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夜行列車に乗って

最近夜ベッドに入ったら天井にプロジェクターを投影して、動画を見てから眠ることにハマっている。

ちなみに、使っているのはNebula CapsuleⅡというポータブル式のプロジェクター。家にテレビがないので大画面で映画や動画を見るために2年前に購入して以来愛用している。
片手に収まるコンパクトサイズなので気軽に持ち運べるし、場所を気にせずどこにでも映像を投影できる。旅先やキャンプにも持っていけるというのが売りだ(持って行ったことないけど)。

最近好んで見ているのは、電車やフェリーに乗って旅をする動画。寝る前なのであまり刺激の強いものは見ずに、静かで見ているうちにうとうとできるようなものを選んでいる。
最近特にハマっているのが、シベリア鉄道で旅をするこの動画。

東京での暮らしに疲れ果てた男性がウラジオストクからイルクーツク経由でモスクワまで旅する動画で、曇天のロシアの車窓風景とともに流れる哀愁漂うモノローグや物悲しい音楽がまるで映画のような雰囲気を演出している。

憧れのシベリア鉄道の映像にワクワクしながらも、動画全体に漂う悲愴感にしみじみと親近感が湧く。
学生時代は未知の世界への旅路にただ果てしなく高揚していたのに、大人になってから、もはや旅することは逃避でしかなくなってしまった。電車に乗って長距離の旅をするとき、日常生活から離れて漂流することに大きな不安や焦燥感を感じる。電車はどんどん自分を知らない場所に連れて行くのに、行けば行くほど目的地なんてどこにもないような気持ちになる。

それでも電車に乗ると、ガタゴトと大きなゆりかごに揺られているような気分になってすぐに眠ってしまうのはなぜだろう。不安なときには眠るのが一番だ。私は電車に乗るとすぐ眠ってしまうので、寝る前に電車の映像を見るというのは理にかなっているかもしれない。

そして電車の映像ばかり見ていると、やっぱり電車に乗りたくなってくる。寝台列車にも乗ってみたい。東京まで行ってそこからサンライズ出雲に乗ろうか。行きたい場所を色々考えていたら、フェリーや高速バスに乗るのもいいかもしれないと思い付く。最近は散歩がてら高速バスターミナルをうろついて行き先掲示板を眺めたりする。

何泊何日で、何曜日に行こうかとか、何月が休みやすいかとか、そんなことを考えあぐねているだけで、たぶん結局行かないだろう。ちょっと旅に出るぐらいのお金はあるのに生活が苦しいからと出し惜しみして、休もうと思えば休めるのにあれこれ理由を付けて仕事の予定を入れる。
旅をする楽しさよりも、家に帰ってきた時の安心感のほうが大きい。いまの自分には、冒険に憧れる大胆さがなくなった。布団のなかでシベリア鉄道に乗って、現実逃避してるぐらいがちょうどいいのかもしれない。

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