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情報リテラシー応用(11)

次の課題テーマ:創作

まだ成績表の作成は途中ですが、少し飽きてきましたので、新しい課題を提示します。課題というのは、授業を進めていくための素材だと思ってください。
授業がオンラインに移行せざるをえなかったのですが、その分、過分な課題が提示されているケースが多いと聞いています。暴言ですが、やたらに課題を出す教員は、授業に自信が無いのかもしれません。
個人的には、オンライン授業になって、素材から資料まで、全部デジタル化をせざるを得なくなり、自分の授業コンテンツを見直すいい機会になりました。また教室では話など聞いていなかった学生も一定数いましたが、ネットワーク経由ですので、いろいろな質問が上がってくるのが興味深い現象だと思います。
ただ、課題と言うと、脊髄反応的に嫌がったり反発する学生は、どうにかして欲しいですね。その多くは、やたらに課題を出す教員の責任でしょう。

課題の内容は、モノづくりです。
文科系の学生の皆さんには、本質的に学びとして必要なことが3つあると感じています。
グループワーク、コミュニケーション、そしてモノづくりの3つです。
と言うと、違和感を感じる方もいるかもしれません。

モノづくり

まずグループワークですが、本質的に文科系の研究室では、先輩の仕事を継承するという研究の仕方をしません。
研究室の文化もあるとは思いますが、卒業研究は、個人の仕事として行われることが殆どです。
実は、同じ研究室に入るということは、同じような関心を持ち同じような知識レベルやモチベーションを持っているということになります。そのため、卒業研究のテーマとしては、同じようなものになるということがしばしばです。
しかし、あくまで研究を個人レベルで行うので、調査、分析なども、既に誰かがやっていることを、個人作業として繰り返すことになります。そして同じように考え同じように分析をし同じような流れで研究を行って行きます。
大抵が時間切れになって、尻すぼみになってしまうのも、ほぼ共通しています。いかにも勿体ない知的作業を繰り返しているのが、文科系の研究室の傾向です。これはあくまで一般論と言うよりも、自分の研究室の例としてと言ってもいいかもしれません。
要するに、文科系の学生さんは、グループで何かを実現して行き、それを継承して行くということは苦手です。

次にコミュニケーションです。文科系の学生、特に女性が自己分析として、得意なこととして、コミュニケーションを挙げることが多いようです。あえて反論しますが、そういう人は、おしゃべりが好きなだけであって、決して何か目的性を持ったコミュニケーションが得意なわけではないと思っています。
授業では、しばしばグループ課題を出すことが多いのですが、そういう場合は、自主性に任せて余り関わらないのですが、どう見ても課題がお喋りになっていく様子をしばしば目撃しています。
オンラインで授業というコミュニケーションを全てデジタル化せざるを得なくなり、学生相互のやりとりも、例えばZoomで言えばブレイクアウトルーム機能などを使うと、それらがはっきり見えて来ます。
あえてはっきり言いますが、言語のみでのコミュニケーションは、こと学生さん相互においては、相当悲惨な状態です。

結局、デジタル化してオンラインに流すということは、音声、言語、映像以外のコンピュータが本来扱えない情報を全てカットすることでもあるので、コミュニケーションの本質的な部分が顕在化するためでしょう。
オンライン授業に移行して、教員の授業スキルが見えてきて、格差があることがわかったという意見を学生さんから聞いたことがありますが、それはそのまま、学生さんの学びにも格差を生み出すことでもあると思ってます。コミュニケーションは相互作用ですから。

そして最後に、モノづくりの訓練も必要です。元々、社会系の学びは存在しているものを対象にして、分析作業を中心にするため、なにかを「つくる」、「作る」、「造る」、「創る」行為に対しては、自覚的に学ばないと身につきません。別にモノづくりはしないからいいです、という意見も聞くことがあります。
でも、レポートや論文を書いたり、プレゼンテーションをすることも、モノづくりではあるわけです。
工学系の専攻の人は、モノづくりを専門としてますが、レポートが書けないという人も結構いるようです。もしかすると理科、文科という区分とは無関係かもしれません。

