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猫日和 356 ペットロス

我が猫のことを書こうと思って、思い出しているうちに、あれこれ思い出して、胸がいっぱいになり、やはり今は、書けそうにない。

うちに来た猫は、何かの理由があって飼い主がないか、あっても放棄したか、の猫で、

あっ!この猫可愛い、この子にするわ!

と選んだ記憶はない。

2匹も3匹も同じでしょう?
貰い手がないの、ちょっとだけ預かって、

など、猫好きの友人が拾う猫の保育所になり、

中には、例外的に、

お願いだからこの家に置いてくれ、
と、↓の猫のように
玄関前に正座して家族になった猫もいるが、

概ねは、成り行きでの出会いだった。

寿命の長さが違うので、
猫が先に世を去るのは仕方がない。

私が先に死んで、
残った猫をどうしようか、と心配事を残すよりは、
キチンと見送れた、と言うことで良しとしなくては、
と思うことにして、その都度、ペットの死に立ち会ってきた。

よその猫を見れば、羨ましくも思い、また、懐かしい手触りに、実は切なすぎて、涙が出ることもある。

とは言え、この先、猫を飼って、その猫が充分に生き、世を去るまで、責任が持てるか、と言ったら、
それは無理だろう。

ギリギリ、うまくいけば、そういうことが可能かも知れない。
人の生き死にについては、保証がない。
死に際に、
飼っている猫を後に残すことを不憫だ、
と思って、目を閉じるのは、あまりに無責任と思い、以後猫は飼わない、と決めている。

先日、新宿高島屋を歩いていたら、ロボットのペットの店があった。

以前は大混雑で予約制になっていて、予約も当日は入れられない人気だった。

中にいる、私と恐らく同じような年齢の夫婦が、
ソファーに座って寄り添い、愛おしそうにロボットを抱っこして、幸せそうに話をしているのが見えた。

実にあどけない表情で、こちらを見つめ、また、店の中では、他のロボット達が、ワイワイと保育園児のように追いかけっこをしていた。

確かに、こんな愛くるしいロボットが、
家に帰って玄関を開けたら、迎えに飛んできてくれたり、
テレビを見ていたら、ピッタリ寄り添って、
物言いたげな目で見つめてくれたら、
楽しいかも知れない。

このロボットは、
動物が飼いたくても住宅事情で飼えない人や、
出張が多くて世話が大変な人や、
一人暮らしで淋しい人や、
ベットを亡くしてベットロスになっている人に向けて、
作られているらしい。

そのロボットの値段が、35万円近いことは知っていた。

店員の人に声をかけられ、
今なら中に入って触ることが出来る、
と言われたが、
35万円もするオモチャを買う余裕はないので、丁重に断って、通り過ぎようとしたら、
パンフレットだけでもどうぞ、ご検討くださいね、
とパンフレットを渡された。

店の中には、
そのロボットの服や身の回り品も売られていて、
大人版の、着せ替え人形のようでもある。

帰宅して、パンフレットを見たら、
小型犬を飼う時、1ヶ月にかかる費用は、約25,000円、
このロボットなら、約15,000円、と、
正確には、円の位まで計算された値段が書いてあったのだが、

つまり、このロボットを家族に迎えたら、
月々15,000円かかる、ということで、それは、使っても使わなくても、所有する限り、生じる使用料だということが分かった。
一年に約18万円。ペットロスを癒すために、としても。

しかも、精密機械なので、故障は、聞くところによると、年に一度以上はあり、入院(修理)費用がかかる。
具合が悪くなると、本部がそれを察知して、連絡をよこし、
宅急便で、入院、退院となる。

何をするにも、お金。
生きているペットは、時に獣医で散財することもあったし、ペットフードや猫砂などで、お金はかかったが、1匹あたり25,000円ということはなかった。
パンフレットは見かけ上の比較で、実際の犬猫を飼う方がずっと割高とは言えないのである。

何だか、あの愛くるしい瞳のロボットが、
やっぱりロボットでしかない、
という、冷めた気持ちになっていく自分がいた。

ペットロスは辛いけれど、
思い出で充分、と私は思った。

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