道頓堀に飛び込みたい


こう見えて

道頓堀に飛び込むのが夢みたいなところがある

わ〜っとなって橋の淵に立ち

少し周りを煽って

ジャンプして飛び込む

服はびしょ濡れ

友達は苦笑い

そんなのって、素敵だと思う


僕は

ワールドカップで日本がいいところまで行ったら

大阪に宿を取り

バーで試合を見る

いいところで道頓堀へ

勝ってお祭り騒ぎの中を飛び込むんだ

そう思ってる

水が汚いかもしれないから耳栓をして

鼻から入っても嫌だから鼻栓をして

濡れた身体じゃ風邪ひくからタオルも用意して

いきなり飛び込んだら怪我をするかもしれないから準備運動をして

飛び込みは失敗すると痛いから事前にプールで練習をして

さながら飛び込みの選手のように

水面と垂直に

音も立てずに美しく飛び込む


なんでだよ

なんでこうなっちゃうんだよ


僕がやりたいのはその場のノリに負けて飛び込んじゃう馬鹿なんだ

そもそも試合に勝ったら飛び込もうとして大阪に宿取る時点でそれは「計画」

水が汚いことなんて考えもせずに飛び込んでしまうのが「いい」んだろう


いつか道頓堀に飛び込みたいんだ

なんて思ってる時点でもうノリがズレてる


内気で哀れな僕は

「いつか道頓堀に飛び込みたい」と思った時点でもうナチュラルに道頓堀には飛び込めない

身体は飛び込めるけど、心は飛び込めない

気付いてしまった今

僕の人生からは道頓堀にノリで飛び込むことは失われてしまったんだ

もう僕の人生では道頓堀には飛び込めないけど

僕の人生には他にもいろんな「道頓堀」があるはずで

いつかそのときには飛び込めたらいいなと思った

きっとかっこよく飛び込むから

苦笑いして見ていてほしい



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