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「トカラ列島近海」の過去の地震まとめ【2021/12/11追記】

【はじめに】
この記事では、2021年に活発な地震活動をみせている「トカラ列島近海」の過去の地震について纏めています。

1.ここ四半世紀の震度1以上(有感)地震

そもそも「トカラ列島」がどこかと言いますと、ウィキペディアによれば、

吐噶喇列島とかられっとうは、南西諸島のうち、鹿児島県側の薩南諸島に属する島嶼群。行政区域は全島が鹿児島県鹿児島郡十島村である。

日本語版ウィキペディア

とあり、具体的に図示されたものを引用すると、屋久島・種子島と奄美大島の間の領域です。面積が大きいのは、中之島や諏訪之瀬島です。

この地理的な配置を念頭に置いたうえで次の図をご覧ください。気象庁の「震度データベース」から、直近1,000例をピックアップしました。

2021年11月までの直近1,000例をプロット

観測点の関係もありますが、島々を覆うように浅い地震の小さい丸があり、どこがトカラ列島か分からないほどですね。

2.M5以上の中規模地震は約50例

震度を観測する陸地が少ない関係で、島に近い地震が多くプロットされてしまいます。そこで少し条件をあげて、M5以上の中規模地震としてみました。

約100年で50回あまりとなっています。纏まって発生する傾向のある地域なので、どちらかというと「10年に数回」のペースで群発化する傾向にあると思って頂ければと思います。(まさに2021年の春と秋がそういった事例)

3.M6以上の地震は全部で【5例目】

そして、M6以上となると全部で5例です。まずは、昭和以前の4例から。

  1. 1923/11/07 M6.6 震度1:名瀬、宮崎

  2. 1942/03/22 M6.4 震度3:名瀬、宮崎、枕崎、屋久島

  3. 1960/05/18 M6.2 震度4:名瀬、屋久島

  4. 1968/05/14 M6.1 震度4:名瀬、屋久島

これら4例はいずれも「M6以上」で、奄美大島の名瀬だけでなく、屋久島や九州にも揺れが伝わる大きなものでした。ちなみに、1968年の事例は深さ150kmとやや深い地震だったこともあり、広島県・徳島県から沖縄本島まで有感となるものでした。

1960年の事例は「深さ:不明」を意味する0kmではないかと思うが、その他は基本的に、2021年の事例よりも深さが浅い「14km」というのも特徴の一つ。

2021/12/09 M6.1 震度5強:悪石島、震度2:名瀬

そして、2021年4月以来に活発な地震活動を起こした2021年12月の地震は、現行の観測網になってからは初の「M6以上」の地震となり、しかも震源の深さが14kmと浅いうえに、トカラ列島のすぐ近くで発生。

最大震度5強を「悪石島」で観測したほか、震源からは少し距離のある気象官署「名瀬」でも震度2を観測しました。
(それでも昔の観測網なら、最大震度2の「軽震」相当だった点は要注意)

NHKは「1968年以来」と書いており、たしかに間違いではないが、要素が恐らく異なる。

ちなみに、NHKは地震発生直後に「震度データベース」をもとにして解説文を記事の中で書いています。確かに、「トカラ列島近海」でM6.0以上の地震は、1968年以来となりますが、その時は「深さ:153km」という稍深発地震でした。
今回は、「深さ:14km」と浅い地震のため、直接的に「前回の事例」として引くのが適切かは少し微妙な所かも知れないな、と感じました。

4.M5以上が複数回起きた事例

M6以上は全て単発的に起きているのですが、M5以上の地震が複数回起きた事例というのは何度か確認できます。具体的に見ていきましょう。

(1)1981/03 M5以上:5回

人間が観測をしていた時代は、各都道府県に数箇所しか観測点がなく、今と震度を単純に比較するのは難しいのをご承知おき下さい。

その上で、1981年3月16日からの地震では、M5以上の地震が3日間で5回も発生をしました。現在の観測網で震度5クラスの地震でも、最寄りの気象官署である「名瀬」では震度1~2なことが多いので、これらもきっと現在の観測網ならば、相当強い揺れを捉えていたことでしょう。

(2)1995/12 M5以上:2回

1995年の事例も同様で、M5クラス中盤という地震が、一両日中に2回発生をしていますが、どちらも最大震度は1でした。

(3)2000/10 M5以上:3回

阪神・淡路大震災などを契機に、全国に地震計が設置されるようになったのがこの時期でして、2000年に起きた一連の地震活動の際には、トカラ列島の島々にも震度観測点が設置されました。

