佇むもの
だって、仕方がないじゃないか
と、
その声が、さりげなく、でも凛と
響いたときに私はそこにあの歌姫
の姿をみたような気がした。
あの歌姫の歌声に惹かれるものは
多かれ少なかれ、何らかの痛みを
知っているのだ。
だから、「声」に対して真っ直ぐに
立とうとし、そうして道を拓こう
とするのだ、と。
大したことなんかないさと、照れ
たような横顔。
でも、
そうだ、その瞳だ。
私こそ、何一つ成し遂げた事など
ない。
まだまだ、気が遠くなるほど、先
があるというのに。
その瞳の先にあるものが、キミに
更なる輝きをもたらしますように
と、不遜ながら、願わせてはくれ
ないだろうか。
語り部は、胸の内に言葉を秘した
まま、
喧騒のなかに
佇んでいた。
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