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日本円ステーブルコインを発行する5つの方法

振り返ると2022年はクリプトやNFTの国内の熱量が上昇したことに伴い、ステーブルコインへの関心や期待感も大きくなった、そんな一年と言えるでしょう。今年だけでも多くの事業者がステーブルコイン事業に参入を発表し、その代表例は、YEN株式会社が発行する『YEN』やJPYX、JPYW、JPYV、DCJPYなどスタートアップに留まらず既存の金融機関や証券会社も後を追う形となりました。

入り口としては重要なインフラ的存在を担うステーブルコイン。やっぱり日本人は日本ではほとんどの人たちが日本円を使って生活しているので、米ドルステーブルコインよりも日本円ステーブルコインの方が使いやすいですよね。さまざまなイノベーションを起こすべく取り組んでいる事業者がいる裏側で、その取り組みの若い芽を摘まんばかりの規制が行われようとしているとの声もあるのがこの界隈です。
弊社は去年12月にJPYTを発表し、法改正の逆風などを受け一時的に発行を中断している事業者でもあるこちら側の目線で、現状日本で合法的に流通可能な形でステーブルコインを発行する方法をまとめました。表面的な説明だけではなく、適所を掘り下げているのでこれを読んでいただけると日本円ステーブルコインの発行スキームについて少しばかりは詳しくなれるかと思います。
※このレポートは法的なアドバイスや発行を確約するものではありません。

前払式支払手段を用いて発行する

日本ではスタンダードと言っても過言ではないこの方式、国内のステーブルコイン事業者では多くが前払式支払手段を採用しています。
なぜ前払式支払手段を用いて発行するのでしょうか?答えから言うとそれは他の金融ライセンスと異なり審査制ではなく、届出制という敷居の低さが背景にあります。
前払式支払手段と言っても大きく分けて「自家型前払式支払手段」と「第三者型前払式支払手段」の二種類が存在します。一つずつ見ていきましょう。

1. 自家型前払式支払手段

まず自家型前払式支払手段(以下、自家型)は、自分たちのサービスでしか利用できない前払式のポイントのことを指します。例えば特定のコーヒーショップでしか使えないチャージ式のプリペイドカードなどですね。
将来入る予定の売り上げを先に受け取ることができキャッシュリッチな状態になり、これはステーブルコインに限ったことではなくたくさんの事業者に好んで用いられているものです。

一部特例がありますがいわゆる発行元と利用先が同一になる場合はこちらのライセンスで問題なく、流通する未使用残高が3月もしくは9月末時点で1,000万円を超えたときにその額の半分以上を供託する必要があります。またこのとき同時に自家型を発行している事業者の旨、管轄財務局へと届出を行います。今年は親の顔より見た自家型に該当するかどうかの図を貼っておきます。

YENやJPYCなどの日本を代表する日本円ステーブルコインは2022年10月末現在、こちらのライセンスで発行・運用されています。いずれも次に紹介する上位互換の前払式支払手段のライセンス取得を目標にしていると話しています。

2. 第三者型前払式支払手段

次にSuicaなどの汎用性の高い交通系ICや、QUOカード、図書カードなどの発行元と利用先が異なる場合はどうでしょう。こちらを第三者型前払式支払手段(以下、第三者型)と呼びます。違いは大きく分けて二つあり、先述したように発行元と利用先が異なり、複数の店で利用が可能なこと。そして利用先の事業者からその残高を用いて償還請求が行えることです。

利用先が沢山増えることにより、より収益性は向上し提携する事業者(残高の利用先であり加盟店)に限って償還し日本円での返還が可能なので、Tether社が発行するUSDTやCircle社が発行するUSDCなどと近い状態を日本で実現することができます。

ライセンスの話をすると、自家型と異なり第三者型は届出制ではなく認可制を採用しています。すなわち第三者型を発行するためには厳重な審査が管轄財務局にて行われます。しかしライセンス取得自体のハードルは本来はそこまで高いものではないのです。

第三者型でいちばん身近なものを例に挙げると、VISAやMasterなどのプリペイドカードです。バンドルカードやKyash、法人向けだとUPSIDERやFreeeカードなどをはじめとし沢山のカードレス系を含むプリペイドカードは登場していますよね。最近の傾向ではスタートアップの割合が母数の多くを占めます。過去に活用事例のある従来の利用方法に要件の要点を押さえることで比較的スムーズなライセンス取得が可能です。

一方でステーブルコインといったデータベースで管理されているものではなくブロックチェーン上で管理されているという特性からか、説明に時間がかかり審査に時間を要しているのが現状です。しかもまだ実例がないと言う点で手を煩わせているのかもしれません。

仮に資産が流失したり顧客の残高等のデータが破損した時の対応策として、今までの事業者であればデータベース管理なので主に当事業者に100%の責任があると考えるのが一般的です。しかしパブリックチェーンでトークンとして残高にあたるステーブルコインを発行した場合、チェーン自体に脆弱性があったり、そして攻撃されたりといった理由で顧客資産の流失の恐れがある点が十分な利用者保護策を取っていると捉えられないという部分に問題があるのかなと個人的には思っています。

