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三重県の新型コロナ第5波の収束時期予想と次への備え

最良といえるシナリオで新規陽性者数を減少させている三重県

三重県がコロナ禍第5波で初めて【真の】緊急事態に突入しそうだ、と警告を発したのが夏休みお盆明けの8/16、三重県内の新規療養者数が150人を突破した頃でした

このnoteでは、最悪の場合8月末までに三重県内の新規陽性者数が500人/日を突破すると予想して対策が必要と訴えたのですが、この最悪予想は残念ながら現実のものとなってしまいました。

ただ、このお盆明けからの三重県内の行政、保健所、医療機関の取組、そしてなにより県民一人ひとりの行動は素早く、8/26に515人を記録したものの、この日を境に新規陽性者数は一気に減少局面に突入しました。
その減少局面を確認した上で8/31に投稿したのがこちらです。

このnoteでは、予想より早く新規陽性者数が減少局面に入ったことを喜びつつ、医療面の負荷が9月前半にピークに達するであろうこと、その際に在宅死を少しでも減らすためにも、日々の新規陽性者数を減らす事にみんなで取り組むべきと書きました。

この直近予想は、ある面的中してしまい、一方で別の面では良い意味で外れました。
的中したのは、三重県内でも在宅死や搬送直後の死亡案件など適切な医療を受けられなかった故の死亡がおきてしまっていること
良い意味で外れたのは、新規陽性者数の減少率が想定以上に高かったこと。私たち三重県はなんと、1週間で0.5倍(つまり半減)以上のペースで減少させることに成功しています(お隣の愛知県がなかなか減少できずに苦しんでいるのとは対照的です。やはり新型コロナは都市部ほど手強い感染症という事なのだと感じます。)

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(オレンジ:愛知県 青:三重県の新規陽性者数 の推移を比較したもの)

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年代別の新規陽性者数も10,20代で顕著に減少しているのを始め、すべての年代で確実に減少傾向が持続しており、2学期開始による増加も今のところ見えてきていません。(本格的に営業が見え始めるのは今週からなので、まだまだ予断は許されない状況ですが)

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市町別、10万人あたりの新規陽性者数の7日間平均の推移をみても(人口の少ない町で数人陽性者が出ると一旦急増する動きは注意が必要ですが)全県的に減少傾向になっており、特に愛知県と生活圏が重なる北勢部での減少傾向は県民一人ひとりの取組が成果として現れているのだと実感できます。
紀南3市町においては1週間以上新規陽性者が出ておらず、一時的かもしれませんが「ゼロ・コロナ」すら達成できています。

官民が力を合わせた感染封じ込めの取組は今のところ【大成功している】と言って良いと感じます。スゴいぜ三重県民‼

医療への負荷は今が最悪の時期

ただ、良い話ばかりではありません。8/31のnoteで予想したとおり医療への負荷は現在、今まで最も大きくなっています。

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入院調整中・自宅療養数が4,000人に達した頃に比べれば自宅療養者数は半分近くに減りましたが、未だ多く方が入院できておらず適切な医療を全員が受けられているとはとてもいえない状況です。また、地元紙では新型コロナ以外の重病を抱えた方が適切な医療を受けることができないまま命を落としている、という匿名医師の声が掲載されました。

新規陽性者数自体は減っているにも関わらずなぜこんなことが起こるかというと、感染判明から重症化までには1週間ほどのタイムラグがあるからです。さらに重症者が回復するには1,2週間、場合によっては1ヶ月近く生死をさまよう場合もあり、一般的に重症病床の回転率は一般病床より遅くなるので重症者が時間差で積み上がっていきます。その結果、重症者数は新規陽性者数のピークから2,3週遅れてピークに達する、つまり、今がまさに重症病床の忙しさがピークに達している時期になります。(一方、発熱者を診断する外来はかなり余裕を取り戻しつつある) 三重県の場合コロナ重症病床と救急病床がほぼ同じため、新型コロナ患者以外の重い病状や重篤なケガをした方に対する救急治療ができる体制も同時に飽和して【県民全員が救急医療難民状態になっているのが現在の三重県】です。今はとにかく交通事故を起こさない、巻き込まれないこと。慢性疾患を持つ方はかかりつけ医の指示を守って体調を維持することが何より重要です。

医療体制が危機を脱するのは9月後半 通常体制に戻せるのは10月上旬?

