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東京にいた頃の私は、光を求めて生きていた。


私は生まれてから20年以上、ずっと東京で生きてきた。そして結婚も離婚も、東京で経験した。
結婚した時私は、新卒で入った会社を辞め、近くの飲食店でパートを始めた。だから離婚するとなった時、特にこの土地でこの仕事を続ける意味も無かった。
せっかくなら遠くに行こうと思った。知らない土地で生きてみようと思った。
選んだのは東京から625km離れた地。
一度も足を踏み入れた事が無かったが、何となく、けれども強くここで生きてみたいと思った。


2023年2月。
生まれてから20年以上生きてきた東京を離れ、縁もゆかりも無い土地で暮らし始めた。
そこで新たに就職もした。
業界最大手、全国規模の大きな会社の、小さな事務所。

そこで彼女に出会った。

とても綺麗で、美しい女性。
彼女が笑うと、例えどんな場所でも一瞬にして大輪の花が咲くように、明るい光が差し込む。
でも、彼女は母親より年上だった。
今の時代うんと離れた歳の人を好きになる、とか、同性を好きになる、というのはよく聞くけれど、うんと離れた歳の同性を好きになる、というのはまだまだ少ない。
だから最初は憧れや尊敬を恋と履き違えているだけだと思った。いや、そうであってほしいと願った。もう誰の人生とも深く交わりたくなかった。

でもそうではなかった。
気付いたら彼女を目で追っていた。
彼女に名前を呼ばれると胸が高鳴った。
彼女の笑顔を見て、これ以上ない程癒された。
これが恋じゃ無いのだとしたら、もう私は恋が何か分からなくなるくらい、はっきりと、確実に恋をしていた。
私はおかしいのかもしれない。
恋愛の仕方を間違えているのかもしれない。
それでも彼女の存在は、私を縛っていたさまざまな正しさから一気に解放していった。
それはまるで、暗闇に一筋の光が差し込んだようだった。

誰の意見も介入していない私一人で選んだこの土地。私一人で選んだこの職場。そこで彼女に出会い恋が出来たことを、私は誇りに思う。
私一人正しさから解放されたぐらいじゃ、どんなに願ってもきっと叶わない恋だろうけれど、たった一人で生きる私にとって、彼女の存在は光のように、私の道標になってくれている。
彼女に出会えて良かった。
どうかこの先も彼女が幸せでありますように。
かわらず笑顔でいられますように。



出来れば彼女にとっての光も、私でありますように。

#創作対象2023 #エッセイ部門

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