弱の道はヘヴィ


動物園に行った時の話

障害のある30歳くらいの男性のお客さんがいた

おそらく毎日とか毎週だとかかなりの頻度で来るんだろう

彼は分厚いスケッチブックを持っていた

動物園中の動物をその中に収めるのが彼の夢


その日は丁寧に蛇を描いていた

色鉛筆を使って、鱗の一枚一枚にキラキラをつけていく

遠目から見ても本当に一生懸命に描いていることがわかる
 

描き終わると彼は

近くにいた飼育員さんに声をかけ

「今日はこれを描いたよ」

「この蛇はこういう特徴があると思ったよ」

とスケッチブックを見てもらっていた

飼育員さんは


「あーはいはい!」


ほとんど中身も見ずに、話しかけられることが迷惑だという態度を出し、一言で応対した


男性はしょんぼりとしながらも始めた説明をやめられず辛そうに話を続けていた

誰が悪いとか

何が悪いとか

言うつもりはない

事情も関係性も知らないし


 

ただ、僕は傷付いた
 
世の中のおぞましいニュースやら残酷な現実よりずっと深く

僕は傷付いた

眠れない夜に思い出すくらいに


そうなぜか


眠れない夜に思い出すのはいつも嫌なことばかり

こうなってしまうとこの夜は

絶対にどんなことも決断してはいけないぞと自分に言い聞かせながら


明るくなるのを待つだけ


あと1時間眠れなければ

口笛を吹いて

蛇の絵でも描こうか

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