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文科系のための情報科学 授業資料(2)

コンピュータのいくつかの顔

現在の学問体系は、文科、理科に分かれています。さらに文科、理科もまた分かれています。文科には、人文と芸術が含まれています。また理科には工学と理学の2つの領域があります。

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それらは例えば、以下に細かく解説されています。

「社会のなかの学問とは」―「文系」と「理系」、「理学」と「工学」の区別を超えて,小林傳司

非常にざっくりとした分け方ですが、特に理科の分類について知っておいてください。工学とは、モノづくりの学問であり、目標は優れたモノを作ることにあります。
理学には、物理学、生物学、数学、化学、医学などが含まれています。この世界では、真理を探究することが、学問の重要な役割です。
時は流れ、形あるものは壊れ、命あるものは必ず死ぬ、それは真理です。
つまり、理学には絶対的な正解が存在します。
同じ理科の領域でも、工学と理学ではありかたが異なっています。
コンピュータは、主に工学の対象でした。もちろん、その背後には数学を中心とした理学の裏付けがありますが、あくまで機械という人工物です。

何が言いたいかと言えば、今までコンピュータは、モノづくりの学問の中で、作る側の立場で、取り上げられてきたということです。

しかし、コンピュータがより広く使われるようになって、使う側の人々も増えてくると、「作る」だけではなく「使う」側の立場からも学問の対象となって行きます。
後程触れますが、コンピュータは広い意味で言う、武器として開発されましたが、民生化され商用に使われたのは、オフィスを中心としたビジネスの現場でした。
そこで事務機器として、コンピュータを取り上げるようになります。一般に「情報リテラシー」と呼ばれている科目が、それに当たります。
簡単に言えば、そこではコンピュータの操作を通して、事務仕事を効率的に行うための手法などを学びます。
おそらく文科系のコンピュータの学びは、ほぼこの範疇でしょう。
皆さんも、そう考えているのではないでしょうか。

21世紀になって、技術が進歩したと言うより、ユーザ側の用途も大きく変化し、さらにスマホを中心とした通信機器とコンピュータの融合が当たり前になった今では、「作る」か「使う」かといった、単純な区分では、もうコンピュータとの多様な接し方がカバーし切れなくなってきているように思えます。

本授業では、コンピュータを、5つの側面から理解していくことを目指していきます。

1.Computerは「道具」である
2.Computerは「機械」である
3.Computerは「情報」を扱う
4.Computerは「システム」である
5.Computerは「メディア」である

この5つの顔を持ったものとして、順番に考えていきましょう。
一つだけ、考えておいて欲しいことがあります。

リンクを貼っておきますが、昨年のマイクロソフトのノートパソコン「サーフェイス」の「大学生にノートパソコンはいらない?」というCMで、当時結構バズりました。

内容に関してはどうでもいいのですが、不思議に思いませんでしたか?

パソコンのライバルがスマホ?

そもそも、スマホ、Smartphoneですから、電話の高機能版ですよね。
なぜ電話とコンピュータが対比されるのでしょうか。
そもそも、コンピュータは情報処理機器ですが、電話は情報通信機器に分類されます。元来違う方向性を持った技術なのですが、現在では違和感なく対比されます。

そのこと自体が、もう旧来のコンピュータの捉え方では無理だということを示しているように思えます。

文科系出身の技術者も多くいます。既に文科、理科という区分では、現実社会が捉えきれなくなっている、というより、元来、文科理科という学問体系にあわせて世界が出来ているわけではありません。
こうした近代以降の学問の捉え方は、受験制度の確立と共に一般化して行きましたが、こうした限界があり、今は学際、Interdisciplinaryという学問体系の見直しが行われています。

人工物は説明できないことがあってはならない

そもそも、今使われているコンピュータは、人間が創りあげたものです。
ですので、その全ては、人間が理解している知識に基づいています。
コンピュータの仕組みや挙動の全ては、説明ができます。
しばしば、ブラックボックスのようにコンピュータを捉えることがあります。例えば、「これはおまじないです」とか説明されたりしませんか?
SF作家のアーサー・C・クラークは、「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない」と言いましたが、コンピュータは魔法の箱ではありません。

まず、皆さんに考えてもらいたいことがあります。

課題:コンピュータの中はどうなっていますか? 図で示してください。ついでに、コンピュータの外観も描いてください。

但し、条件があります。その図で、コンピュータの動きが説明できなければなりません
例えば、あなたがコンピュータを使って文章を作っているとしてください。
その時に、私がそばに近づいて、あなたのコンピュータのスイッチを切ったらどうなりますか?

ある学生さんは、「ムカつく」と答えました。
確かに、そうかもしれませんが、どうなるかと言うのは、コンピュータがどうなるかと言うことです。
消えますよね、作りかけの文書は。
それは正しいです。では何故消えるのですか?何が消えるのですか?
皆さんが直観的にわかっているコンピュータの動きを、その図で説明できなければいけません。

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以下に、ワークの用紙を乗せておきますので、そちらに描いてみてください。

あるパソコンショップに、こういうディスプレーのコンピュータがありました。

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このコンピュータの中には、メイドさんが入っているようです。
それでもぜんぜん構いません、工学ですから、絶対的な真理はありません。但し、このメイドさんを使って、電源が落ちた時の「消える」というコンピュータの動きを説明できなければダメですが。

ではしばらく時間を差し上げます。



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