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3回目の緊急事態宣言の効果は? そしてオリンピックを開催したら……

第4波が本格化する前、GW明け、そして10日前に感染推移について近未来予測をしてみましたが、その答え合わせ兼ねて、6/20に再々延長になった3回目の緊急事態宣言の効果を予測すると共に、オリンピック後までの、いつもより少し長めの予測をしてみたいと思います。(長めなのでズレも大きくなると思いますが…)

3回目の緊急事態宣言の効果は、予想より良い方向に発揮されました

5/9迄の段階では、緊急事態宣言によって新規陽性者数は

②5/7以降のR≒0.90(7日間で新規陽性者数が0.9倍、つまり1割減となる)

と予想していましたが、実際には5/14をピークに、R≒0.80(7日間で新規陽性者数が0.8倍)のペースを維持して減少を続けています。

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イギリス型変異ウイルスの感染力増に対しても、3密回避や飲食店の夜間営業自粛、マスクの着用といった日本型対策は有効に働き、毎週20%ずつ新規陽性者数が減っている結果となりました。

この傾向が続くなら、(地域に偏りがあるためまだまだ厳しいところはたくさん残りますが)全国的に見れば重症者数も5月末でピークアウトし、今後は減少に向かうと思われます。(死者数は6/10頃がピークと予想されます)

ただ、一方で、懸念すべき情報も見て取れます。

緊急事態宣言の効果は弱くなってきた

今までの4回の感染拡大における収束時の減少率を比較してみましょう。

 第1波(2020年4月下旬〜5月中旬・緊急事態宣言1回目):R≒0.55程度
(第2波(2020年8月上旬〜9月上旬・緊急事態宣言なし):R≒0.8程度)
 第3波(2021年1月上旬〜2月上旬・緊急事態宣言2回目):R≒0.7程度
 第4波(2021年5月中旬〜現在・緊急事態宣言3回目):R≒0.8程度

見ての通り、緊急事態宣言をだすことの効果が弱くなってきています。
(第2波の時は緊急事態宣言は出なかったため参考値)

既にマスコミ等でも繰り返し報道されていますが、慣れ、自粛疲れ、経済的に耐えきれないと判断した店舗の営業再開など、人間側の原因が考えられるとともに、ほぼ同じ対策を行っているはずの2回目と3回目の差は、国内に拡がっている新型コロナウイルスが英国型変異ウイルスに置き換わったことも大きく影響していると思われます。

第3波→第4波で重症化率の顕著な悪化も認められる

さらに、これも多く指摘されていることですが、国内に拡がる新型コロナが第4波でイギリス型変異ウイルスに置き換わったことで、目に見えて重症化する方が増えました。

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こちらのグラフは、第3波における新規陽性者数/入院療養者数/重症者数/死者数(すべて7日間平均の値)のピーク時を100に換算したものです。陽性者数の増加からそれぞれが何日程度遅れてピークを迎えるのかがよく分かると思います。

そして、これは偶然ですが、第3波と第4波では新規陽性者数のピークが共に「100」となりました。

それに対して入院療養者数は「100」→「105」とあまり変わっていないにも拘わらず、重症者数は「100」→「133(5/28時点)」と、明らかに重症になる割合が上がっています。

このことは、医療への負荷が長期化することを示します。(軽・中等症患者より重症者の方が治療に多くの人手が割かれる上に、入院期間も長引くことから)

6/20に解除した場合の、オリンピック開幕(7/24)頃の感染状況予測

さて、そんな第4波に対する緊急事態宣言が6/20まで再々延長された訳ですが、仮に6/20に今度こそ緊急事態宣言が解除された際の、東京オリンピック開幕7/24頃の感染状況を、以下の仮定を基に予測してみました

①6/20までR≒0.80(1週間で感染者数が0.8倍になる)が継続する
②その後は、R≒1.10程度で推移する(第3波前の状況と同程度)

ただし、実際に陽性者として見える化されるには2週間程度のズレが生じるので、新規陽性者数の増減は以下の様にるはずです。

①5/15〜7/4 R≒0.80 (7/4=6/20の緊急事態宣言解除から2週間後)
②7/5〜8/6 R≒1.10 (8/6=7/24のオリンピック開幕式から2週間後)

その結果がこちらです。

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この2つのグラフから読み取れる7/24開幕式頃の状況を言葉にまとめると

新規陽性者数7月上旬に1,250人程度で底を打ち、再び増加し始めています
 全国で1,000人を下回らないということは、おそらく東京においてステージ2に落とし切れていない(一部指標でステージ3が残っている)状況と思われます
入院療養者数も7月中旬に底を打って再び増加し始めていますが、「ただちに医療が切迫する状況ではない」と表現される状況でしょう
重症者数やっと底を打つ頃と思われます。ただ、実際には「第3波が解除された頃と同程度」であり、1か月程度で重症病床が満床近づく都道府県がでてくる可能性があります
死者数はこの時点でもまた底を打っていない状況でのオリンピック開会となります

これらの状況から、おそらく7/24の段階で、全国の多くの地域ではステージ2以下であり、今ほどは切迫感を感じない中での開幕、という形にはできるかもしれない、ということが予想できます。

オリンピック・パラリンピック閉会後まで中期予想をしてみると……緊急事態宣言下での総選挙もあり得る

では、オリンピック・パラリンピックはそのまま安全・安心に開催を終えることができるでしょうか?

