いのちのものがたり 完全版
昔々、人がいのちを生きていた時代、わたしはあなたに出逢った。声に成らない声を聴き、風に乗った思いを聞いた。「きみがすき」その声は、風と共にやってきた。なつかしい「それ」は、わたしの身体を包んで溶かした。なつかしく、とても暖かい。「それ」は、いのちだった。
歌を聞いた。王の歌を儚く切ないそれは、わたしの胸を打った。声にならない音だった。愛した者が消えていく、愛した国が消えていく、それは王の思いだった。わたしは、胸が痛かった。握りしめられた思いが、苦しかった。人は思いを生み