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ニュース映画に見る交通機関(#6 ニュース映画で現代社会を勉強しましょう)

政策ニュース映画を観てみよう

実際に政策ニュース映画の例を観てみましょう。まず言っておきますが、行政の広報映画ですので、決して面白いという代物ではありません。

フィルム自体が劣化しており、映像も乱れています。何より時代が違うので、時代背景から、衛生観念や価値観、倫理観などが異なっており、今の価値観からすると不愉快に見えるものなども多く含まれています。しかし、それが我々の社会のかつての真実の姿であり、両親や祖父母がその中で過ごしてきたということなのです。

政策ニュース映画の例として、神奈川県のニュース映画「神奈川ニュース」のうちの一つを取り上げてみます。昭和27(1953)年7月24日付で公開された、「川崎市政28周年」と題されたもので、30秒程の長さのものです。

タイトルに示したようなコマが次々と現れ、以下のナレーションが入ります。

市制28周年を迎えた川崎市では、7月1日、その記念行事を行いました。人口37万、無軌道電車も走るスマートな港湾工都としてのめざましい発展ぶりを喜び合う一日でした。

こうした短い映像が5,6本集まって、一つの政策ニュース映画として放映されました。このスタイルは、ほぼ全国で共通しています。自治体の周年記念は、政策ニュース映画では定番のテーマで、多くの地域でしばしば取り上げられています。この映像は、神奈川ニュースのうち、川崎市に関係するものを集めた、Youtubeの「川崎映像アーカイブ」にあります。

次の図は、私たちで作成したこの映像の構成表です。このように、コマ割りが細かく、短い時間の中が、目まぐるしく展開します。さらにコマごとの映像の対象が明確で、冗長性が非常に少ないです。そのため、ナレーションがかなり説明的に付加されています。

構成表

この「川崎市政二十八周年」の映像は、川崎市政ニュース映画の中でもごく初期のもので、30秒ほどの長さです。オープニングを含めて八つほどのシーンから構成されており、各々が2、3秒で移り変わります。初期のものは、総時間が短く、ナレーションも比較的少ないものが多く、本ニュースも、80文字ほどです。旧川崎市庁舎の前を通るトロリーバスや、川崎港、川崎競輪場、さらに川崎駅などが映りますが、映像があまり明瞭ではないので、ナレーションが貴重な情報源です。
このように、政策ニュース映画は、基本的に映像とナレーションから構成されています。しかし昭和2,30年代のものは、機材の関係で映像の解像度が低く、また映像自体が劣化していることもあり、このナレーションが動画の分析においては重要な要素となっています。特に、被写体になっている設備や地域などの変化が激しい都市部では、ナレーションによって初めて理解できるものが少なくありません。政策ニュース映画は、ニュース映画という性格から、映像化されているものに対しては、ほぼシーン毎にナレーションが付加されているので、それらを用いて、映像をより深く理解することができるようになります。

無軌道電車

さてこのナレーションの中に、「無軌道電車も走るスマートな港湾工都」という表現があります。

調べてください: 「無軌道電車」とは一体何のことでしょうか。ごく短期間しか使われなかった用語ですが、それはいつごろでしょうか。この「無軌道電車」は、戦後、都市部の交通インフラの確保のために、いち早く整備されて行きました。なぜ「無軌道電車」がいち早くインフラとして採用されたのでしょうか。

「ニュース映画で現代社会を勉強しましょう(7)」に続きます…

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