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「お参りしやすく、交流しやすく」

愛知県一宮市にある日蓮宗の妙法寺は、宗祖日蓮聖人の「四大法難」に縁のあるお寺。新しく住職となったばかりの河村泰政上人は、全国日蓮宗青年会の事務局も務めている。39歳。実直そうで、穏やかな口ぶりの新住職は福島県出身で、8年前に愛知県へ来ました。受け継いだ地域とどうかかわり、どんなお寺にしていきたいのか、語っていただきました。


日蓮聖人の法難との縁

――妙法寺はどんなお寺でしょうか?
「江戸時代の1658年に創立されました。日蓮宗が一番たいせつにしている教えは『妙法蓮華経』といいますが、妙法寺という名前のお寺は全国に80ケ寺以上ありまして、特に日蓮宗が多いんです」
――詳しくは「関西小松原 一乗山 妙法寺」というんですね。
「小松原というのは千葉の地名で、日蓮聖人が受けた四つの大きな『法難』(仏法を広めようとして迫害されること)のうち、小松原法難というものがありまして、それに関係のある日蓮聖人の随身仏がこちらに安置されているんです。元々は千葉のお寺にあったもので、嘉永4(1851)年に出開帳といって、こちらにご本尊を持ってきて信者さんたちにお参りしてもらいました。いろいろあって随身仏だけ妙法寺に残して千葉に戻ることになり、そのまま安置されることになったと記された書状が残っています。それで『関西小松原』と言われており、小松原法難会という行事を盛大にやっているのは、千葉以外では珍しいと思います」

新住職となり、今春に法灯継承式

――最近、ご住職になられたそうですよね。
「先代から住職を引き継ぐことになり、昨年の2022年末に久遠寺で認証式があって、今年4月の『法灯継承式』で誓いの言葉を述べるお披露目の式が開かれたばかりです。先代は妻の父で、2015年に結婚して一宮市に来ました」

本堂で語る河村住職

――ご出身はどちらですか。
「福島県の中部にある小野町の出身です。母が静岡県の寺の生まれで、住職の伯父から勧められて、山梨県にある日蓮宗総本山の身延山久遠寺が運営する高校、大学で学びました」
――若いころから僧侶になると決めていたんですね。
「いえ、特にはっきりとなりたいという職業がなくて、伯父から、だったらお坊さんの学校はどうだ、と勧められました。どんなことをするのか詳しく聞かずに入ったら、みんな立派な理由を持っている人たちばかりが全国から集まっていました。同級生は15人くらいで、入学したときは自分だけがお経を読めない状態。僧堂実習という小僧生活をしながら学校に通い、正座の仕方からすべてをそこで教えてもらいました。卒業して東京のお寺にいたときに、ご縁があってこちらへ来ました」

つくしを食べるんだ⁈

――愛知県の生活にはもう慣れましたか。
「やっぱりいろいろと地域で習慣は違いますからね。関東や東北でしか生活したことがなかったもんですから、言葉から、食生活から、違っていました。この辺は尾張弁っていうんですかね、最初は『どういう意味?』と聞き返すこともありましたが、こちらでの生活もかなり経ったのでもう慣れてきました」
――食べ物はいかがですか。
「いちばん驚いたのはつくしを食べることです。山の中で育ったので、そこら中に生えていましたけど、あれが食べ物だという認識はなかったので。檀家さんが持ってきてくださって、正直な感想は『つくしを食べるんだ⁈』と。でも、食べてみたらおいしかったです。『名古屋めし』も楽しんでいます。いちばん好きな食べ物はラーメンですが、やっぱり故郷の喜多方ラーメンのような、透明なしょうゆ味が好きで、草野球の帰りとかに寄りたいですね」

