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なりたい自分になればいい。(あるいは自問自答ファッション約一周年記念)


2023年初秋、私は去年と同じ部屋着を着ている。

ユニクロで買ったリラコと、好きな舞台のグッズTシャツ。
私は去年、その姿で異様に焦っていた。
仕事と生活に追われる中で自分の形を失ったみたいで必死に必死に何かないかと手探りで出逢ったのが自問自答ファッションだった。

それから間もなく一年が経つ。
同じ部屋着なのに私は平然としている。

クローゼットを開ければ自分なりに試行錯誤をしたり運命を感じたアイテムが並んでいる。この前の断服式で随分と量も減って自問自答後のアイテムの方が多くなった。
鞄も、靴も、服も。前よりずっと数は少なくなったが気に入ったものが揃っている。

それだけで安心できるのは何故だろうか。

金髪になりたければブリーチすれば良いだけのこと

「社会通念上」一般の会社員として勤めている限りは金髪にするのは難しいと思っていた。
特に私がメインで行っている業務は人に会うことも多くそんな中で金髪にするのは難しいと諦めたように話すと周りは必ず言う。
「金髪の○○(職務名)がいてもいいと思う。むしろ面白い」
「子供を相手にした仕事じゃないんだし、たとえ○○(職務名)が金髪だからって悪影響を与えることは無いと思う」
「たとえ金髪だからって私たちがやった仕事の価値は下がらない。技術は見た目と繋がっていないんだから」

怯えていたのは私の方だった。
初めは年末年始に、
次は五月に、
今では三回目のブリーチをしてフルブリーチを維持している。

毎日、鏡を見て「ああ、私金髪にしたかったんだよなあ」としげしげと眺めている。
ついでに脱色しすぎた眉毛も見て「眉毛もブリーチすると治安が悪くて良いなあ」と思う。

そうやって私はやっと、自分が「こうなりたい」姿になれたことに気がついた。

じっくり選んだ、もしくは雷が落ちたように出逢ったモード系の服を着て
髪や眉毛を金色にして
四季や場面に合わせた好きな靴を履いて、なんなら夢見ていたタビブーツを手にして秋冬に向けてゆっくり慣らしている最中で

風呂上がり、まだ濡れそぼった髪のままで思う。

すごい遠回りをしたけど、私はなりたい私になれている。近づけている。
なんだ、ただ髪を染めただけでやっと、こんな大事なことに気づけたのか。

私と物欲の戦いについて

現状、珍しいことにぴたっと凪いでいることが驚きだ。
(散財芸人として誇っていた私なのに!)
mmmJewelryさんで私の庭とDringを迎えたこと、何よりタビブーツを手に入れたことで今年の夏、自分の「欲」が綺麗な石みたいになって心の中に留まっている。
次は身近でアップグレードしたいものを考える段階だと、現状の金銭状況も踏まえていつに何を買うかを計画している最中だ。
(次のボーナスが入ったらレンズ込みで家賃より高い眼鏡を買うつもり)
現状振り返ってどうせだったら部屋着もかわいらしいものに変えてしまおうかと考えたが2年連続のリラコが絶妙に着やすく過ごしやすいので来年も引きずってしまうかもしれない。
その時はその時だ、また自問自答しよう。

自分になると、息がしやすくなる。

沢山の服を持っていたときは「服が被るのがいや」でとにかく数を集めていた。
コロナ禍前の毎日出勤のときになるべく毎日違う服装をすることがおしゃれの一つだと思っていた。
そのためにプチプラに頼っていたし、一回の買い物でわりといいブランドのシャツが一枚買えるぐらい使っていた。
今にして思えばそんなに混沌としたクローゼットが管理が出来るはずが無いのだ。
ひたすらに選んだ一着と流し見をしながら取り上げていった一着では価値が違う。
それは金銭面の違いでもブランド性の違いでもなく、「私が満足しているかどうか」の問題だ。
「この服を着ている時の私と自分の距離は乖離していない」と思えるかどうかが、一番の命題だった。
安心して呼吸が出来る服は全て、皮膚のように馴染んで私のことを包んでくれる。それはすべて、自問自答をしたあとの服ばかりだ。

自問自答ファッション界隈の方と出逢うと「どのアイテムもおだまきさんが身につけることで急におだまきさんらしくなる」と言って貰えることが増えた。
すごく、嬉しい一言だった。

私に自分を取り戻す方法と呼吸のしやすさを教えてくれたのがあきやさんであり、自問自答ファッションであり、共にモグラ活動に勤しんでいた自問自答ガールズの皆々様だった。
本当に感謝の念は絶えない。

けだし、残像はつきまとう。

やっと私は私らしくなれたのに、最近よく夢で家族のことを思い出す。
金色の髪を、忌み嫌うように見てくるであろう人たちのことを、私は知っている。
必死で集めたクローゼットの中身を不相応だと言い、そんな服を着るなと言ってくる人たちのことを、私は知っている。
血を分けた家族だからこそ執拗で、諦めが悪く、説得がしづらく、相手の思い通りにならない限り攻撃は続く。
理想に近づけば近づくほど、夢の中で引きずり落とされる。

「明け方に家族の夢を見た」
と配偶者に話すと「起こしてくれたら良かったのに」と心配そうな顔で見返された。
ああそうか、と私は少し脱力する。
ここは地元では無くて、私と配偶者がそれぞれに家賃を折半して生活している部屋で、東京で。

東京は誰も何も気にしないから私が金髪でも、黒い服ばかり着ていてもなにもいわなくて、過去のことも詮索されなくて、それが生きやすくて、だから私はもうあの土地には戻れなくて。

ゆっくりと、何度もさよならを言い続けよう。
私の悪夢が途切れるまで。
私は、これから何度でも、自分が集めた宝物を身につけて本当の私に還ります。

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