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クルンクルンの世界10

アネールがずっとザンジロウをおぶったまま山を登っている。かれこれ三時間にもなる。アネール自身でもこれ程までに献身した事がなかった。
"大丈夫か?"
コジロウは言った。
"なぁに。こんなにも私に懐いているのだ。それに私はまだザンジロウがオロチを鎮めるだの信じていないからな"
アネールは言った。
"そうか。ならばザンジロウの真のチカラを思い知るだろう"
コジロウは言った。
険しい道をあるいてきたが、これといって何が襲ってくるわけでもなかった。しかしほこらにはオロチが通ったであろう一本のヘビの通り道が生々しく残っていた。
"この山自体がオロチの支配下にあるだけだ。幸いにもヤツが気づいていない。一気に滝壺を目指すぞ!"
コジロウは言った。
"一つ約束してくれ。ザンジロウには危害をあたえないと!"
アネールは言った。
"その約束だったら、まず自分の身を守ることに専念するんだな。ザンジロウは大丈夫だ"
ザンジロウはアネールの背中で辺りを見回しながらキョロキョロとしている。アネールの体力は限界に近づいていた。
滝壺に近づいていくと静寂を保っていた。そして透き通った水面の底にオロチが横たわっていた。大きさはゆうに20メートルはあろうかの不気味な姿をしていた。
"眠っているの?"
アネールはコジロウに聞いた。
"さあな。今のうちに酒壺は準備できるな。あの突き出た崖の部分がいいかもしれん。ザンジロウの動向を探ってみろ!もう感づいてるぞ!"
ザンジロウを見ると目を丸くさせてオロチに向かって手を伸ばしていた。
"なにか通じるものがあるかのようだな"
コジロウは言った。
夜になりラーネルが村人たちと共に酒壺を運んできた。全部で八つの酒壺が並んだ。丁度オロチの頭の数分だ。
"ご苦労だったな。ラーネル。村のみんな。これよりオロチを鎮める!見ていてくれ!"
しばらくすると酒壺の香りに誘われてオロチが姿を現した。

#クルンクルンの世界
#小説

西野亮廣さんのモノマネみたいに夢が広がってゆけばいいなと信じてやってゆくよ!