【小説】愛の稜線【第4回】#創作大賞2023
雨の夢を見ていた。わたしめがけて、雨はずっと降り注ぐ。前後が見えなくなったわたしは、糸のように連なる雨の隙間で、呼吸する。少し息を吸い込みにくい。けれど、不快ではない感覚の中に、わたしはいた。
だから、それが現実の音だと気づくまでに、時間がかかった。まるで、譲さんが本物の雨を連れてきたかのようだった。
暗闇の中、床から天井まで続く窓は、雨に打たれて濡れながらも、夜の光を映している。
今は一体何時だろう。ベッドに横になったまま、わたしは、人影に、目だけを向けた。