ミッシェル・ガン・エレファントが好きだったあの子
あの子はミッシェル・ガン・エレファントが好きだった。
大学1年は4月のこと。
大学に入ったら軽音学部に入るぞ!と息巻いていた私は、サークルの長宛にメールを送り、学食で簡易的な説明をするのできてくださいとの旨の返信を受け取った。
私が行っていた高校には軽音楽部がなかったから、大学に行ったら絶対に軽音楽部に入ろうと思っていた。
私の好きなRadioheadやNIRVANA、Eric JohnsonにAC/DC、ジミ・ヘンドリックスにLed Zeppelin。
高校の頃、帰り道にいつも聴いていたバンドたち。彼らのように私もバンドをやってみたいと思っていたのだった。
5時限目が終わり、時間は18時を回っていた。
学食へと向かうと、ちらほらと人がいて、その片隅の方で3〜4人ほどがグループを成していた。
おそらくあれが軽音楽サークルの人たちだろう。
なんだろう、みるからに「軽音楽」な感じのする人たちだった。
彼らはその次の週には私の先輩になるわけだが、楽しそうに話してる中でもどことなく音楽に拠り所を求めているかのような(良い意味で)ダークなオーラが溢れ出ていて、私と似た匂いを感じた次第であった。
私は「あの、メールを送った者です」と意を決して話しかけ、その輪の中に入るのだった。
あれこれと先輩たちが「どういう音楽が好きなんですか?」や「軽音ではこういうスパンでライブがあります」などと説明や質問をしてくれてる中、ある一人の女性が学食に入ってきた。
その女性が私たちの輪を見つけると、「あ、お疲れ様です〜」と言って近寄ってきた。
どうやら話を聞いてると、軽音楽サークルに入っている上級生らしい。
唐突にその女性は、
「あ、初めまして〜。ミッシェルガンエレファントって知ってますか?」
と私に聞いてきた。
私はもう、びっくりした。
ミッシェル、知ってる。
高校生の頃、「シャンデリヤ」という曲の猛烈カッティングに度肝を抜かれて、それを弾きたいがためだけにバンドスコアを買ったこと。
blue nylon shirtsという曲が好きで、一時期それしか聴いてなかったこと。
ダニー・ゴーが好きで、高校帰りに国道を通る際、よく聴きながら帰っていたこと。
そして、世界の終わりのかっこよさに惹かれて、ミッシェルを聴き始めたこと…。
これまでの記憶が頭を駆け抜け、私はその女性に自分がどれほどミッシェルを聴いてきたかをぶちまけたかった。
しかし、私はグッと堪えた。嬉しい気持ちがある反面、あまりでしゃばって変な奴に思われても居心地が悪い。まだ入部もしていない。
「あ…ミッシェル、知ってます…」
小声で言うと、「あ、ほんと!嬉しい〜!」という、あまりそうは思ってなさそうな声が返ってきた。
それでも、私はなんとなく嬉しい気持ちになった。
あとあと聞いた話だと、その女性はその女性で、ミッシェルに対して相当な思い入れがあるようだった。
CDはもちろん、LIVE DVDも持っていたり、ミッシェルに関する書籍も持っていたり、ミッシェルのようなスタイルが人生の指針になっていたり…。
もし、あの時、「私もこれだけミッシェル聞いてました!」と言えていたら、この女性ともっと早く仲良くなっていたかもしれないな…なんて思いつつ。
でも、あの時自制心を働かせた自分、シャイな自分も憎めないなぁ…なんてのも思いつつ。
懐かしいあの頃に記憶を委ねるのであった。
おーわりっ!
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