この筋でいくと、CBDCやDCJPYはプライベートチェーンやコンソーシアムチェーンの採用を予定しており、それらを国は推進する動きが見られるのにも無理はないです。

確かに上記の内容だとすると言い分もわからなくもないんですが、ユーザーから求められているもので適切に発行・運用されているものを厳しく取り締まるのも不公平な気がするので、今後の動きに注目したいところです。


償還可能なステーブルコインを発行可能な金融ライセンスを所有した事業者が発行する

2022年6月に改正資金決済法が成立しました。その中でも特にステーブルコインに関する記述は目立っており、業界からは注目の目が寄せられていました。ここではユーザーから償還可能なステーブルコインを発行してもいいライセンスについて良い意味でも悪い意味でも明確な線引きが行われました。

結論から言うと銀行業、資金移動業、信託会社、電子決済手段等取引業に発行できる事業者が制限されました。

銀行業、資金移動業を用いて発行する

銀行業と資金移動業のライセンスを保有している事業者はオフチェーンアセットの法定通貨を担保として同額の法定通貨で償還可能を約束するステーブルコインの発行が可能となりました。

それぞれ銀行業を預金スキーム、資金移動業を未達債務スキームと呼ばれます。このようなステーブルコインをデジタルマネー類似型と呼び残高の引き出しが可能な第二種資金移動業と運用は似ていると感じました。

信託受益権として発行する

少し特殊な方法ですが信託会社が信託受益権を利用して発行する方法も実は存在します。しかし発行可能な事業者に該当するための金融ライセンスの取得難易度が高いので、あくまでこう言った事例があるという認識程度で問題ないかと思われます。
このスキームを用いて発行されているのは三菱UFJ信託らが提供するProgmat Coinで、信託受益権とは信託契約の受益者が信託商品からの利益を受け取る権利そのもののことを指し、DeFiで例えるとAAVEにUSDCに貸し出した時に受け取る同額のaUSDCに似ています。その信託受益権は同額の法定通貨(この場合は円)を裏付けにし引き換えに発行されているので、ステーブルコインとして利用すると言うことですね。
弊社でステーブルコインの発行スキームを構想する中で、この方法だけは唯一思いつかなかったので少し悔しい気持ちと共に斬新だと感じたのを覚えています。

電子決済手段業者として発行する

資金決済法改正の中で電子的支払手段という新たなジャンルが発表されました。現在流通する前払式支払手段の一部もこれに該当する可能性があると言われています。そうなると前払式支払手段のライセンスを利用して発行している事業者は新たに電子的支払手段等取扱業のライセンスを取得せずして運営することは難しくなります。
まず電子的支払手段について説明します。電子的支払手段とは銀行業、資金移動業、信託受益権などを用いて発行するステーブルコインを総称したものです。その中でも4つの区分に分かれており、1号電子決済手段を通貨建資産とし、3号電子決済手段を信託受益権によるものだと定められています。今回肝となるのは4号電子決済手段(以下それぞれの電子決済手段を省略し4号とする)で、世のパブリックチェーンで発行された前払式支払手段が固化に該当するかもと示唆されています。特に4号に該当するかどうかは内閣府令によって決められると言うことです。
1〜3号に該当するスキームを用いて発行するには対応する比較的取得難易度の高いライセンスを取得する必要がありましたよね。しかし4号に関しては電子決済手段関連のライセンスを取得することで発行が可能になるかもしれません。
ここからは個人的な見解ですが既存の前払式ステーブルコインが電子決済手段に該当するとされた場合でも、そのステーブルコインがライセンスを取得することに少しハードルがあるのではないかと考えています。
要するに前払式支払手段の枠組みに当てはめて発行できないと内閣府令で位置付けられたステーブルコインの認可をそのまま電子的支払手段で通すかどうかと言うことです。もちろん運用上変更する点はいくつかあるかと思いますが、そこを指摘する人も少なくないです。この取り決めに関しては情報量が少なく実運用が始まってからいろんなことがわかってくるのではとも思うのでこれ以上の言及はやめておきます。

過剰担保型ステーブルコインを(暗号資産として)海外で発行し国内取引所に上場させる

この方式はMakerDAOのステーブルコインDAIが国内で上場できていることから、中央集権的なステーブルコインすなわちUSDTやUSDCは国内での公式的な合法での流通が難しいと位置付けられているが、DAIになぞった発行•管理方法のステーブルコインであれば、日本でも上場および流通が可能だと考えられます。

DAIはドル建かつ流通量も2022年10月末時点で62億ドルと、日本円換算で9,000億円を超え時価総額ランキングでも14位にランクインしています。このことが上場要件をクリアしたと仮に仮定するとこの規模の流通量に日本円のステーブルコインが発達することは現実的ではないと考えるのが一般的でしょう。しかし可能性としてゼロではないですが、日本国内ではローンチが難しいので海外でMakerDAOのような方式での日本円ステーブルコインを日本人ファウンダーが生み出すことを少しながら期待しています。

以上が日本で流通させられる日本円ステーブルコインを発行する5つの方法です。さまざまな壁は存在しますが、Web3を国家戦略になどと大々的に掲げているこの日本でよりよい環境に整備されることをこころより期待し、弊社もYEN社と一緒に現状の環境改善に会社として取り組んでいけるととても嬉しいです!

おわりに

最後まで読んでいただきありがとうございます!このレポートはYEN株式会社のスポンサーによって提供されています。本ページのURLを含むツイートのリツイートで10YENがフォティソンから送られます!

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