広州恒大 歴代外国人&監督列伝(2011~)
広州恒大というクラブの概要は↓をご覧頂くとして、
中超(1部リーグ)昇格した2011年以降に絞りたい。
*在籍年は恒大でプレーした年度、他チームへのレンタルなどは除く。数字はリーグ戦限定の数字、ソースはWikipedia
■FWクレオ(Cléo ブラジル 2011-12 )38試合17得点 評価B
恒大が中超(1部)昇格時に最初に獲得した大物選手、加入前のシーズンはセルビアの名門パルチザンのエースとして欧州CLでも得点上げていた。今となっては何とも思わないがバブル開始当初の中國リーグでは屈指の大物FWで。1年目も10試合10得点と活躍も怪我に泣いた。2013年は柏レイソルなどへレンタル、14年に退団。2018年に青島青海に加入し1部昇格に向けて奮闘中。怪我もあり恒大での活躍度は満足には遠いが、後述する南米人選手特有のイザコザもなく、また印象的だったのは柏在籍時ACLで貴州人和(北京人和)と対戦時、交代する際恒大時代チームメイトだった選手含め多くの中國人選手が彼に握手を求めたシーンから、人間的評価の高さを感じた。
■MFチョ・ウォンヒ(Choi Wonhee韓国 2011-12 )47試合0得点 評価A
韓国代表としてW杯出場、英プレミアリーグも経験した「韓国のガットゥーゾ」恒大のAFC枠の先駆けとなった選手だが、献身的なプレーで高い評価を受けた。2012年5月のACL・FC東京戦では肋骨を骨折しながらピンチを防ぎ、その怪我が元で後輩のキムヨングォンに座を奪われ退団することになるも、武漢卓爾移籍後も古巣との対戦では大歓声を受けている。キムと並び歴代屈指のAFC枠助っ人との評価も。その後大宮などをへて2018年引退
■MFレナト(Renato Cajá ブラジル 2011)10試合0得点 評価C
2011年加入も半年で戦力外に、途中交代させられた試合で怒ってそのまま帰って罰金&出場停止くらい、夏にダリオ・コンカ加入で戦力外に。その後レンタルで鹿島などに在籍した。
■DFパウロン(Paulão ブラジル)47試合0得点 評価AB
クレオらと同時期に加入した屈強なCB、グレミオなどブラジルの名門クラブへて恒大で2シーズン貢献したがキムヨングォンの加入や他同胞に押し出された格好。もっと弱いチームや、違う時代ならもっと中国で名声を得ていたであろう。
■DFキムヨングォン(Kim Young-gwon韓国 2012-18)91試合3得点 評価A
大宮から加入し、恒大だけでなく韓国代表でも屈指のCBに成長。先輩チョウォンヒと共に中国リーグに韓流ブーム(一時期はほぼ全チームに韓国人選手がいた)をもたらした功労者。欧州移籍は実現できず2019年ガンバ大阪に去ったが、守備だけでなく組み立てでも関与、左SBや中盤にも対応。在籍終盤は怪我などでパフォーマンス低下したのが残念だったが、南米3人衆の影ながら間違いなく恒大の栄光の功労者である。
■MFダリオ・コンカ(Dario Conca アルゼンチン )65試合33得点 評価S
ブラジル全国選手権MVPの勲章をひっさげた「天体之王(天体は恒大の本拠地天河体育場の略称)」後述するムリキ、エウケソンらと中国、全アジアを恐怖に陥れた攻撃的MF。技術、得点力、視野の広さ、支配力、中国リーグ歴代最高の助っ人とも称される。年俸は1040万ドル(当時約11億4000万円)と言われ、レアルマドリードとPSM対戦時に同胞ディ・マリアよりも年俸が高く驚かれたほどだが、充分値する選手だった。退団時にホームの芝生にキスしたシーンは語り草に。一度ブラジルに戻りライバルの上港に加入したのも驚いた。その後怪我などもあり2019年に引退、その後ゴルフ事業に従事するとか
■FWムリキ(Muriqui ブラジル 2010-14,17)100試合56得点 評価S
説明不要の「黒豹」。ちなみにMuriquiは生まれた区の地名らしい。2010年2部時代の恒大に加入後、2011年リーグ得点王、13年ACL得点王、驚異的なスピードと決定力で印象を残した。2014年にカタールのアルサッド、その後FC東京、ブラジル復帰経て2017年に復帰。18年には2部の梅県鉄漢に加入し得点量産している。
