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Webとマーケティング 授業資料(3)

F1のペルソナ(女子大生はどこにいるのか?)

これからやること

これから授業でやることを、確認します。
使うのはWeb、ソーシャルメディアで、対象はマーケティング、ビジネスです。

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まず、ソーシャルメディアを使って、マーケットのリサーチをします。それをソーシャルリサーチと言います。

そのためには、人の繋がりの実態を、理論的に知っておく必要があります。ちょっとした実験をしながら、繋がりについて考えます。
その後、この繋がりを使ったビジネスプランについて考えてみましょう。
最後に、ある商品を設定して、マーケティングプランを考えて行こうと思っています。

ソーシャルリサーチ

最初の課題です。
おそらく殆どの学生さんは、自分の学校にある自動販売機が、世間にあるものと違っているという点には気づいていなかったのではないでしょうか。同じように、あるいは同じ以上に、女子大の中の自動販売機のことは、出入りしていない人にはわかりません。
つまり人間は、自分と異なった属性をもった人々のことは、よくわかりません。

情報が足りない場合、経済学や情報学の世界では、その状態を「不確実・Uncertainty」と言いますが、しばしばステレオタイプ、あるいはステロタイプと呼ばれる考え方が使われます。

ステレオタイプとは、類型化された概念のことで、先入観とか思い込みなどは、まさにそれにあたります。
最もわかりやすいのは、国や民族にまつわるもので、カントリーステレオタイプというものが存在します。

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この図は、Googleの画像検索で、国名で検索して出てきた男性と女性の画像だそうです。

我々日本人は、芸者さんと仙人みたいな老人ですね、こんな人は周りには殆どいませんが、実は他の国に対して私たちが抱いているイメージは、こんなものでしょう。

詳しく知らないものに対しては、とりあえず知っていることからイメージを作ってしまうわけです。

「ステレオタイプとは全ての人間を同一にみなし、一般固定化された考えともなりうるモノなのだ。
ある特定のグループはこうであると決め付けて、それを変えようとしない、そしてメディアが写すことがあたかもそのまま真実であると思ってしまうのだ。 」

池田理知子というコミュニケーション学者の「多文化社会と異文化コミュニケーション」という書籍では、こう説明されています。

ある特定のグループはこうであると決め付けてしまう、それがヘイトや人種差別などに繋がって行く可能性を持つため、危険なことだと言われています。

しかし、このステレオタイプは私たちの周りに溢れていますし、意外にも私たち自身もそれを利用しています。
例えば、この写真は「女子大生」というキーワードで画像検索をしたものです。見事なまでに同じような感じの人が出てきます。それこそみんな違ってみんないい、ではなく、みんな同じでどれでもいい状態ですが、揶揄するように「量産型女子大生」という言葉もあります。
個々の女子大生は、決してこうではないのを知っていますが、世間ではそう見えるということです。

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と偉そうに言っていますが、「大学教授」で検索すると、こんな感じです。みんな初老の男性で本棚の前で、ロクロ回しのポーズです。

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これはしばしばジェンダーの領域で問題提起されます。
Dr.スミス問題というのをご存知でしょうか。

「ドクター・スミスは、アメリカのコロラド州立病院に勤務する腕利きの外科医。仕事中は、常に冷静沈着、大胆かつ慎重で、州知事にまで信望が厚い。
ドクター・スミスが夜勤をしていたある日、緊急外来の電話が鳴った。交通事故のケガ人を搬送するので執刀してほしいという。
父親が息子と一緒にドライブ中、ハンドル操作を誤り谷へ転落、車は大破、子どもが重体だと救急隊員は告げた。
20分後、重体の子どもが病院に運び込まれてきた。その顔を見てドクター・スミスはアッと驚き、茫然自失となった。
その子は、ドクター・スミスの息子だったのだ。」

さて、交通事故にあった父子とDr.スミスとの関係は?

「優秀な外科医」と言えば、男性を想像するというのがステレオタイプだということですが、これを逆手に取ったWeb CMがありました。
フジフィルムの企業広告で、今は公開されていませんが、まさに女性外科医のスト―リーです。

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「世界はひとつづつ変えることができる」というコピーは、とても示唆的ですね。

つまりステレオタイプは、何かよくわからないものを簡単に理解するために多用されます。

ステレオタイプが誤りである、論理的な理由を知っておいてください。例えば、卑近な例ですが、以下の発言を考えてみます。

「彼が二股掛けてたの。女を舐めるんじゃないわよねぇ」
「これ絶対、女子が好きなスィーツだと思う」
これは、典型的なステレオタイプ思考です。
君は女性の代表か?と突っ込みたくなりませんか?
これを、「全称の誤用(false universal)」と言います。全ての女性と自分を混同しているわけです。

「痴漢にあったの。なんで中年男性ってああなのかしら」
これは、恣意的なステレオタイプ設定です。その中年男性は他にも多くの属性を持っているはずです。職業や居住地、学歴、家庭環境、さらに血液型や病歴など様々な属性がありますが、その中で一番関係性が高そうな属性を関連付けているわけです。ステレオタイプ設定をされた「中年男性」はすべて同じ行為をするものと判断をしていることになります。

社会的には、あるいは論理的には否定されるステレオタイプですが、広告やマーケティングの世界では、多用されています。
ある特定の層の人々に効率よく伝達することが可能だからです。
最近では、行き過ぎたステレオタイプ設定は、炎上して逆に広まってしまうことがしばしばありますが、普通のCMにもかなり含まれています。

例えば資生堂のこのCMは、こうした社会的なステレオタイプを利用した優れたCMでしたが、残念ながら伝わらなかった人たちも多く、批判を受けて休止してしまいました。

資生堂の公式サイトには、2016年10月7日付けで「大人の女性になりたいと願う人たちを応援したいという当CMの制作意図が十分に伝わらなかったことを真摯に受けとめ」というコメントが掲載されています。

考えてください: 
このCMでは、どういう人に対するどのようなステレオタイプが、どう使われていますか?

さらにもう一つ調べてみましょう。

調べてください:
商業広告で、ステレオタイプが使われている例にはほかにどういうものがありますか?

ここで課題です。

今、すなわち2020年の「女子大生」って、どういう人たちでしょうか
F1層の入り口にいる人たちの実態は実は世間の人々はわかっていません。言い換えると、皆さん自信がどういう属性や嗜好を持っているのか、それを明らかにすることは、大きな価値があります。少なくともF1向けのマーケティングには有効なデータでしょう。

最初の課題は、「今の女子大生層」の実態を明らかにすることです。
一つだけ注意してください、あなたの好きなことや行動を明らかにすることではありません。あなたは女子大生ではありません
正確に言えば、あなたは女子大生の代表ではありません。全称の誤用をしないために、ソーシャルメディアを使ってリサーチをします。
具体的な手法については、この後解説します。

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