武井和子 朝から黄金色に満ちてくる 大空いっぱいに 希望が波のようにひろがって 起きよ と ものみなすべてに 語りかける すると 鳥が歌い出し 露にぬ…
武井和子 歩いてきて 気付けば そこは街中の ささやかな公園 七本の欅と 五本の桜が あたりを涼しくしているのだ 有りともなしの 風と木の唄に 鼻から胸が透…
三間由紀子 もうじき 誕生日 何かくださるのなら 着心地のいい1日を 履き慣れた靴のような いつもの味のスープのような なにか いただけるなら そう…
三間由紀子 ひだまりにしゃがんで アリの仕事に わくわく この子は利口 こっちはのろま 応援していたら あら もう夕焼け 寝っ転がって 大好きな絵本を ぱらぱら …
三間由紀子 わたしは ピンシャー とっても 上等の犬なの そんな風情で 尖った頤(オトガイ)を突き出して ┉ もう両面とも 見えないし ┉ 右の前足 曲がったま…
渡部千津子 Ⅰ 朝 あ おひさま カーテンのすきまから きょうのきぼう ときがすぎて あたらしいいちにち なにかしなくては でも なにを …
渡部千津子 ふいうちのように なみだが あふれてくる かなしいわけじゃないのに さびしいわけでもないのに おもいがけないときに ばしょもときも お…
九重文妃子 「少しだけ」と 遠慮しながらも御飯の追加を所望した 今さら拒んだところで歩ける訳ではあるまい 二つ返事で杓字の先にかかるほどの おまけの御飯を入れ…
吉川葉子 歌手の方がずらりと並んで 「夏の思い出」の歌がはじまった ああ いっしょによく歌った 車椅子を押して散歩するときや 食事の前にちょっと歌う? と…
吉川葉子 さるすべりのピンクの花が 二階の窓の正面に たくさん咲いてゆれていた すう と 母の さいごの息が 止まった 夏の終わりの 午後 わたしは ぽ…
吉川葉子 公園のシーソーであそんでいた 小学五年生のまきちゃんとわたし まきちゃんが突然バランスをくずして 上からすべり落ちてきた わぁーと叫んだまきちゃ…
吉川葉子 朝の電車で白杖の方と乗り合わせた 背広姿で通勤中のようす 同じ駅で降りたので 生まれてはじめて お手伝い しましょうか? 緊張しながら声…
吉川葉子 もう 起き上がるのがむずかしくなった と知らせを受けて 新幹線で会いに行きたい そう思った日の朝 ゆみちゃんは遠いところへ行ってしまった 時々…
上野勝 かれこれ四年介護の手を借りている 月四回 家の掃除 風呂の介添え 両足で直立不動で立つことができない 背中を流すことができない 部屋の掃除は畳とカ…
上野勝 何度も何度も家を揺さぶる 鳴り響くオレサマ(雷様)の音 目っこが覚めだ コエェーグライ(怖いくらい) 屋根っこに雨っこが打ち付ける 雨の音っこでド…
上野勝 仙台七夕で使用の 孟宗竹で 『一重切り花入れ』を作る 乾燥もさせず作り 見事 上から底まで 大きくヒビが入る どうにか再生できぬものかと思案の末 金継ぎ…
爪の会
2024年4月29日 17:45
武井和子朝から黄金色に満ちてくる大空いっぱいに希望が波のようにひろがって起きよ とものみなすべてに 語りかけるすると 鳥が歌い出し露にぬれて花は輝き木々の枝は糸のような先っぽにまで新鮮な力を巡らせはじめるそれがいつもの能登の朝こんな美しい当たり前が突然に揺れて揺れて崩れて 裂け 壊れて押し潰されて 人が死んだなんとむ
2024年4月28日 19:17
武井和子歩いてきて気付けばそこは街中のささやかな公園七本の欅と五本の桜があたりを涼しくしているのだ有りともなしの風と木の唄に鼻から胸が透きとおると分別くさい顔をして向こうから犬が来るその犬に飼主が従ってくる不意に新鮮な緊張が崩れてこの一日がなんだか面白くなりそうな※詩誌「爪」146号
2024年4月28日 03:40
三間由紀子もうじき 誕生日何かくださるのなら着心地のいい1日を履き慣れた靴のようないつもの味のスープのようななにか いただけるならそういう 1日を どうぞ目新しい 驚きや不安なんかが喜びや嬉しさも なくて いいここにあるものが じっとここにある昨日と同じ 1日をお休みまた 明日そう言える 1日もし なに
2024年4月26日 22:27
三間由紀子ひだまりにしゃがんでアリの仕事に わくわくこの子は利口 こっちはのろま応援していたらあら もう夕焼け寝っ転がって大好きな絵本を ぱらぱらねこや魚やおばけをなぞり小声で話をしているとあら よだれが出ちゃった学校帰りの中学生の中のかわいい子に きゅんきゅん明日も会うかなずっと会いたいなあら まるで初恋と同じだって もと 子ども
2024年4月26日 05:19
三間由紀子わたしは ピンシャーとっても 上等の犬なのそんな風情で 尖った頤(オトガイ)を突き出して┉ もう両面とも 見えないし┉ 右の前足 曲がったままでしょ┉ 耳だけは よく聞こえるけどお隣さんは 声をひそめてそれでも 直径3cmもない かぼそい足をふんばって お散歩私はピンシャーどんな犬より 貴族なの と鼻高々 お隣
