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戦力外通告というやつ

元始、やつはしはサッカーサポーターであった。
98年フランス大会、2002年の日韓共催と本気の大金をはたいて現地観戦した。
今、やつはしはベイスターズ沼である。
プロ野球に依って生き、セ・リーグの光によって輝く、病人のような蒼白い顔の最下位である。

思い立って縁もゆかりもない横浜市中区に転居したのが2019年11月のこと。当初通勤時間は倍になったが、たった3ヶ月後から新型コロナウイルスの影響で完全テレワークとなり、「俺ら東京さ行がねえだ」の日々になったのだから、我ながら先見の明があったというか、あらゆる自粛生活も、散歩がてら気軽に、みなとみらいや中華街など横浜の観光地にアクセスできるロケーションによって、逆にストレスの解消となった。

とはいえ、楽しみにしてたライブも無ぇ、フェスも無ぇ、そんなん全部あるわけ無ぇの状態はメンタルを削ってきた。そんな中、友達がハマスタでのベイスターズの試合に連れて行ってくれたことから、野球沼にはまることとなったのが、去年の夏の話。

我が家から横浜スタジアムには歩いて行ける。屋根が無いから密でも無い。観客動員の上限は当初5千人。屋外でスッカスカで、趣味としては安全の部類に入る。しかもわたしは気づいたのよ、プロ野球ってね、意外と爆音で音楽がかかるのだ。

打者たちがバッターボックスに立つ際、その登場メロディーに合わせて拍手で送り出し、また交代のピッチャーがブルペンカーに乗って登板する際、流れ出すイントロを聞いて、われわれファンは誰が次に投げるのかを知る。たった数十秒間とは言え、1万人ほどを集めたスタジアムに音楽が響きわたるのは、わたしにとって、この世の救いと言えた。

昨シーズンは途中から急にハマったこともあり、シーズンオフも、あ〜野球もう終わっちゃったか〜くらいの気持ちだったけど、リソースすべてフルぶっこみな状態で望んだ2021年の今年は、またひとつ、新しい感情を知った。
昨日から解禁の、いわゆる戦力外通告である。

わたしの推し、横浜DeNAベイスターズは今日、2人の野手と8人の投手に、来季の戦力外を通告した。https://www.baystars.co.jp/news/2021/10/1005_01.php

春だったか初夏だったか、笠井崇正という普段はあまり1軍にいない投手がハマスタに登場した際に響いた、Hi-STANDARDの「Stay Gold」。フェスでもないのにハイスタを大音量で聴くのなんて間違いなかった。ビールが飲みたかったが、宣言下だったので我慢した。

その流れでいろんな投手の登場曲を調べて、わーー早く1軍上がって来い!と思ったのが齋藤俊介投手。マキシマム ザ ホルモンの「ぶっ生き返す!!」がハマスタに響き渡ると想像しただけで最高だった。

公式アプリで、選手のカードを集めて対戦するゲームでは、わたしは進藤拓也投手を集めまくってマジに負けなしのつよつよのチームを作っているんだけど、今季ハマスタのマウンドにたった1試合だけ登板した時に流れた、いきものがかりの「ブルーバード」のイントロで、うわ、進藤さん来る!!ってなった時は、ヘレン・ケラーがびしょ濡れになって、Waterという言葉を知ったときのような稲妻に打たれた気持ちだった。

その他、ヤクルトの戦力外でベイスターズに加入した、セ・リーグ随一の少女マンガみたいな名前こと風張 蓮(かざはりれん)投手の、ドヴォルザークの新世界がメタルになったやつ (The Wizard's Last Rhymes / Rhapsody) も、うわ〜〜風張蓮来た〜〜ってなったし、やだちょっと待って、ベイスターズ投手イントロクイズをやったら、わたしは優勝してしまうかもしれない。

さて、チームは今季、三浦大輔新監督のもと、新たな体制でスタートしたが、まあもろもろあって成績も低迷したまま、今シーズンを終える見込みで、今日時点でのわたしの今季現地観戦も、9勝17敗4分けと、笑っちゃうくらい弱い。

けど、芸術や文化、音楽、スポーツ、みたいないわゆる不要不急な中でも、プロ野球っていう、ある意味ベッタベタなやつが身近にあってくれたおかげで、推しが打てないとか連敗したとか、バカスカ打って大勝したとか珍しく連勝したとか、そういうわかりやすい刺激によって、正気を保っていられたのは、疑うべくもない。

今シーズンを以てチームを去る選手たちには、シンプルに溢れるほどの感謝と、このご時世でなければもうちょっと違う道があったのかもというたらればと、なにはともあれ、また違った形かもしれないけど、充実した未来があることをお祈りしている。そしてそこにはそれぞれに、また新たなテーマ曲があらんことを。爆音で鳴らしてこうぜ。

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