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【2018中超リーグ終了、総括】

■上海上港、初優勝
第29節に上海上港がホームで北京人和に2-1で勝利。前節28節に前年王者の2位広州恒大との直接対決を5-4で制し、勝ち点差5となり残り2試合で勝ち点1で優勝決定する状況だった。(直接対決で2勝のため)これにより1試合を残して上港の初優勝&初タイトルが決定した。

・クラブの歴史
上海上港は2000年に徐根宝(Xu Genbao元代表監督)が3000万人民元を投じて上海郊外・崇明島にトレーニング施設を作り中国各地から少年を集め育成開始したのが発祥。
2006年に上海東亜グループの協賛を得て【上海東亜】として中乙リーグ(3部)に参戦し翌年優勝して中甲(2部)へ、2012年に中甲優勝しトップリーグに昇格。(2012年のみ【上海特莱士】と改名)
2014年末に国有企業の上海國際港務(略称上港、SIPG)がクラブの株式を100%取得して以降は、金満の強豪と変化して現在に至る。

・今期
開幕戦で大連一方を8-0で粉砕し6連勝、ACLでも2試合残しGL突破を決めるロケットスタートも、4月末から5月にかけて低迷。リーグ戦4戦勝ちなしに加え、この間にACL決勝Tで鹿島に、足協杯も北京国安に敗れ早くもリーグ戦1本になったが、結果的に層が厚くないチームはリーグ戦に集中できたことで恒大の追撃を振り切ることができた。16節で大連一方に0-1で敗れてから14戦を12勝2分、恒大との直接対決を2連勝した。

・下部組織出身者の貢献
特筆すべきは外国人選手と2015年上港入資以降に獲得した于海(Yu Hai)、石柯(Shi Ke)と控えGK孫楽(Sun Le)を除く中国人選手全員が下部組織出身である点。
事実上の優勝決定戦となった広州恒大戦の先発中7人が下部組織出身。先制点の呂文君(Lv Wenjung)2点目蔡慧康(Cai Huikang)3点目武磊(Wu Lei).クロスで4点目オウンゴール誘発の王燊超(Wang Shenchao)守護神の顔駿凌(Yan Junling)この5人はいずれも崇明島時代、3部リーグから戦ってきた。他にも先発の傅歓(Fu Huan)張衛(Zhang Wei)途中出場の2人賀慣(He Guan)李聖龍(Li Shenlong)皆東亜時代からの生抜きである。


勿論外国人選手、外様選手の貢献も不可欠だが、「金にモノを言わせてるだけじゃなく、育成も頑張ってる」クラブ。北京人和戦後のスタジアムでは徐根宝コールが鳴り響いた、チーム創設者がここまで称賛される例は多くないだろう。

・投資額
2015年以降の4年間でSIPGがクラブに投じたのは総額70億人民元(1,150億円)と言われる。
外国人選手獲得の移籍金で11億人民元(オスカル6000万€/フッキ5580万€/エウケソン1850万€/アフメドフ700万€=合計1.4億€=約11億人民元) 年俸で4.4億人民元(オスカル2440万€/フッキ2000万€/エウケソン600万€/アフメドフ500万€=合計5540万€=約4.4億人民元)
「70億使ってやっと1回優勝、その間に広州恒大は7連覇しACL2度制していた」と揶揄する声もある。

・外国人選手
オスカル(Oscar) 昨年は乱闘騒ぎの8試合出場停止でネガティブなイメージだった。今季は開幕戦でハットトリックを皮切り12得点、18アシストでダントツのリーグアシスト王に。本領発揮した感がある。
フッキ(Hulk)はポルト時代の恩師ペレイラにより今期からキャプテンマークを預かった影響か、昨年までのエゴイズムは鳴りを潜め、自らのゴールへの欲望より周囲のサポートに徹した印象。13得点13アシスト。
エウケソン(Elkeson)は不満のシーズン、外国人枠削減によりアフメドフとのポジション争いに敗れた格好。来季以降の去就は微妙
アフメドフ(Odil Ahmedov) AFC枠が撤廃されたが、中盤攻守の潤滑油として不動の存在になり、ウズベキスタン代表主将は結果的に3人目の外国人枠をエウケソンから奪ったのは見事。他の3人に比べればコストパフォーマンスも素晴らしい。

・武磊
上港と中国代表のエースに成長した27歳は、外国人枠削減で控えに回ったエウケソンに変わるCFでのプレーが増えたこともあり、ダントツの27得点。
2007年李金羽以来11年ぶりの国産得点王&同年の杜震宇以来の国産リーグMVPを受賞。最高のシーズンとなった。

2008年にデビュー以来リーグ通算151得点、2013年中超昇格後6年間で102得点。チームメイトに恵まれた点はあれど、彼は主に2列目で起用される点。また今期はPKがゼロ(フッキがキッカー)からも驚異的な数字と言えよう。彼に期待されるのは代表での活躍と欧州移籍である。


