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Webとマーケティング 授業資料(13)

企業は消費者を知りたい

先日、自粛生活に少々疲れてしまって、ジャンクなものが食べたくなり、コンビニで、レトルト食品とかカップモノとかをいくつか買ってしまいました。
こう言うと一様に驚かれるのですが、食に余り関心が無く、死なないまじないが食事だと思っていますので、率先してこれが食べたいなどと思うことが余り無いのですが、外出自体が珍しいことになってしまっているために、ついモノ珍しいものを購入してしまったわけです。
その中に、袋めんの辛ラーメンがありました。
(株)農心ジャパンの人気商品で、1986年の発売開始以来、韓国ラーメンの代表的な地位を占めています。強力粉を使った麺は独自の歯ごたえで、辛みを強調した味付けと共に、袋麺市場では独自の位置を占めています。

「わたしの辛ラーメン、LINEポイントキャンペーン」を実施中という広告が、パッケージに大々的に書いてありました。

購入した際のレシートを撮影して、辛ラーメンLINE公式アカウントにレシート写真を送信すると、LINEポイント500ポイントが2,000名に当たるという内容です。

辛ラーメン

元々、同社は消費者調査を巧みに実施していることで知られています。
2015年の下半期にPOSデータで調査したところ、リピート率は30.04%だということがわかったとされています。
このデータは様々なところで引用されていますが、出典が見当たらないので、伝聞にとどめておきます

今回のこのキャンペーンも、非常によく考えられたものです。
元々レシートには、POSシステムによる処理結果として、多くの情報が書かれています。

(1) 企業名(2) 店舗名(3) 店舗の所在地(4) 店舗の電話番号(5) レジ番号(6) 購入日(7) 購入曜日(8) 購入時刻(9) 責任者(10) 購入商品名(11) 購入商品単価(12) 購入商品個数(13) 購入商品ごと売上金額(14) 購入商品ごと割引額(15) 値引前合計売上金額(16) 合計値引額(17) 合計売上金額(18) 消費税額(内税)(19) 支払方法(20) 支払額(21) お釣り(22) 支払方法の詳細(23) キャンペーン情報

さらにコンビニの場合、レジ担当者が主観で、顧客の年齢や性別なども入力しているのは広く知られていると思います。

どういう人が、どういうタイミングで、その商品を買うのか、さらには同時にどういう商品を購入しているのかなど、マーケティングのリサーチ手段としては垂涎ものの情報が含まれているわけです。
いろいろ問題があり、顧客の属性はレシートには書かれませんが、プロファイリングが十分可能であることも指摘しておきます。

例えば、このレシート例はニュースサイトの引用で仮想のレシートだと思われますが、千代田区二番町で朝の8時45分におにごりとコーラを買っています。恐らく出勤前に軽食を購入したのでしょうが、さらにパラドゥのネイル商品を購入しているので、F1であることは推定できます。

図1

その他にも、電子マネーやカードなどを使うことで、個人情報がこの購入行動に紐づくことも言うまでもありません。

辛ラーメンのキャンペーンは、特に購入者の購買行動を知るために有効なのがよくわかります。いつ、どこでどういう商品と共に、自社製品が購入されているのか、ここから購入者のプロファイリングをしてペルソナ作りをすることも可能でしょう。
さらにもう一点、LINEを使ったキャンペーンですので、購入者と紐づいたLINEアドレスも使えることになり、広報、宣伝手段も手に入ることになります。

この例からも、企業が消費者に関する情報を得ることに対して、多大な労力を払っていることがわかると思います。

リスニングの詳細化

さて、前回ペルソナ作りに関して、事例を挙げて解説しました。
ある商品を市場に投入しようとした場合、まずあるべき消費者像を定め、それに向けて商品の仕様を設定して行くという流れでした。

本来ペルソナは、このように特定の商品に紐づいて構築されて行くべきモノです。ですので、今回の課題のように、「女子大生のペルソナ」といった問いかけは、抽象度が高すぎるため、本来でしたら成立しません。いわば女子大生という存在を具体化するようなものですから。

課題を次の段階に進めるために、ソーシャルリスニングを実施します。
尚、「基準となるソーシャルグラフ」の抽出は、本noteの11回目で解説してあります。

まず、その振り返りと補足をします。
デモグラフィック変数が明確なTwitterユーザを1名選び出して、そこから繋がりを辿ります。
まず、①ある女性大学生を中心としたクラスター(集団)を発見します。以前述べたように、Twitterでフォローしている人から、デモグラフィック変数が共通している繋がりを抽出してください。
・その集団は、何人の繋がりですか?
・その集団の中で、最も次数の多い人は誰ですか?
これがそのネットワークの特徴を示す量になります。