■FWルーカス・バリオス(Lucas Barriosパラグアイ2012-13)17試合5得点 評価C
ドルトムントから鳴り物入りも、期待外れのままエウケソンに追いやられる形で退団。プレイのみならず退団時は恒大を批判&給与未払いを訴え、結局敗訴してスパルタク・モスクワへの移籍金を一部肩代わりさせられるなど散々。ピッチ内外において悪印象だけ残した。
■FWエウケソン(Elkeson ブラジル 2013-15)72試合59得点 評価S
コンカ・ムリキと共に恒大の栄光を支えた南米3人衆、13,14年2年連続リーグ得点王、2度のACL制覇した試合どちらでも得点上げており、欧州移籍の話もあったなか1700万€でライバル上港への移籍も驚かされた。上港では外国人枠削減の影響もあり恒大時代程の猛威は振るっていないが、歴代屈指の外国人アタッカーであることは疑うようもなく。2019年には中国国籍取得し中国代表入りが噂されている(2011年にブラジル代表招集歴あるが公式戦出場歴はないため中国代表入りは可能)
■MFディアマンティ(AlessandroDiamantiイタリア2014)24試合4得点 評価AB
マルチェロ・リッピが連れてきたジラルディーノ&ディアマンティのイタリアコンビはもはや「そういえばいたな」扱い、ディアマンティ自身はそれなりに活躍したが、前年のメンバーとその栄光が強すぎたか。ACLでも何度も窮地を救った左足は流石現役アッズーリ、1年で去ったのは残念。
■FWジラルディーノ(Alberto Gilardino イタリア 2014)14試合5得点 評価B
ディアマンティ以上に「そういえばいたな」扱い。峠を過ぎていたとはいえ、世界制覇経験者でも甘くないことを思い知らさえれた。ACLのウェスタン・シドニー戦で外しまくったのが最も印象に残る。
■MFレネ・ジュニオール(Renê Júniorブラジル2014-15)31試合8得点 評価A
彼もイタリアコンビ同様忘れられかけているが、ボランチながら8得点を記録するなど貢献。パウリーニョと入替りでチームを去ったが、如何せん地味、見た目もムリキやアランとごっちゃんになる。他のチームならもっと主役級になれたかもしれない。パウリーニョの劣化版
■FWリカルド・グラル(Ricardo Goulart ブラジル 2015-)104試合71得点 評価S
コンカ同様ブラジル全国選手権MVPを引っ提げて加入、コンカ、ムリキらのような派手さはないが冷静なフィニッシュで得点を量産。怪我や出場停止もほぼなく2015年ACL優勝時は大会MVP&得点王、15,16は2年連続リーグMVP。その後怪我&タリスカらに押し出される形で2019年パルメイラスに復帰するも、19年夏に恒大復帰&2020年に加入後5年経過で中国国籍取得しエウケソン同様中国代表入りするとの報道が。実現すればエウケソン以上にヤバい存在になるかもしれない。(2014年エクアドル戦でブラジル代表1キャップ記録しているが非公式戦のため中国代表入りは可能)
■FWジャクソン・マルチネス(Jackson Martínezコロンビア2016-18)10試合4得点 評価C
アトレティコマドリードから加入時の移籍金4200万ユーロ(約54億9000万円)も、加入後はACL初のGL敗退の戦犯の烙印を押され、更に負傷で2年近く離脱し代表からも外れキャリア転落、、と可哀想なくらいの失敗事例。クラブの敏腕GM劉永杓が一度退任したのはマルチネス獲得の責任を取らされたとも言われる。ポルティモネンセへの移籍後は復活しているようで、今後に期待。2014年W杯で日本代表を敗退に追い込んだのが大昔に感じる。
彼もそうだが中国のクラブが高額で買った選手は年俸も釣り上がっているため売却もひと苦労で、結局契約解消したり、大損するケースが多い。
■DFキムヒョンイル(韓国 2017)0試合0得点 評価-
