見出し画像

サントリーホールサマーフェスティバル2023に行きます

今年も東京で暑い夏の現代音楽祭が開催されます。サントリーホールサマーフェスティバル2023(8/23-8/28)です。例年、海外の新しい音楽の潮流を日本で紹介したり、毎年変わるプロデューサーがアーティストとしての矜持をかけたプログラムで挑戦的な演奏会を組んだり、日本の音楽界の将来を担う若手作曲家を発掘したりと、日本の芸術音楽シーンを創作の面から力強く刺激し続けている音楽祭です。

今年の特集作曲家はオーストリアのオルガ・ノイヴィルト(Olga Neuwirth, b.1968)さんです。クロスオーバーにさまざまな音楽ジャンルの語法を積極的に取り入れた大規模な作品が多く、シリアスな内容も持ちつつ、エンターテインメント性の高い音楽が国際的に高い評価を得ています。ドイツ在住時も、頻繁に演奏会で聴く機会のある作曲家でした。ウィーン・フィルが新作を演奏した時の色彩豊かな音楽をよく覚えています。

プロデューサー・シリーズでは、岐阜の情報科学芸術大学院大学(IAMAS)教授の三輪眞弘さん(b.1958)が登場します。極めて前衛的・実験的な作品で知られる三輪さんが組んだ、美学的問いかけの強いプログラムが興味深いです。

さて、例年ひとりの聴衆として楽しんでこの音楽祭を聴きに行っておりますが、今年はひとつの演奏会に関わっております。例年、新人作曲家の登竜門として業界で注目を集めている芥川也寸志サントリー作曲賞、第33回を数える今回、わたしは初めて選考委員を拝命いたしました(審査員とは言いません)。演奏会ですので、もちろん上演される演目が公演のメインですが、もうひとつこの作曲賞には特徴があります。普通、賞の選考は選考委員もしくは審査員が点数をつけて集計したり、別室で話し合ったりして、選考経緯は観客や選考される側に知らされずに決定することがほとんどです。しかしこの作曲賞では、演奏会後に3人の選考委員が壇上で議論を重ね、お互いの美学的見地に基づいて意見を交わしながら受賞者を決めるというプロセスを採用しています。

ノミネートへのハードルも通常のコンクールなどよりは高めで、前年に初演された日本人作曲家による管弦楽曲の中から選ばれるシステムになっています。このため、まだ演奏の目処が立っていない管弦楽曲の演奏の機会を得るために応募したりすることはできません。受賞者は、副賞として2年後の同賞の選考演奏会にて、新曲の管弦楽曲を委嘱され、初演されます。今年は2年前の受賞者、桑原ゆうさんの新曲が発表されます。

今年の選考委員は小鍛冶邦隆さん、渡辺裕紀子さんとわたしです。3人の異なる芸術観を持つ作曲家がじっくり協議してノミネートした3曲が演奏されます。どの作品が受賞に相応しいのか、この数ヶ月間も考えてきました。実際のライブ演奏を聴くのは初めての3曲ですので、わたし自身とても演奏を聴くことを楽しみにしています。2023年8月26日(土)15:00開演、会場は赤坂のサントリーホールです。ご都合のつく方はぜひ第33回芥川也寸志サントリー作曲賞におでかけください。


作曲活動、執筆活動のサポートをしていただけると励みになります。よろしくお願いいたします。