次にそのネットワークの分析を行います。
注目するのは、サイコグラフィック属性と行動、SNS上の発言です。
その集団の中で、多くの人が持っている、②特徴的なサイコグラフィック属性には何がありますか?
例えば、XXという趣味を持っている人が多いとか、あることに対する興味関心が強いとか、ある信条を持っている人が目に付くなど、様々な心の中のありようが考えられます。一度試験的にリサーチしてもらましたが、例えばオンライン授業に対して、どう考えている人が多いかなども重要かもしれません。
さらに、③その集団の中の多く人々がやっている行動や購買しているものなどで、特徴的なものには何がありますか?
そして、④その集団の中でのやり取りで、頻出する話題、特徴的な話題、用語、などには何がありますか?

このようにして、ある小さな集団の、心の中と言動を可視化するわけです。
おそらく手作業ですと、かなり手間が掛かるので、余り厳密にやる必要はありません。
特に発言に関しては、構文解析を行って、頻出語を抽出するなど、定量評価も可能ですが、元々ペルソナ作りは直観性が強いため、定性評価にならざるを得ない部分もあります。観測者が見て、目立っていると感じるもの、特徴的だと感じるものに着目します。

言うまでも無く、これは、Twitter上のごく一部のデータにしか過ぎません。
しかしそれを履修者の皆さんそれぞれにやってもらって、多くの集団のデータを収集します。
ある特定の人を観察するだけではなく、同じような属性を持った人を含めて観察するわけですから、より多くの情報が手に入ることになります。
最後に、⑤それらを並べてみて、特徴的なものをさらに抽出します。
これによって、多くの女子大生に対してリスニングした結果の特徴を抜き出すことが出来るようになります。

プロファイリング

まずは①から④までの作業をやってみてください。
後程、⑤の作業をやってみますので、そこから各自で、「女子大生のペルソナ」として特徴のある要素を抜き出して、課題①にアプローチしてみます。


ここまでで、前述のように、具体的な商品、サービスを想定せずに女子大生という存在そのものに、フォーカスを当て、ソーシャルリスニングを行いました。この抽象的な女子大生のペルソナイメージから、今度は、どういう商品、サービスを購入する可能性があるのか、といった流れでそのペルソナを利用することが出来ます。
課題を次の段階に進めましょう。
課題①の発展形です。

あなたがソーシャルリスニングから構築した「2020年の女子大生」というペルソナが、購入するであろう「商品(サービス)の企画をしてください」

課題①最終

商品企画は、社会連携型のPBLとしてしばしば行われます。
多くの学生は、まず思い付きで、特に自分目線でこういうものがあったらおもしろいとか食べてみたいとか、その程度の根拠で、商品企画を提示してくることが多くあります。

学生もやった気になれますし、企業側も何か新しいことをしている気になれます。どんなショボいアイディアでも、企業側は学生を絶対に貶しません。なんだかんだ言ってもお客様でしか過ぎないわけですから。

商品企画では、思い付きとgoogleで何かをやった気になれます。
この授業では、そこは排除します。ある企業さんが、こうしたPBLイベントで、こう宣言しました。「思い付きは大歓迎、思い付きを否定する教授にこう言ってやりなさい、思いつけるなら思いついてみろと」。そのイベントの審査委員をやっていた関係で、ある意味対抗するようにこう言ったのはわかります。企業さんはそれでいいのかもしれませんが、学生の活動は学びとしての価値があるか否かが重要だと思っています。何より、企業は学生さんの学びや成長に責任を持たないわけですし。

思い付き


ソーシャルリスニングの結果として導き出されたペルソナを観察し、ニーズを捕まえてください。さらにそこで出てきたアイディアに対して、先行商品やライバル商品との差別化、可能なら市場規模までを明らかにしてください。
これが、この授業の最終課題のうちの1つになります。


※トップ画像は、さっとんさんのスマホを持つ女子学生の写真をお借りしました。本業は保育士さんだそうです。今はオンラインで授業が開けないので、教室のイメージが懐かしく、しばしばお借りしています。お礼申し上げます。


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