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物にまつわる「ストーリー」は、作り手だけのものじゃない
5月13-14日の週末は、瀬戸市で開催されていた「工房巡り」に行ってきました。
瀬戸市はご承知の通り、古来の陶磁器窯のうち、中世から現在まで生産が続く、日本六古窯(越前・瀬戸・常滑・信楽・丹波・備前)の一つです。
小さな窯元が多く、窯めぐりも20年ぐらい続いているそうです。
正直、実際に伺う前までは、「焼き物」を町おこしのネタに使っている街なのだろう、という非常に失礼な思い込みを持っていました。
ですが、中世から生産が続いているという歴史は、街そのもののDNAになっていて、むしろ町おこし的な盛り上がりのネタは同市出身の棋士・藤井聡太さんでした。笑
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昼食にいただいた「瀬戸焼そば」の器は、将棋の駒型の焼き物でした
話が逸れました。
お目当ての工房巡り。瀬戸市にある、「赤津」「品野」「水野」地区の3つのエリアの内、「赤津」「品野」エリアの窯元が、普段見ることができない工房やギャラリーを、毎年5月と11月に開放してくれます。
その楽しみは、作り手の方との会話を楽しみながら、瀬戸焼を購入することができること。
名鉄尾張瀬戸駅から、一時間毎に、2地区を巡回する無料バスが運行されていて、今回は「品野」エリアの窯元巡りをしてきました。
(赤津エリアにも行きたかったのですが、窯元が点在していて、徒歩だと一回りに時間がかかってしまい、今回は断念しました)
なぜ、わざわざ窯元まで行って、と自分自身も正直思っていました。
オンラインで生産者と消費者が直接つながることが当たり前のご時世です。しかも、瀬戸市の中心部にも販売店がありますし、陶器市のようなイベントでも購入できますからね。
でも、行ってみて感じたのは、「窯元で作る様子が見れてラッキー!」だったし、「ここで作っているんだ」と空気を感じながら物が買えるし、作っている人と話せたりする、というのは、とてもテンションが上がるのです。
マーケティング関連のビジネス書を読むと、モノを売るにはストーリーを売れ!と書かれています。
本屋さんで、推し本に書店員が手書きのポップをつけて店に並べられているなんて店頭の風景が、すっかりおなじみになっています。
でも、実は、「ストーリー」は売り手だけのものではなく、買い手も一緒に創れるものなんだと思います。
僕は今回一人で巡ってきましたが、中には夫婦や家族、カップルで来ている方がたくさんいました。
あるご家族を見ていると、どうやら旦那さんが素敵な焼き物を見つけた様子です。
とても欲しそうなのですが、同じものがネットでも購入できて、その方が持って帰るのが楽だし、と言っておられます。
すると、一緒にいた娘さんが、「その器、ネットで買うと“ただの購入した器”だけど、いま買うと“家族と、窯元巡りに来て、一緒に選んで買った器”になるじゃん」とひとこと。その一言で、購入が確定したようでした。
物にまつわるストーリーって、何も、作りての想いや、完成するまでの歴史、といった、作り手のストーリーだけではなく、あのご家族のように、
「誰と買った」「こんな会話をしながら買った」といった、何気ないことがストーリーになるんですね。
結局、僕も、興味のなかった黄瀬戸の古風な湯飲みを、思わず買ったのは、窯を開いてから30年、ずっと黄瀬戸の器を作り続けている窯元のおじさんの話を一時間近く聞かせてもらい、すっかりファンになったから。きっと、これからその湯飲みでお茶を飲むときには、先日の窯元巡りのことを思い出すのだと思います。
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コロナが落ち着いて、再び人と人が、リアルに触れ合い、語り合える機会が持てるようになりました。
オンラインでも経済は回せます。でも、人と人が触れ合う事で生まれる物語が回す経済の方が、僕は好きだな。
さて、次はどの焼き物の産地を巡ろうかな。いろいろ調べて、実際に訪れてみようと思います。
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