前年に全北現代のアジア制覇に貢献、2010W杯韓国代表メンバーでもある屈強なCB.キムヨングォンの負傷離脱の穴埋めと期待されたが在籍半年でベンチ入りすらなし。本人も黒歴史だろう。なぜ獲得したのか・・
■FWアラン(Alan Calvalho ブラジル 2015-)66試合37得点 評価AB
加入前はレッドブル・ザルツブルクで得点量産しヨーロッパリーグ得点王、しかし加入直後のACLで重傷負い1年間棒に振るうも2年目以降の活躍は及第点、他のブラジル人が犯罪級だったので見劣りするが充分な活躍だったかと。ただ怪我と2018年にラフプレーで長期出場停止食らった負の面もありAB評価に。2019年に天津天海へレンタル移籍。
■FWロビーニョ(Robinho ブラジル 2015)10試合3得点 評価B
2015年後半に半年だけ在籍、レアルマドリード等で活躍した歴代屈指の大物を短期的パートタイム要員というぜいたくな補強、リーグ戦限定も上海上港との直接対決で得点するなどそこそこ貢献した印象。
■MFパウリーニョ(Paulinho ブラジル 2015-17,18-)82試合30得点*2018年迄 評価S
トットナムから加入後ACL優勝に貢献したBtoB MF。PA内でピンチを救った直後には相手ゴール前に飛び込んでいる、3人くらいいる錯覚を覚える。コンカ、エウケソンら成功例と比べて画期的なのは、既にブラジル代表&欧州で実績ある選手だった点、恒大での活躍でブラジル代表主力に返り咲き、かつ名門バルセロナへの加入で移籍金の元を取った点で、ピッチだけでなくビジネス面でも多くのものをもたらした。。が恒大低迷で翌年夏に更に高額でバルセロナから買い戻したのはずっこけそうになった。ボランチながら守備からFW級の驚異的得点力に、素晴らしい選手だけど、買い戻した恒大の決断は残念に思う。音を当てた【暴力鳥】の愛称がぴったり
日本の皆さんにはやはりACL柏戦のこのFKが印象的だろうかと
■MFネマニャ・グデリ(Nemanja Gudeljセルビア2018)11試合2得点 評価B
オランダリーグへて天津泰達で活躍、パウリーニョの後釜として恒大が初めて国内クラブから獲得した外国人選手。それなりに活躍したと思うが前任者が凄すぎて小粒感が否めず不憫だった印象。半年でそのバルセロナからそのパウリーニョ召喚でお払い箱になりポルトガルへレンタル移籍。結局W杯メンバーからも漏れてしまったのは残念。
■MFタリスカ(Anderson Taliscaブラジル)18試合16得点*2018年迄 評価A
ベンフィカ、ベシクタシュへて2018年レンタル加入し2019年完全移籍。セレソン招集歴あるレフティーだが191CMでヘディングもあり、ミドルにFKもあり、初年度半年で18試合16得点と1試合1得点のペースで中国を蹂躙。2年目は怪我で暫く離脱するのが残念。個人能力でいえば歴代でも屈指かもしれず、彼への依存度が高いのが今の恒大のリスク。パウリーニョ同様こんな極東にいるべきじゃない選手ではある
■DFパク.ジス(Park Ji-soo 韓国 2019-)評価-
2019年キムヨングォンの後釜として加入したアジア枠CB。前年慶南FCを躍進させ韓国代表にも定着した有望株だが、広州恒大のCBは中国代表クラスが5-6人+後述のブラウニングもいて、正直獲得の必要性は疑問。加入後も国内リーグは外国人2人までの方針のためリ出番はもっぱらACL。好選手だが本土化というクラブの方針も相まって長居できるかは微妙に思う。
■DFブラウニング(Tyias Browning イングランド2019-) 評価-
エバートンから加入したCB。年代別イングランド代表歴あり、エバートンでは7試合出場にとどまり主に下部へのレンタルで経験を積んだ。祖母が中国人で、将来的な中国国籍取得を見据えての獲得。なので近いうちに外国人扱いではなくなるかも・・
★番外編、歴代監督
書いてる途中に監督の方も面白そうだと思いたち
■李章洙(Lee Jang-Soo 韓国 2010-12)
