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消防設備の緊急対応

消防設備士として仕事をしていると、「受信機がピーピー鳴り出した」「非常ベルが止まらない」といった問合せを受けることがあります。
このような依頼を受け対応する際は、通常生活に支障がないよう復旧することを最優先に対応し、追って根本の問題解決を図ります。
この緊急時の対応で消防設備士がやっていることを、自動火災報知設備(上記の受信機や非常ベルの総称です)を例に大まかに解説したいと思います。

①現地に急行
当たり前の事ですが、急いで現地に向かいます。緊急なので電話で連絡を受けますが、まずは連絡を受けた電話口で状況を確認し通話者へ対応方法を説明してみたりします。自動火災報知設備の場合、音が鳴って止まらないという問合せなので、受信機を操作してもらうよう誘導します。
この先は、それでも事態が収束しない、または至急確認してほしいと言われた前提で話を進めます。
現場で何が起きているのか不明確なため、様々な可能性を考慮しつつ可能な範囲の資材を用意して最速を目指して現地に向かいます。
ただ移動手段は資材を運ぶ都合で車となるため、道の混雑状況や駐車場がすぐ確保できるかも現着までの時間に影響します。

②状況確認、ヒアリング
現地に着き次第、連絡者もしくは現地にいる方に状況のヒアリングを行います。いつ頃今の状況になったのか、何かをしていて発生した状況なのか、わかる範囲で伺います。
伺った情報を踏まえ、過去の同様事例の経験を考慮して、受信機本体の異常有無の確認、結線状況の確認、配線の確認、発信機や感知器など機器の異常有無の確認をし、原因特定に努めます。現場によっては天井裏をのぞいたり、配線をずぅっと追っかけたりと、可能性の高いところから順を追って確認していきます。
受信機など共用部にある設備の不具合であればまだ良いのですが、専用部内が怪しいとなると確認は一気に困難を極めます。

③対処
原因が特定でき、それが持ってきた資材で対処可能な内容であれば、その場で建物のオーナー(発注権限のある方)に確認を取った後復旧対応を行います。無事復旧ができればそれを報告し、現地の方やオーナーに喜んでもらい万々歳です。
一方、原因が特定できないケースも往々にしてあります。配線が断線している事まではわかっても場所の特定に至れなかったり、色々調べてみると実は最初に確認した受信機が一番怪しい(けど交換してみないと本当に悪かったのかなんとも言えない)、など。
原因の特定ができず困るのは、根本の問題解決が完了していないために、建物のオーナーが仕事は終わっていないと解釈されることです。

不具合が直らないとどうなるか?
不具合が直らないと、

・消防設備が適切に作動しないため、火災が発生しても警報が鳴らなず火災に気付くのが遅れて逃げられなくなる。
・閉まるはずの防火戸が閉まらなかったため火災が更に広範囲に及んでしまう。

など、非常時に被害が拡大してしまいますので、対応する消防設備士は皆復旧に努めます。
一方、元々の依頼は緊急対応です。応急的な対応と、復旧に努めた上で復旧できなかった事とは別物なのです。

緊急対応では表面上の迷惑(受信機や非常ベルが鳴る状況)を回避し、不具合の可能性を絞り込み報告するまでがひと区切り。完全な復旧は出来れば一番ですが、それは次の段階になります。

お医者さんも大きな病気を治す時は、診察して原因を絞り込んでから準備をして手術に挑みます。それと同じ流れで消防設備士も取り組みます。
どうか、その場で復旧し切れずとも、緊急対応では「とりあえず音を止め、原因を絞り込んだ」ことを一つの成果として見てもらえるベースが出来上がることを願い、この文の結びとさせていただきます。

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