の創刊以降、26年までの分は、川崎市文書館に保管されています。しかし上の写真でわかるように、相当に劣化が酷く、複写に耐える状態ではありません。セロテープで留めたものがあったり、赤鉛筆の書き込みがあったり、文書館で保管するレベルではありませんが、行政刊行物は、ほぼこういう存在だったのでしょう。川崎時報は、京浜工業地帯の成立を記録した貴重な史料なのですが、他の地域での行政刊行物の扱いが推測できます。


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