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雑記 317 上野東京都美術館、フェルメール「窓辺で手紙を読む女」

上野の東京都美術館で開催されている「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」に行ってきた。

ドレスデンの国立古典絵画館にあるこの絵は、ザクセン選帝侯のコレクションに含まれ、
レンブラントの描いた絵、と言うことで、収められていた。

その後、レンブラントではなく、フェルメールの絵と言うことが分かったが、
1979年の科学的調査で、絵の中に、キューピッドの絵画が描かれていることが判明した。

当時、フェルメールは、それほど有名な画家ではなく、レンブラントは一流画家で、売る方も買う方も、レンブラント作であった方が、商売には好都合だったのだろう。
フェルメールの死後、誰が何のために、そのキューピッドの画中画を塗りつぶしたのかは不明だと言う。

2017年から、復元作業は始まり、今年の新年、ドレスデン国立古典絵画館で、披露となり、
その直後、世界に先駆けて、日本の上野東京都美術館に貸し出されることになった。

復元の様子が、ビデオなどで解説され、
X線を使った絵の分析、
塗りつぶした部分の絵の具を、その下にある元の絵を損なわないように、顕微鏡で見ながら、手術用のメスで細かく剥がしていく様子などが流され、これを見るだけでもなかなか興味深く、現代の科学技術はたいしたのもだと、感心した。

復元された絵は、キャンバスに長年積もった埃も取り除かれ、全体に明るくなった。女の背後の壁には、大きなキューピッドの絵がかかっている。
手前の皿の上の果物も明るく光る部分がはっきりとして、
誰が、いつ、何のために、
画中画を塗りつぶしたのか、想像するのはなかなか楽しい。

開け放たれたガラスの窓に映る女の顔は、いかにもフェルメールらしい構成。この時代、「手紙を読む」「手紙を書く」ことが、絵画の一つの題材であったことも、興味深く、それらの画中人物の気持ちを想像するのも、面白い。

キューピッドの踏みつぶしている仮面は、どんなことを暗示しているのだろう。
フェルメールの、この絵を所有した誰かが、このキューピッドが踏みつけている仮面に、自分を重ね、不吉だと塗りつぶすことにしたのかも知れない、と思う。
きっと他人には言えぬ後ろ暗いことがあったのではないか。悪者だったのではないか。

私は、絵画の研究者ではないから、絵が描き足されたり、変えられたりすることの知識もなく、正確なことは分からず、言えない。
でも、この絵の中にある、キューピッドは、威圧的で、確かになくても良いのかもしれない。
また、レンブラントの画風から、こういう構成はあり得ない、と、レンブラントらしさを出すため、塗りつぶしたのかも知れない。画商が、高く売るために。

反対に、塗りつぶされたほうの絵は、やはり物足りなさが残る。

人は、名の知れた画家の絵を所有することを好み、
そう言えば、ルーベンスだって、ほとんど他人の描いた絵に「ルーベンス」というサインだけをして、商売が順調だったのだから、誰某の作、ということで、有り難がったりするのは、凡人だと思うが、その名を聞いて付加価値が付き、有り難くもなるのだろう。

今日は、絵の前で様々な空想を膨らませて、なかなか楽しいひとときを過ごした。

ザクセン公のコレクションに、フェルメールの絵と共にあったレンブラントの絵画。若き、とあるが、本当?

この展覧会は、オランダ絵画の黄金期、と言われる15〜18世紀の、約70点が展示され、どれも、真面目で端正な画風で、それぞれの画家の生きた時代と暮らしに触れられて、大変面白かった。

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