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今の震度6強/弱、昔の観測網だったら?

【はじめに】
前回(その1)では、「新・震度7」の5例について、「昔の観測網」だったらどういう震度になっていたのか分類してきました。
今回はその続き、震度6強/6弱を分類していこうと思います。

2.新・震度6強

「震度6強」は、2000年の鳥取県西部地震からの20年間で「15例」です。

(1)新・震度6強 → 旧・烈震(震度6)

00/10/06 09km M7.3 ⑥+ 烈 境港
07/03/25 11km M6.9 ⑥+ 烈 輪島
11/04/07 66km M7.2 ⑥+ 烈 大船渡、仙台、石巻

上から、「鳥取県西部地震」、「能登半島地震」、「宮城県沖地震」です。15例中3例(20%)というのは、やや少ない印象を受けました。

(2)新・震度6強 → 旧・強震(震度5)

03/07/26 12km M6.4 ⑥+ 強 石巻
04/10/23 14km M6.5 ⑥+ 強 上越(18:34)
07/07/16 17km M6.8 ⑥+ 強 上越
08/06/14 08km M7.2 ⑥+ 強 仙台
11/03/11 43km M7.6 ⑥+ 強 水戸、柿岡、銚子、千葉
11/03/15 14km M6.4 ⑥+ 強 河口湖
16/04/15 07km M6.4 ⑥+ 強 熊本
16/04/16 11km M5.8 ⑥+ 強 阿蘇山
19/06/18 14km M6.7 ⑥+ 強 酒田
21/02/13 55km M7.3 ⑥+ 強 仙台、石巻、福島、白河、小名浜

15例中10例(67%)と過半を占めるのが「新6強→旧・強震」という構図。東日本大震災の30分後に起きた「茨城県沖」の大地震(M7.6)は、4地点で強震となりましたが、規模に比して「烈震」はありませんでした。
新潟中越、中越沖、熊本地震での“大きな余震”も、ここら辺に含まれます。

(3)新・震度6強 → 旧・中震(震度4)

04/10/23 12km M6.0 ⑥+ 中 上越
11/03/12 08km M6.7 ⑥+ 中 上越

上は「新潟県中越地震」の余震の一つ、下は東日本大震災の翌日(3/12)の未明に栄村で6強を観測した「長野県北部地震」。
どちらの地震も、新潟・長野県境の山間部付近で起きた地震のため、近くに気象官署が無く、【上越】でギリギリ「中震」を観測できただけでした。

同じ感じで、「震度6弱」も見ていきましょう。

3.新・震度6弱

「震度6弱」を観測したのは、1997年以来で「36例」です。(2020/6現在)

(1)新・震度6弱 → 旧・烈震(震度6)

03/05/26 72km M7.1 ⑥- 烈 大船渡、石巻
03/09/26 45km M8.0 ⑥- 烈 浦河(04:50)
03/09/26 21km M7.1 ⑥- 烈 浦河(06:08)
09/08/11 23km M6.5 ⑥- 烈 御前崎

上から、「宮城県沖地震」「十勝沖地震(と最大余震)」「駿河湾地震」。36例中4例は、いずれも「海域」を震源とする地震で、海沿いの観測点で、最大の震度と同じ「6弱」での烈震を観測しました。

(2)新・震度6弱 → 旧・強震(震度5)

97/05/13 09km M6.4 ⑥- 強 阿久根
00/07/30 17km M6.5 ⑥- 強 三宅島
01/03/24 46km M6.7 ⑥- 強 福山、呉、広島、松山、高知
03/07/26 12km M5.6 ⑥- 強 石巻(00:13)
04/10/27 12km M6.1 ⑥- 強 上越
05/03/20 09km M7.0 ⑥- 強 福岡、飯塚
05/08/16 42km M7.2 ⑥- 強 仙台、石巻
08/07/24  108km M6.8 ⑥- 強 八戸、大船渡、盛岡
11/04/11 06km M7.0 ⑥- 強 白河、小名浜、柿岡
11/04/12 15km M6.4 ⑥- 強 小名浜
13/04/13 15km M6.3 ⑥- 強 洲本
14/11/22 05km M6.7 ⑥- 強 長野
16/04/14 08km M5.8 ⑥- 強 熊本
16/04/16 11km M5.9 ⑥- 強 熊本(01:45)
16/10/21 11km M6.6 ⑥- 強 鳥取

36例中15例が「新・震度6弱→旧・強震」というパターンでした。確かに、上と比べると、地震の規模は一回り小さくなっている印象です。

(3)新・震度6弱 → 旧・中震(震度4)

00/07/01 16km M6.5 ⑥- 中 三宅島
00/07/15 10km M6.3 ⑥- 中 館山、横浜、伊豆大島
04/10/23 12km M5.7 ⑥- 中 上越
07/07/16 23km M5.8 ⑥- 中 上越
16/04/16 16km M5.4 ⑥- 中 阿蘇山、熊本(09:48)
16/12/28 11km M6.3 ⑥- 中 白河、小名浜、水戸
18/06/18 13km M6.1 ⑥- 中 彦根、京都、大阪、神戸
19/02/21 33km M5.8 ⑥- 中 苫小牧

36例中8例が「震度4(中震)」となります。中規模地震の真ん中ぐらいのマグニチュードが集中しているような印象を受ける分布です。

(4)新・震度6弱 → 旧・弱震(震度3)以下

98/09/03 08km M6.2 ⑥- 弱 盛岡
00/07/09 15km M6.1 ⑥- 弱 三宅島
00/08/18 12km M6.1 ⑥- 弱 三宅島
03/07/26 12km M5.5 ⑥- 弱 石巻(16:56)
11/03/12 01km M5.9 ⑥- 弱 長野、上越(04:31)
16/06/16 11km M5.3 ⑥- 弱 函館
19/01/03 10km M5.1 ⑥- 弱 佐賀、熊本、雲仙

00/08/18 07km M5.1 ⑥- 軽 三宅島
11/03/12 04km M5.3 ⑥- 軽 上越(05:42)

そして、今「震度6弱」としてニュースを賑わせる地震36例のうち、25%に当たる上記9例は「旧・弱震以下」ということになります。
特に、2000年の式根島付近の地震と2011年の長野県北部の地震の余震では、M5クラスながら最大震度6弱を観測。一方、旧震度では「軽震(震度2)」止まりでした。一口に「震度6弱」と言ってもバラエティに富んでいます。

4.まとめ(表)

ここまでの内容を表に纏めると次のようになります。

(回数)
新・震度烈 強 中 弱 軽
震度7 |5|3 2
震度6強|15|3 10 2
震度6弱|36|4 15 8 7 2

(% 換算)
新・震度
烈 強 中 弱 軽
震度7 |5|60 40
震度6強|15|20 67 13
震度6弱|36|11 42 22 19 06

今の震度と昔の震度で「震度観測点」の分布という観点だけでも、これだけ分布に差があることを意識に入れておく必要があるかと思います。

また、古い地震のデータを見る機会があった際にも、この傾向をしっかりと認識し、表面的な数字だけで認識を誤らないように注意したいと思います。

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