お経の読み方にも地域のリズム

――野球をされるんですね?
「野球は好きで、中学校では野球部でした。高校からお寺にいたんでスポーツをする機会がなかったのですが、こちらに来て、先輩から『いろいろつながりが増えるから』と声をかけてもらって、名古屋の日蓮宗のお坊さんでつくるチームに入れてもらいました。宗派でつくるチームがあって、コロナ禍の前は年間10試合くらいやっていました。お寺の仕事が忙しいので、練習はほとんどできないんですが、最近では通信制高校の野球部と一緒に練習をすることもあります」
――プロ野球のひいきチームはありますか。
「あの……小さいときからの巨人ファンで。この辺りは中日ドラゴンズなんで……。先代や先輩たちから、その辺をいじられることもあります(笑)」

本堂の前に立つ河村住職(左)。本堂内の日蓮聖人随身仏(右)

――お寺にかかわることでも、地域で違いがあるんですか?
「そうですね。お経のよみ方も、違うところがけっこうあります。節の取り方とかですね。みなさんが一緒にお経をよんでくださることにも、最初は驚きました。こちらに来る前にいた地域では、わたしたちがお経をよむのを聞いている方がほとんどでしたので。日蓮宗総本山へ一緒にお参りする『尾張千人講』のある地域で、師匠にこちらへ行くことを報告したら『お前、大丈夫か』と言われました。とても熱心な土地柄だということで心配されたのですが、来て、それを実感しました」

水はけ工事でお墓参りをしやすく

――新住職として、どんなお寺にしたいと考えていますか。
「ひとつは、みなさんがもっとお参りしやすくしたいと考えています。妙法寺の墓地は、土地がまわりより少し低くなっていて、雨が降ると通路にすごく水がたまってしまっていたんです。ひどいときは足首まで水に隠れるくらいでした。ここまで足元が悪いとお参りするのはたいへんですから、こちらに来て以来、ずっとなんとかしたいとなあと思っていました。ホームセンターで『固まる砂』みたいなのを買ってきて、自分でやってみたんですけど、やっぱり素人じゃダメで。
そんなときに、『はなえみ墓園』で墓地の造成もしている矢田さんと知り合って相談させていただきました。通路をコンクリートで整備して、排水溝を造って、ポンプで水を汲みだせるように工事をしてもらい、おかげさまで雨が降ってもお墓参りがしやすくなりました」

再建された七面堂(左)に祀られた七面大明神(中央)、徳川家康の側室・お万の方の像(右)

――お参り以外に、地域の方との交流はありますか。
「先代のころから、地元の丹陽南小学校の2年生が社会見学で来てくれます。お子さんたちにお寺や住職の仕事のことをわかりやすくかみ砕いて伝えたいと毎年やっているんですが、子供たちの視点って面白いですよね。本堂の中で指さして『あのぶらさがっているのはどうして金色なの?』とか聞かれます。大人が当たり前にわかっているつもりのものについて質問されると、少しドキッとしちゃいますよね。こちらも勉強させてもらえます」
――質問にはどう答えたんですか。
「本堂の中はきらびやかな仏様の世界を表しているので、金色なんだよと説明しました」

お子さんたちとお父さんの顔で

小さな質問も聞きに来て

――インスタグラムもやっているんですね。
「あれは妻がやってくれていまして(笑)」
――タヌキが出たり、飼っているウサギが登場したり。山門の桜はすごいなあと思って拝見しました。
「桜の季節には近所の方がけっこう見に来てくださいます。そうやって、お寺がみなさんの交流していただける場になったらいいなあと思っています。以前に、月に1回のお茶会を開いて、ざっくばらんな感じでお話を楽しんでいただける場を設けていたことがるんですが、コロナ禍でできなくなってしまいましたので、またそんなことができればいいなと考えています。気軽にお寺に来ていただいて、ちょっとした疑問でもなんでもいいので聞いていただければ、ぜんぶお答えしますので。お待ちしています」

桜に囲まれた山門

寺名:一乗山 妙法寺
宗派:日蓮宗
住所:愛知県一宮市丹陽町九日市場2819


永代供養のついた安心のお墓「はなえみ墓園」。
厳かな本堂でのお葬式を提案する「お寺でおみおくり」。
不安が少なく、心のこもった、供養の形を、矢田石材店とともに考える、お寺のご住職のインタビューをお届けします。
毎月の第2、第4月曜日に更新する予定です。

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