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GLP-1製剤の供給不足と、日本の薬価について

2023年8月8日現在、各種のGLP-1製剤各種が、日本中で不足する事態となっています。そこで、イーライリリー社のマンジャロについて調べてみました。


現状

マンジャロは現在、米国と日本、UAEで販売されています(ヨーロッパでは未発売です)。製造・販売は日本イーライリリーが行い、販売・流通は田辺三菱製薬が行っています。米国で2022年6月7日に販売が開始し、日本ではその約一年後の2023年4月18日に販売が開始されました。

米国でマンジャロはリリー社の予想を超える売れ行きを示し、新薬ながら2023年の1Q決算では売り上げた医薬品の4位(568.5 million dollars=815億円くらい)であり、全売上の約8.2%を占めています(ちなみに1位はトルリシティで、売り上げ額 1,977.1 milion dollarsでした。ワーオ)。うち、米国での売り上げは$536.4 millionでした。これはおおよそ100万本に当たります(とMRさんが言っていました。ほんとかな?)。残りの売り上げ32 milion dollarsに日本は含まれませんので、これはUAE(とあと1国くらいあるかもしれません)での売り上げです。

また、これはデータを提示することはできませんが、マンジャロは発売から約半年で爆発的に売り上げを伸ばしており、米国でも流通が不足していたようです。現在はどうかというと、FDA drug shrtagesのHPにあるように、米国では7.5mgと10mgが不足しているようです。2.5mg, 5.0mgは充足しています。

価格

現在の日本の保険制度では、使用する薬剤を患者さんにいくらで販売するかが、全ての薬剤で決まっています。マンジャロは2.5mg 1キットが1924円、5mg 1キットが3848円となっており、以降は15mgまで用量に比例して薬価が上昇します。最大容量の15mg 1キットで11544円です。

米国では薬剤の価格は決まっていません。現在はマンジャロ1本あたり$500ドル程度で、以前と比較して1.5倍くらいの価格になっているそうです(
(ところで米国では2.5mgも15mgも同じ価格です)。トルリシティはだいたいマンジャロの9割程度の価格のようですね。

価格の乖離

ここまでをお読みになって、勘のよい方はもうお気づきかもしれませんが、マンジャロは米国では1本7万円ちょっとします。日本では1924円~最大でも12000円くらいです。だいぶ価格に乖離がありますね。このような価格差がありながら、日本に製剤を売ってくれといっても、それは無理な話なのではないでしょうか?

上述しましたようにトルリシティはリリーの稼ぎ頭ですが、この製剤は体重減少効果が比較的軽度です。昨今のGLP-1製剤に対する需要が体重減少を期待するものであれば、今後他社からのdual agonist製剤が台頭してくるに従い、トルリシティの売り上げは減少せざるを得ないでしょう。そのような中で、リリーとしては、やはりマンジャロを押してイニシアチブをとりたいと考えるのが自然だと思います。

確かに、薬価を安くすることは、医療費を抑制することにつながります。

でも、本当にこれでいいのでしょうか?

リリーへの思い

私は今回いろいろなことを調べてみて、リリーに関しては「安くしか買ってあげられないのに、商品を回してくれて嬉しい」くらいの気持ちになりました。
リリーが骨身を削って日本に回してくれた製剤、みんなで大切に使いましょう。


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