見出し画像

Back to 2015 なりちんあさみ

六本木は雨が降り始めていた。
五分袖の黄色いモヘアニットじゃ少し寒い。

待ち合わせしてるお店に一番近いのは何番出口なのか、事前に調べずに向かった私は改札を出てから黄色い案内地図の前で足を止めた。

LINEで送られてきた食べログと案内地図を見比べながら向かうべき出口を探す。その時電話が鳴って書き慣れた声が聞こえた。

「着いたよ、六本木ヒルズにいる」

ヒルズに繋がっている1C出口から出たのかな。
私が見るには3番出口が近い気がするんだけど。

「ヒルズか、じゃあ一緒に行こう」

「え?ヒルズの中のお店じゃないの?」

どうやら彼女はどうやらお店を勘違いしてたみたいでシェイクシャックの前で待ち合わせて一緒に向かうことにした。

いつも時間を気にせず何となく待ち合わせて会う私たちだから全くこういうことは気にしないけど、今日はちょっと違う。

今夜は私が初めて外交官役(人を紹介する)を務める「友達の輪を広げようキャンペーン」。
彼女をシェイクシャックの前で待っている時点で遅刻の時間だったし、彼女を紹介するN君はもうお店で待ってるとのこと。

ちなみにN君は「感性と感覚が似ている友達(A)」として毎回登場する彼。

もう二人を会わせる前から気付いていた。
私はN君といると毎回彼女のことを思い出し、彼女といると毎回N君を思い出す。

この二人が合わないだなんてこと、ある?

なんていうか、もっとちゃんと話したことや二人のことに関して書こうとしてたんだけど、書きたかったんだけども、書くことなんて何もない。
だって二人は、いや私たち三人が会った時、本当に何年かぶりに再会したみたいな静かな高揚感と昨日の放課後の続きみたいな自然さと懐かしさがあったんだから。

私たちは絶対に修学旅行にも一緒に行って同級生を冷ややかな目で見ていたし、進路と向き合って親や友達と衝突して、大人なんてみんな敵で、絶対あんな風になりたくなんてないよねって言いながら放課後マックでポテトを分け合った。(スタバのフラペチーノを片手に、かもしれない)

新しい人と出会って、その人と過ごす未来が見えるっていうのはよくある。
この人とはこの先もずっとこういう関係が続くんだろうなとか、また会うだろうなとか。でも私が彼らに感じたのは確実に「過去」だった。

私たち今までもこうだったよね?って。

文句を言いながらもちょっと周りが楽しそうなのが羨ましくて、自分にこれといったものがない不安。そんな気持ちを抱えて過ごしていた私の学生時代に彼らは絶対にいた。

「みんなと一緒」が上手にできなかった私は学校を卒業してからも棘を持ち続け、その棘は人を刺激して、刺激するたびに削ぎ落とされた。でも削ぎ落とされたところからは前よりも鋭い棘が生えてくる。

そうやって鋭く硬い棘を持った私は未完成なのだ。

ちゃんとした大人にはまだなれていない。
怖いものはたくさんあるし、嫉妬で狂いそうになる時もあれば、不安に潰されて明日目覚めなきゃいいな、なんて時もある。

自分より若い人、美しい人、才能がある人、お金がある人、愛されている人なんてのが腐るほどいる世の中で(しかもそれら全部に当てはまってしまう人だっている)正気を保っていられる方法をまだ見つけていない。

だけど私は二人の前ではちゃんと怖いものを怖いと言えるし、二人は私の支離滅裂な話をちゃんと聞いて理解してくれる。テキーラのショットみたいなキツくてあとからジワジワ効いてくる言葉をくれる。

いまだかつて私の扱いがこんなに上手な人たちがいただろうか。。。

私は彼らと人が少ない日曜日の六本木を歩きながら










この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?