2024年4月25日 04:58
渡部千津子 Ⅰ 朝あ おひさまカーテンのすきまから きょうのきぼうときがすぎて あたらしいいちにち なにかしなくては でも なにを Ⅱ それから紅茶はストレートトーストにはジャムをたっぷり新聞のコラムを声に出して読むそれでおわり あっというまの朝ごはん それから かんがえる
2024年4月24日 05:08
渡部千津子ふいうちのようになみだが あふれてくるかなしいわけじゃないのにさびしいわけでもないのに おもいがけないときに ばしょもときも おかまいなしにふるふる とそらをみあげてなみだをもとにもどそうとしたりせきのふりして ふいたりするときがながれ としがかわりほら また なみだだいじょうぶ だいじょうぶいつか これ
2024年4月23日 04:38
九重文妃子「少しだけ」と遠慮しながらも御飯の追加を所望した今さら拒んだところで歩ける訳ではあるまい二つ返事で杓字の先にかかるほどのおまけの御飯を入れるとそれは嬉しい顔をしたそれは お腹を満たすというよりは心を満たすことだったのだろうあの笑顔を見せてくれたおまけの御飯をあげてよかった と つくづく思う ※ ※ ※前触れも
2024年4月22日 04:27
吉川葉子歌手の方がずらりと並んで「夏の思い出」の歌がはじまったああ いっしょによく歌った車椅子を押して散歩するときや食事の前にちょっと歌う? というときベッドで横になっているときでさえもわたしが歌い始めると母もいっしょにかならず歌った多くのことを忘れていっても母のなかにはいつも歌があふれているようだったたくさんたくさんいっしょに歌ってほん
2024年4月20日 07:21
吉川葉子さるすべりのピンクの花が二階の窓の正面にたくさん咲いてゆれていたすう と母の さいごの息が 止まった夏の終わりの 午後わたしはぽっかりと気もちに空洞ができたようになってしまったどこに いったのだろう空のなかなのか 風になったのか蝶々が飛んでくればここに? と思いお月さまのむこうにいるのだろうかなんてまるで小さなこどもの
2024年4月19日 03:54
吉川葉子公園のシーソーであそんでいた小学五年生のまきちゃんとわたしまきちゃんが突然バランスをくずして上からすべり落ちてきたわぁーと叫んだまきちゃんの前歯がそのままわたしのおでこにささったまきちゃんは前歯を痛がるしわたしのおでこからは血が出るしとにかくわたしの家に二人で行くと┉┉┉あらあら まぁまぁ母はちょっとわらいながら二人になにかそれなりの手当てをし
2024年4月17日 12:41
吉川葉子朝の電車で白杖の方と乗り合わせた背広姿で通勤中のようす同じ駅で降りたので生まれてはじめて お手伝い しましょうか?緊張しながら声をかけてみたハイ では階段まで と明るい声のお返事二人で話しながら階段をのぼった ボクは会社に行くところです ボクは目が見えないんですけれど ひらひらしたものを着ておられます
2024年4月16日 04:28
吉川葉子もう 起き上がるのがむずかしくなったと知らせを受けて新幹線で会いに行きたいそう思った日の朝ゆみちゃんは遠いところへ行ってしまった 時々約束してレストランで食事した ビュッフェに行くと イカ好きのゆみちゃんのお皿はいつも イカ料理がいっぱいのっかっていた わたしより十歳も年上なのに 妹のようなうれしそうな顔 病
2024年4月15日 04:37
上野勝かれこれ四年介護の手を借りている月四回 家の掃除 風呂の介添え両足で直立不動で立つことができない背中を流すことができない部屋の掃除は畳とカーペットのみ大いに助かる湯上がりに全身湿疹へ 手製ドクダミの化粧水をつけてもらう約30分 面倒見てもらう風呂で洗ってもらうことの恥ずかしさも無くなり 全身洗ってもらうグッスリ眠ることができる困ることは
2024年4月14日 06:18
上野勝何度も何度も家を揺さぶる鳴り響くオレサマ(雷様)の音目っこが覚めだコエェーグライ(怖いくらい)屋根っこに雨っこが打ち付ける雨の音っこでドォデシテ(びっくり)ちょっとばかり こえぇ(怖い)ながらカーテンこ あげて真夜中さぁオレサマと大雨っこたのすむズブン(楽しむ自分見とれる自分)畑っこの デエコン(大根)大丈夫だべだぁかぁ?ツウシャ(駐車)
2024年4月12日 05:04
上野勝仙台七夕で使用の 孟宗竹で『一重切り花入れ』を作る乾燥もさせず作り 見事 上から底まで大きくヒビが入るどうにか再生できぬものかと思案の末金継ぎをしてみたパテを詰め込み その上から金継ぎ底は誰も見ないので 手抜き仕上げは紙やすり5回ほど磨き上げ最後にニスを塗るいい花入れができあがるススキと萩を入れる涼しい風にススキの穂が気持ちよさそうに揺れる