雑記 994 隠れた音楽の館

画像1 コンサート前の古楽の練習のために、ある団体が音楽愛好家のお宅を借りた。私は、来日した声楽家を泊まっているホテルに迎えに行って練習場までお連れするのが役目で、慣れない英語で汗びっしょりになりながら、何とかやり終えた。
画像2 住宅地の中のそのお宅は、外から見る分には普通の家であるのだが、中に入ると広いリビングがあり、壁に沿って立派なチェンバロが置いてあった。
画像3 チェンバリストが専用の器具を使い、器用に調律。その音でリビングは、みるみるサロンに変身していく。
画像4 チェンバロの中を覗くと、手描きの美しい模様があった。購入するには、かなりのお金が必要だが、趣味のためなら惜しくはない。ただし、そのご主人は亡くなられ、隅の方にチェロがポツンと置かれていた。
画像5 リビングの隣はダイニングルームで、テーブルが置いてあり、壁面には本棚があって、背表紙を見ていくと、そこに住む人の趣味や知性が感じられる本ばかり。だが、どんなに欲しい楽器や本を手に入れても、最後、この世を去る時に持っていくことが出来るものは、経験と愉しかった記憶しかない。そんな寂しさが楽器の穏やかな絵に漂う。

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