ここでは、「創作」というモノづくりに挑戦してみましょう。
それは純粋な「創造」ではなく、ある一定の制約の元でモノづくりをしていく作業です。例えば、工業製品で言えば、エンジニアという職種の人は、発明家ではありません。目標となる製品の仕様や使える部品、さらに価格など様々な制約条件があり、与えられた部品などを組み合わせることで、より目標に近い製品を発見して行きます。こうした設計作業を、類似設計(routine design)と呼んでいます。

ここでは、類似設計的な創作作業の例として、商業広告を取り上げます。
商業広告も制約の下で作られています。映像を使ったコマーシャルを作りましょう。ツールとして使うのは、PowerPointです。

PowerPointは、スライドを投影する、プレゼンテーションツールですが、そもそもプレゼンテーションとは何でしょうか
いろいろな意見があるとは思いますが、ここではこのように定義します。
「公的な情報伝達行為」
プレゼンテーションとしての条件には、①「公的」であることと、②「情報伝達」の2つあります。

「公的」な行為ですので、プライベートなお喋りとは違います。さらに、「伝達」行為ですので、説得(Persuasion)や議論(Debate)は含みません
説得、議論などを含んだコミュニケーションは、コンテンツやプレゼンターのスキルに依存しますので、今回は取り上げません。
しかし、実を言えば、情報を伝達する行為が成立して、初めて説得でも議論でも成立するため、伝達行為は重要なスキルだと考えてください。

プレゼン

情報の伝達に関しては、ここでは詳細には述べませんが、アメリカの数学者、コンピュータ科学者であるクロード・シャノン(C.E.Shannon)が1940年代後半に確立した、「情報理論」という理論体系が、全ての始まりだと言われています。
情報理論は、シャノンがAT&Tのベル研究所に所属していた1948年に書いた「A mathematical theory of communication(通信の数学的理論)」という論文を切っ掛けとしたもので、簡単に言えば、情報をより正確に効率よく伝達するための通信技術を、特に数学的に考察したもので、現在の情報技術を支える最も重要な理論的基礎と言われています。
こうしたシャノン流の情報の捉え方は、私たちの情報の捉え方にも、大きな影響を与えています。そこでは図に示すように、5つの要素(実体・Entity)からコミュニケーションを捉えます

①情報発信者(information source)
②送信器(transmitter)
③チャネル(channel)
④受信器(receiver)
⑤情報受信者(destination)

シャノン

重要なのは、情報の伝達を阻害するものとして、もう一つの要素を想定することです。

⑥ノイズ(noise)

要するに雑音です。例えば授業で、教師の口癖が気になったとか、ネクタイの柄に気を取られて話が入ってこなかったみたいな経験はありませんか?
実はプレゼンテーションにおいては、このノイズをどう扱うかという問題があります。
ですので、情報伝達を甘く見てはダメだという話です。

プレゼンテーションは、授業を代表とした口頭のリアルタイムコミュニケーションが原則ですが、最近はオンライン形式のものも決して珍しくなくなってきます。さらにオンラインでも、オンデマンド形式の他に、ネット会議システムを使ったリアルタイム形式のプレゼンテーションも登場しています。
ここでは、動画を作成しますが、オンデマンドでのプレゼンテーションにも使えます。
PowerPointが動画のエクスポートを用意しているので、それを利用することになります。

CMの課題ですので、一つ例を挙げておきます。

以下は、昨年のマイクロソフトのノートパソコン「サーフェイス」の「大学生にノートパソコンはいらない?」というCMで、当時結構バズりました。


結構長い映像ですが、前半は「大学生活にノートパソコンは要らない」というテーマで、後半はそれに対する反論的な構成になっています。スマホは、情報の消費ツールですので、端的に言えば、モノづくりをするにはPCが必要です。
「解き放て、想像力」というキャッチコピーが最後に出てきます。

煽情的な内容のCMですが、実は、このCM自体、モノづくり、CM制作の基本に則ったものです。つまり制約の元で作られている、類似設計による商業広告なのです。

ではコンテンツの制作について考えて行きましょう。
PowerPointの枚数は、3枚です。


※トップ画像は、わたなべさんの工場の写真をお借りしました。モノづくりニッポンをイメージする写真なので、どうしても使ってみたかったのです。プロの写真家さんだそうで、気が引けますが。お礼申し上げます。







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