では、この危機的状況はいつまで続く可能性があるでしょうか?

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あくまで簡易的な想定ですが、現在の減少局面(1週間で0.5倍)を今後も継続できたとすると、9/25前後に療養者数が767人を下回る事が想定されます。県で確保済の病床および宿泊料施設の部屋数の合計を下回るので、理論上は療養中の全員が医療従事者等による見守り体制の中で療養できるようになり、現在主たる感染経路となっている家庭内での感染伝播も遮断できるようになるので、事態がかなり改善すると期待できます。

ただ、現状の508床はコロナ以外の患者用のベッドを減らして実現している数ですので、実際にはこの半分、250床程度で運用できる状況まで療養者数を減らしておきたいところです。
延長された緊急事態宣言の解除予定日が9/30です。この頃には(大きな増加要因が生じていなければ)毎日公表される陽性者数は30人/日程度に減り、療養者数も500人を下回ります。そうなれば、本人が在宅を希望する人、療養施設で経過観察できる軽症者などとあわせ、250床でも充分余裕を持って医療提供できる状況が戻ってくると思えます。

つまり、今の減少ペースを持続できれば、延長された緊急事態宣言の解除(9/30)の頃には医療体制の切迫度が解消されると思われます。

医療現場のみなさま、あと3週間です

3週間というのは決して一旦馬力では乗り越えられません。適切に息抜きできるローテーションを組んで頂いて、誰1人脱落することなく、スタッフみんなで駆け抜けて頂けるよう、何卒よろしくお願いします‼

想定される第6波以降に備えて

ワクチン接種が進み、三重県内でも58%以上の方が1回以上のワクチン接種を終えています。これにより、第5波では特に接種が進んでいた65歳以上の高齢者で感染者数が激減しました。ワクチン接種率を高めておくことがその世代における感染者数の劇的に減らし、重症化を防ぐことは、この第5波で誰の目にも明らかになったと思います。第5波を乗り越えた私たちは、次の波に備えあらゆる年代におけるワクチン接種率を高めておくことが大切です。
特に感染拡大期の端緒となる10,20代の接種率を高めておくことが、次の感染拡大時、拡大の立ち上がり速度を穏やかにする鍵を握るのでは、と感じます。
一方、様々なアンケートでワクチン接種について「様子をみる」と答える割合が最も高い年代がこの年代であることからも、10,20代に積極的にワクチン接種することにメリットを感じさせるような取組が重要と思われます。(接種しやすい環境整備、接種による直接的なメリットの提供、この世代に共感を呼ぶインフルエンサーなどからの呼びかけ、副反応時に相談しやすく寄り添った対応を受けられる窓口の整備など)
また、この年代はかかりつけ医などを持たない方が大半と思われるので、医療機関に掛かってください、ではなく、この窓口なら話を聞くよ、という心のケアも兼ねた窓口をつくり情報発信していくことがとても大切だと感じます。

次に、今後感染が拡大しても医療が切迫しない社会を構築しておくことも大切だと感じます。経済を止めずに感染者を受け止められるようにする、日常の医療の中で新型コロナも対処できるようにすることが社会正常化を達成する上で不可欠です。そのためには

⑴早期診断・隔離ができる初診体制の拡充
⑵保健所業務の最適化に向けた見直しと常勤体制の拡充
⑶治療薬の処方体制確立による重症化率の低減
⑷地域内病院・療養施設連携によるコロナ病床の弾力運用が可能な体制構築

などの医療キャパシティの日常的な拡大の取組と平行して

a)δ株に対応した感染対策実施可能な経済活動ルール(例えばワクチンパスポートや手軽にPCR/抗原検査可能な体制等)の導入
b)感染対策と未接種者への差別の線引きがどこに引かれるのか、個人の自由と公共の福祉との折衷点を社会全体として定める法の制定
c)長いコロナ禍で傷ついた経済を立て直すための積極的財政支出の実施
d)リモートワーク、オンライン授業などコロナ禍で身につけたスキルを活用した新たな成長戦略の構築と実行

など、経済面での取組を今から準備しておく事が不可欠だと感じます。特に経済面は国として政府の旗振りが不可欠なものが多く、できるだけはやく政局から政策に立ち返ってほしいと願います。

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