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「ゲーム課金を減らすように言っても、ちっとも減りません。」→減らすように言うと、課金は増えます。

家族やパートナーのゲーム課金、度が過ぎていると、止めたくなりますよね。

最近は、ずっと、スマホ画面を見ている。
最近携帯電話の請求が2万円を超えている。「また課金しているんじゃない?」というと、不機嫌になる。不機嫌になると、だいたい黙り込んでしまって、話し合いにならない。
月末になると、飲み会代をくれ、と言ってくる。「ゲームにつかったんでしょう?」というんですが、「ゲームじゃないよ、これは飲み会代なんだよ。仕事の付き合いに行けないと困るんだよ」と、ゲーム課金で小遣いがなくなっているという、自覚がまったくない。そもそも飲み会って本当にあるの?
食費、光熱費、家賃、彼のゲーム課金を助けるために払っている感覚で、いやになる。口うるさく言うのも嫌。
私一人がいつも、考えている。共働きで私だって疲れているのに、食器を下げることすらしない。すごく孤独だ。なのにどうして呑気にゲーム三昧できるの?いい加減にしてほしい。
どうしらいいんだろう…


課金を止めるように言うと、課金が増える

たしなめたくなるのは、ごく自然なことです。でも、依存行動の心理からいうと、課金を止めるようあなたが働きかければ働きかけるほど、課金が増えるリスクを上昇させてしまうのです。

自分が使える小遣いを上回る、もしくは借金をともなうようなゲーミングは、本質的な別の心理的問題が背景にあることがほとんどです。それを解決せずに、ゲームだけやめさせようとすると、本質的な問題が悪化するので、課金が繰り返されるのです。

本質的な問題とは、個々人それぞれです。例として、対人緊張がとても高い、得意不得意のバランスが極端で現在の職務が本人に合っていない、いじめられた体験がある、衝動コントロールが不得意、育った家がとても貧乏だった、など。(これは別の回でもう少し詳しく説明します。)

また、ゲーミングにはまる人の臨床的特徴の一つとして、問題を回避することを選ぶ傾向があると思われます。追い詰めると黙り込むのです。

このような本人に、「課金してるでしょ?」と問い詰めると、「課金してないよ」と嘘をつくようになる、ばれないように借金に手を染める、などといった「回避→潜伏化」するリスクを高めます。

つまり、課金を止めるよう言うと、反対に、問題がみえなくなって、課金が増えるリスクが高まるのです。

これを「依存行動の両価性」といいます。

右を向けというと左を向く、依存行動の両価性とは

自覚がないように見える本人ですが、うすうす、このままではだめだと思っていることがほとんどです。

例えて言うと、宿題をやらなきゃなあ、と思いながらダラダラしてるこどもです。「宿題やったの?」と聞くと、「わかってるよ!」と反論されるような状態です。本人もだめだと思っているので、そんなことわかってるよ、と怒るのです。

ところが、依存行動の場合、本当の問題を解決する代わりにやむを得ずやっている行動なので、だめだと思っていても、自分一人では止めることが非常に困難です。家族から責められるだろう、などといつもびくびくしているが、止められない。そこで、嘘をついたり、隠したり、怒ったり、黙り込んだりするわけです。

従って「まさか課金してないでしょうね?」といった質問は、うまくいきません。質問は、そもそも責めているように聞こえるからです。

課金を減らしてもらいやすい戦略的なかかわり方とは

それでは、どうしたら、課金を減らしてもらいやすくできるでしょうか。

両価性をこちらも利用すればよいのです。やめろと言われると→やりたくなる、の矢印を逆向きにします。

・「課金をするかどうかは、あなたに任せる。でも、私はやめてほしいと思う」

やめろ、と強要しない言い方です。提案型にするのはよい方法です。

・「あなたも、ストレス解消をしたくなるようなことがあるんだよね」

課金する事情があると、認めてあげます。

・「私との生活をうまくいかせようとして、ゲームをしているんだよね」

適応スキルとしてゲーミングを使っている、と意味づけしながら、褒めます。こういうと、逆に本人は、ゲーミングを反省するモードに入ることが多いのです。「でも君との時間をつぶしてしまっているよね、ごめんね」といった風に。右を向けというと、左を向く、それが依存行動にはまっている人の心理です。

・「お金を貸すことはできないけど、課金を減らす方法を一緒に考えることはできるよ。相談してね」

関係が改善してきたら、このセリフを足掛かりに、専門相談機関につなげるチャンスです。

あなた自身のケアをしないと、この関わりはできない

でも、一人私が台所に立っているときにも、手伝うどころかゲームばかりしている人に、こんな優しいこと言えません!

その通りです。もういい加減にしてよ、ってうんざりしながらでは、言えなくて当然です。

ゲーミングや借金、家族の問題を抱え込んで、疲れたあなたの心をケアしないと、この関わりはできないんです。

あなたが孤独になると、依存はひどくなる

普段からたまっている「うんざり」を、本人にぶつけると、上記のように、ゲーム課金が悪化するかかわりになりやすくなります。つまり、あなたが一人で悩んでいると、あなたの願いと逆の方に行ってしまうのです。

カウンセリングや家族会などであなた自身のケアをすると、戦略的なかかわりはうまくいく可能性が高まります。

また、ご本人の心理的性質は、十人十色です。そこに合わせたプランは、専門家とともに考える必要があります。したがって、ご本人に合わせた戦略的なかかわりをともに考え、あなたの思いをケアしてくれる、専門の支援者がいることが、最初はベターだと思います。

当相談室でも、専門の相談をすることが可能です。どうぞ、ご相談ください。

(矢田の丘相談室 田中 剛)

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