これらの最大震度を観測したのは、いずれも震源に近い「悪石島」でして、従来からの最寄りの観測点である「名瀬」では、従来どおり震度1~2のみを捉えていたことに留意する必要はあろうかと思います。

3例とも「名瀬」では震度2で、この4~5強を観測したのは「悪石島」。

最初の中規模地震の2時間後にM5.3、その15分後にM5.9と、地震の規模が更新するという怖い起こり方をしている地震です。

M 5.9の地震が発生し、鹿児島県十島村の悪石島で最大震度5強を観測した。この地震を挟んで16時29分、17時4分にも同観測点で最大震度5弱を観測するなど、この日、トカラ列島近海を震源域とする震度2以上の地震は29回を数えた。

(日本語版ウィキペディア)

マグニチュード5.9というのは、平成以降で最大規模ということになります。

(4)2021/04 M5以上:3回

直近例として記憶に新しいところでは、2021年4月に有感地震200回以上を数えた活動が挙げられます。M5以上の地震が計3回で、最大震度4の地震を全部で6回(12月の活動を除く)数えました。

「名瀬」では、1回目の地震で震度2、2回目は震度0、3回目は震度1

こちらも旧震度の観測網では十分に捉えることは出来ませんでしたが、震源に近いはずの小宝島よりも悪石島の方で揺れが大きくなりました。

トカラ列島群発地震は、鹿児島県十島村付近で2021年から250回以上続いている群発地震である。

(日本語版ウィキペディア)

このように、深さ20kmあたりでM5以上の地震が複数回起きる事例は、過去にも何度も記録されているのです。

5.有感地震の発生回数

この領域の怖いところの一つに、有感地震(震度1以上)の回数の多さが挙げられます。いわば「群発化」の傾向です。その数も尋常ではなく、2桁や3桁といった数が数日のうちに発生するのが特徴です。見ていきましょう。

1996年:24回(震度4:1回)

先ほどの1995年12月の事例を受けて、1996年には「小宝島」に震度観測点が設置。1996年2月に起きたM4.6の地震で、早速「震度4」を観測しました。この年だけで24回の地震を観測していますが、まだ「悪石島」での観測が無い点には注意が必要です。

2000年:54回(震度5強:1回、5弱:2回)

2000年といえば、伊豆諸島北部で万単位での地震が発生したため振り返られる機会は少ないですが、トカラ列島でも10月2日から地震活動が活発となりました。

震度1が足切りの状態となったことがありますが、震度2以上だけでも前述のとおり、10月2日だけで29回の有感地震を観測しました。

その後、2000年代に入ると、2007年は年に4回と低調でしたが、その他の年は2桁回数を記録するのが平均的な値となっています。

2011年:63回(震度3:5回)

そんな2000年を上回ったのが2011年。東日本大震災の前後に様々な場所で小規模ながら群発化し、トータルで63回に達しました。

2016年:157回(震度4:3回)

それを一気に更新したのが2016年です。ただ前述のとおり、2000年は震度1が実質「足切り」になっていた数といえます。この年の震度2以上の地震は53回ですので、おおよそ2000年とほぼ同じ回数という見方も出来そうです。

この年は、図のとおり宝島・小宝島付近で1年中、揺れている感じでした。

2021年:287回(震度4:6回)【2021/11現在】

そして、更にそれを上回ったのが2021年です。同じように集中的に発生。

その数は、僅か1か月で264回を数え、震度計で観測するようになった現行では最多を更新しました。これが11月までの値を月別に示した表です。

震度4:6回を含め、2021年4月の1か月で264回を数える活発な地震活動。

それだけでなく、2021年12月に入って、再び地震活動が活発となりました。

しかし、同年12月4日、M2.9の地震が発生したのを皮切りに再び活発化し始め、有感地震を4日〜5日にかけて90回以上も観測。12月5日にはM4.8の地震が起きるなど、今現在も地震が頻発している。

( 日本語版ウィキペディア )

( 2021/12/11 追記 )
最大震度5強を観測するM6.1の地震を観測した「12月9日」時点での分布をプロットしたのが下の画像です。9日(実質5日)で271回に上ります。

暫定的に、12月9日時点での「日別地震発生回数」をリストアップしてみますと、僅か6日で有感地震271回にのぼります。

4日 59回
5日 87回
6日 45回
7日 27回
8日 5回
という推移。4~5日をピークにその後は減少……したかに見えましたが、
9日 48回
と、急増しました。


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