98年重慶を皮切りに長く中国で指導実績を積み、重慶市と青島市で名誉市民を授与されている。2010年2部時代の恒大の指揮官として1部昇格&即優勝に貢献したが、2012年春に解任された。
ACL最終戦・アウェーでブリーラムを2-1で下し初出場のACLでGL1位通過を決めた夜に解任された。写真は解任後に空港で一服している姿。
実績残したにも関わらず解任された理由は、豪華になり始めた外国人選手を制御できなかった点。例えばコンカやムリキは退団報道やメディアに不満を漏らしたとの噂があったし、ACLのような重要な試合でほぼ選手交代をせずメンバー固定したこと等が推測されるが、結果論として後任にあの大物を連れてくるためだったのだろう。
■マルチェロ・リッピ(Marcello Lippi イタリア 2012-14)
*中国でも原則スタジアムでの喫煙は禁止されています、代表監督が吸っちゃってますが
恒大で2年半、2016年末からは中国代表監督に就任、本人もまさかここまでこの国にどっぷり浸かるとは思わなかっただろう。
采配面の特徴はとにかく打つ手が早い。恒大でも代表でもハーフタイム、時には前半で選手を交代する。印象的だったのは2015年のACLメルボルン戦、0-2のハーフタイムにムリキを下げてほぼ無名だった廖力生を投入すると2アシスト等貢献し4-2の逆転勝利、廖も代表まで登りつめた。
代表監督として22年カタールW杯予選に臨むわけだが、どうか体に気を付けて、20年ぶりのW杯に連れてってくれればあとは何も申しません。何も、、
■ファビオ・カンナバーロ(Fabio Cannavaro イタリア 2014-15,18-)
リッピの後任に就任した愛弟子、2015年シーズン途中にリーグ首位、ACLもベスト8に勝ち残りながら解任されたあたり李章洙だし、後任にW杯優勝経験なる大物が来て結局「つなぎ」だった感もまた李章洙。リッピのコーチ団や豊富な戦力を引き継いだだけという冷評もあったが、その後天津権健を1部昇格&1年目でACL出場に導いた手腕は確か。スコラ―リ退任後2017年再度恒大監督に復帰。2019年一度退任したリッピの後釜として暫定的に代表監督を務めたが正式就任には至らず、そりゃあ弱いチームより強くて金貰えるチームの方がいいだろうけども・・リッピ2次政権終了時は間違いなくまたカンナバーロに声がかかるだろう(=押し付けられる)
現役時代の名声も相まってファンや選手にリスペクトされており、15年退任時の広州・白雲国際空港には多くのファンが詰めかけた。
■ルイス・フェリペ・スコラ―リ(Luiz Felipe Scolari ブラジル 2015-17)
リッピ→カンナバーロ(つなぎ)→スコラ―リ、またもW杯優勝経験者。初年度からACL優勝にリーグ3連覇と結果を残したが、そこまで評判や人気が伴わなかったのは見た目と選手固定、若手起用に消極的だった・・といったところか。パウリーニョを復活させたのは見事だったが、彼のもとで新陳代謝はあまりなかったのが残念。
■雑感
まあ豪華な顔ぶれがならぶが、2010年から9年間で監督は通算4人(カンナバーロ2回なので期としては5だが)監督をコロコロ変えていない故成功してるのか、成功してる故変えてないのか、継続性はある方かと。外国人もほぼ身元確かなブラジル人ばかりという印象。
この資金力ばかり報じられるが、このクラブの強みは徹底した内部管理。前日のバリオスやレナトだけでなく、コンカやムリキですら規律違反時は容赦なく罰金や停止処分を科される。最近でも代表戦でラフプレー働いた韦世豪がクラブ内で自主的に出場停止になったり、アジアカップで低パフォーマンスだった冯潇霆が1時リザーブ送りにされた。
選手だけでなく情報統制も特徴的で、自分の記憶が正しければスコラ―リやパウリーニョの時は事前報道がほぼなく、晴天の霹靂だった。外人だの爆買いだの云々だけでなくこういうところにも注目して頂きたい
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