子宮がん検診で希望を抱いた性別違和感人
私は自分の肉体の性別(女性)に違和感があります。違和感はありますが、今のところ社会生活を女性として送っています。女装趣味のため服装も女性なので、社会生活上の問題は起きていません。「自分が違和感で悩む」という点を除けば。
それはさておき、数ヶ月前に子宮がん検診に行きました。それまで長年行っていなかったのですが、膣の奥のほうに違和感が起き始めて半年くらい経っていて軽い痛みを感じるようになっていたので、病気なのではないかと心配になったのです。
子宮がん検診の経緯
その頃に個人的に疑っていたのは、何らかの膣炎でした。特別に痛いわけでも、かゆいわけでもなかったのですが、1ヶ月のうち1〜2回、微かに痛いような瞬間があるのです(検診を受けたあとで思うと、月経が始まる前の時期に痛くなることがあるようでした)。私は発達障害ゆえか痛覚過敏なので、気にしすぎかなと思っていたのですが、半年近くも「この違和感は病気なのではないか」と思い続けたのはなかなかしんどかったです。不安要素を一つ減らすために、非常に苦手で行きたくないのは山々でしたが婦人科に検査に行きました。苦手な理由は、主に性別違和感のためです。
行ってみたところ、膣炎と子宮がんの検診ということになり、尿検査、腹部エコー検査、内診を受けました。全部問題ないと言われ帰ろうとしたところ、再度診察室に呼ばれ、「子宮内膜がやけに厚いので、念のためにMRIで検査しましょう」と言われ、別病院での検査になりました。結果は2日後にわかるとのことでした。そこで気になって調べてみたのですが、子宮内膜が異常な厚みであった場合、子宮体がんやその前段階(子宮内膜増殖症)が疑われるようです。
子宮体がんの可能性を考えたときの私の心理状態
子宮がんの中でも子宮体がんは子宮摘出となることもあるようなのですが、自分がそうなる可能性を考えたとき、私は「これで子宮とおさらばできるのでは?」と思いました。
子どもが欲しかった時期はありますが、自分で産むという発想は当時も今もなく、男性との性交も出産も未経験(性交経験がないからMRI検査になったそうです)。月経は邪魔なだけであり存在意義は微塵もないので、「子宮がなくなれば無駄なものと一切お別れができる、そうなったらとてもハッピーだ!」と心から思いました。そしてその素直な気持ちを自覚したときに、「やっぱり私は『女性ではない』な」とも思えました。
性自認も肉体も女性の方々は、乳がん・子宮がん・卵巣がんのような女性特有の臓器のがん(乳がんは男性でもなりえますが)が判明したときや可能性を考えたとき、ショックを受けるものらしいですね。特に摘出手術が必要になったときはメンタルケアが欠かせないものであるらしく、乳がんは「切除後の乳房形成手術も合わせて受けられる」なんていう病院もあるようです。「(卵巣、子宮などを)摘出したら、女でなくなるのではないか」という悩みを抱く人までいるのだとか。
一方の私は「これで子宮と世間体良くお別れ! ハッピー!」などと思ったので、改めて自分の性自認は女性でないと確認できた気分になりました。それ以前にも「乳がんになれば乳房切除できるのになあ」などと考えていた頃もあります。いや、今でも考えています。
そして、もっと顕著な精神状態の変化は、結果が分かったあとです。
子宮のMRI検査の結果、異常がなかったと知って
MRI検査の結果、「きれいですね! 悪いところはどこにもなかったですよ!」と言われました。子宮内膜が厚かったのは月経前で厚みが増していただけのようです。
それがわかったとき、私はものすごくがっかりしました。かえって落ち込んだくらいです。「子宮とお別れできると思ったのに、世の中はそう上手くいかない」と感じてかなり凹んでしまいました。そして改めて「自分は本当に『女性ではない』」と思ったのでした。がん治療は大変なので、がんでなかったことは喜ばしいはずなのですが、私にとって子宮などの女性特有の臓器は「がんになってでも取ってしまいたい」と思うくらいの存在のようなのです。
もういっそ性別適合手術を受けるべきなんじゃないかと思うレベルではありますが、「社会生活を男性として送りたいのか?」と問われると、そこはどうもよくわかりません。今のところ男装する気がないことを思うと(してた時期もあるけれど今はしていない)、「性転換して男性になった上で女装する」というややこしい存在になる気がしました。それを思うと「それが一番正しい気がする」と思うのですが、身近な人たちにいちいち「性転換しました」とか説明して歩くのも面倒だし、今から男性として社会生活を送り始めるのもなんだか難しい気がするし……などなどと考え、結局は「今のまま我慢していればいいんじゃないか」という気持ちが7〜8割くらいになります。つまるところ「性別に違和感はあっても、障害ではない」んでしょうね。
とはいえ割り切って女装を楽しめているかというと、「女になったね」などと言われて心底不愉快になっているので、女装生活も必ずしも幸せではないのですが……地元には性別違和感に関連する病院もないので、今はもう少し様子を見るしかなさそうです。
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