広州恒大8連覇ならず
後半戦パウリーニョ&タリスカ加入後盛り返すも8連覇ならず、一時代が終わった。前半戦で苦戦し折り返し時点で5位と過去にはない低迷、この遅れを取り返せなかった。

・外国人選手
バルサへ去ったパウリーニョの代役と期待されたグデリ(Nemanja Gudelj)が期待外れに終わると、夏にパウリーニョとアンデルソン・タリスカを獲得すると前者は13得点、後者は18得点と驚異的パフォーマンス。彼らが最初からいれば、、と思わざるを得ない。

・主力の高齢化
2015年ACL制覇した当時の主力が殆ど変わっていない。89年生まれの张琳芃以外中国人選手の主力は軒並み30代、有望な若手も獲得しているが代表主力級の壁を崩せずそのまま高齢化している印象。新陳代謝が望まれる

ACL出場権

3位山東魯能、4位北京国安の両チームがカップ戦決勝に進出している為、この上位4チームがそのまま2019年ACL出場。

山東魯能は【鬼軍曹】フェリックス・マガト(Felix Magath)が退任し、今期から日韓W杯代表でチームレジェンドの李霄鵬(Li Xiaopeng)が監督就任。監督経験薄く不安視されたが2年ぶりACL出場権を獲得した。いずれも元ブラジル代表ジエゴ・タルデッリ(Diego Tardelli)ジウ(Gil)、元イタリア代表ペッレ(Graziano Pelle)といった強力外国人だけでなく、代表定着した金敬道であったり、他の列強に比べ下部組織出身者も積極登用しており未来は明るい。一方で前述の外国人3人衆は長く在籍しており、退団の可能性もあり、誰か抜けた場合の穴埋めも容易ではない。

ロジャー・シュミット(Roger Schmidt)率いる北京国安は現役セレソンのレナト・アウグスト(Renato Augusto)アフリカ人選手史上最高移籍金額で加入したバカンブ(Cedric Bakambu)スペイン代表歴あるジョナタン・ビエラ(Jonathan Viera)リーガやレッドブル・ザルツブルクで活躍したソリアーノ(Jonathan Soriano)の外国人選手がハマったが、公式戦全得点中78%が外国人選手の得点と依存度が激しい。またキャプテンで代表FWの于大宝(Yu Dabao)をCB起用するなど選手層に不安がある。

■残留争い
最終的には長春亜泰,貴州恒豊が降格。

貴州は序盤から低迷し、グレゴリオ・マンサーノ(Gregorio Manzano)に変えてダン・ぺトレスク(Dan Petrescu)監督を招聘も立ちなおせず28節で降格決定。2017年美人オーナーの元で昇格1年目で8位と躍進したが、2年で中甲戻りに。


残る一枠は5試合残して10位と安全圏にいた長春亜泰が最後に大崩れ、2007年にリーグ優勝経験する北の古豪が初の降格となってしまった。得点ランク2位のナイジェリア代表イガロ(Odion Ighalo)を要したが、逆に言えば彼への依存度が高すぎたかもしれない。

なお、中甲(2部)からは李鉄監督(現役時代エバートン等でプレイ)、ラファエル・シルバ(前浦和レッズ)率いる武漢卓爾が優勝、レアルマドリードなどを指揮したファン・ロペス・カロ監督の深圳佳兆業が準優勝、この2チームが昇格。

■データ面

・外国人選手得点率

全768得点中269得点(35%)が中国人選手の得点。これでも武磊が爆発したり、例年より比率は上がっている。

全16チーム中、中国人選手の得点が外国人選手を上回ったのは武磊の上海上港と、董学升が12得点の河北華夏。

・観客動員

平均動員1位広州恒大、2位北京国安といった強豪名門は毎試合4-5万人収容、逆におなじ都市の広州富力、北京人和が最下位とブービーなのは同じ都市の兄貴分の存在と、歴史の浅さ、スタジアムキャパシティの問題か。

残念なのは上海上港、最大6万人収容の上海体育場は周辺の工事、警備面の理由で50パーセント以下のキャパシティに制限されていた。記念すべき初優勝の試合も2万人以下に制限されていたのは残念。

ーー体育場、、とあるように総合スタジアムばかり。上海申花の虹口のような専用スタジアムが増えることを期待したい。

 

■ピッチ外

外国人出場枠削減、U23枠、移籍金制限、VAR導入、シーズン大詰めの終盤に突如軍事キャンプ実施で各クラブの主力選手を強制招集、、

良くも悪くもトップダウンの国なので、日本や他国では考えられないことが起こる。政治経済、日常生活、サッカー、

来季もU23またはU21代表のリーグ参加、サラリーキャップ制度導入、外国人枠変更・・いろんな噂が飛び回っている。来季開幕まで何があるか分からない。今の中超はピッチ内よりピッチ外の方が見ものかもしれない・・

軍事訓練中の様子、この訓練で主力選手を失い苦労したクラブ、このおかげでU23枠が撤廃されて影響あったクラブや選手多数

VAR、誤審はだいぶん減ったはず


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