1か月を超えるような長期の予想は余りやっていないのですが、今回は少し伸ばして、オリンピック開幕後も予想しました。

(※:以下に書かれていることはあくまで仮定に仮定を重ねた結果を記載しています)
オリンピック大会期間、及びその後の感染拡大状況を、③〜⑤の様に仮定しました。

①6/20までR≒0.80(1週間で感染者数が0.8倍になる)が継続する
②その後は、R≒1.10程度で推移する(第3波前の状況と同程度)
③オリンピック期間中(7/23〜8/8)および翌日8/9はR≒1.40程度に跳ね上がる
④その後は、パラリンピック期間中も含め、R≒1.10程度で推移する
⑤パラリンピック閉幕直後から4度目の緊急事態宣言を発出し、R≒0.8程度になる

オリンピック期間中は人流の増加に加え、友人宅にみんなで集まって観戦する「プライベートビューイング」や、メダル獲得を喜んだ夜間の路上呑みなどが全国で出てしまうことが予想されるため、かなり高めのR≒1.40程度になると予想しています。(第2波の立ち上がりがR≒1.60程度、第3波の立ち上がり初期がR≒1.50程度、第4波がR≒1.27程度だったことから類推)、オリンピック閉会後は、パラリンピック期間中も含めてR≒1.10程度まで戻ると仮定しました。その図がこちらです。

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この予測から1つ厄介なことが分かります。それは、オリンピック期間がちょうど2週間であるため、【オリンピック期間中は急激な新規陽性者増が起こらないだろう】ということです。大会期間中の感染拡大は、大会開幕前の結果が見えているだけで、微増はしつつも爆発的拡大は起きません。閉会式の頃で2,200人/日、入院療養者数も全国で22,000人程度です。

しかし、閉会式を終えた頃からオリンピック大会中の結果が表面化し始め、全国で急激に新規陽性者数の増加が認められるようになり、パラリンピックが開幕する8/24には、既に4,500人/日の新規陽性者数、入院療養者数も40,000人を超えている状況となります。

この状況でもパラリンピックを決行するなら、おそらく緊急事態は宣言されないでしょう。陽性者数は増え続け、パラリンピック閉会の9/5には新規陽性者数が5,000人/日を越えて58,000人以上の入院療養者で全国の病床が一杯になる状況が再び日本を襲います。

もちろん、この段階になれば4回目の緊急事態宣言発出となるでしょう。仮に3回目と同程度のR≒0.80を実現できたとしても、10月下旬までは緊急事態宣言を出し続ける必要があります。ということは、衆議院の任期満了に伴う総選挙の投票が10/24ですから、今回の総選挙は緊急事態宣言下での総選挙、となるでしょう。

ワクチン接種とインド型変異ウイルス拡大のどちらがより早く起こるか ギリギリのせめぎ合い

そして、オリンピック開催によって誘発されると想定できる第5波が実際にどの程度のインパクトになるかは

①ワクチンの接種がどの程度拡がるか?
②インド型変異ウイルスへの置き換えがどの程度の早さで進むか?

という2つの要素のせめぎ合い次第となるはずです。(なので予測が非常に難しく、重症者および死者の予測グラフは掲載しませんでした)

①ワクチン接種の速度が加速して国民の多くが2回のワクチンを終えていれば、新規陽性者数そのものが抑制され、医療機関の負荷も下がり、特に高齢者のワクチン接種率が高い状況に持ち込めていれば、重症病床も利用率も上がらないため、かなり有利にウイルスとの戦いを進められるはずです。

一方、もし高齢者のワクチン接種が完了する前、つまり、7月後半以前からインド型変異ウイルスの日本国内での市中感染が始まっていたら、第4波を大きく越えて、日本全国の医療機関に、すべての年齢層の重症患者であふれる深刻な未来もあり得ると感じます。

まとめ・オリンピックが第5波を誘発 鍵はワクチン接種とインド型変異ウイルス

まとめます。

①オリンピックによる感染の拡大は【オリンピック閉会後に顕在化する】
②パラリンピック後まで対策を先延ばしすれば第4波と同程度の第5波となり得る
③想定第5波による重症者数や死者数は、ワクチン接種とインド型変異ウイルスへの置き換えのせめぎ合いになる

このような悲観的な予想が外れることを、心から願っています。
そして、この悲観的な予測を効果的に回避する方法があります。それが

【東京オリンピック・パラリンピックの2020年夏開催を中止すること】

です。その後、日程を再設定し直せるのかどうかは分かりませんが、少なくとも、今年の夏の五輪開催を避けることができれば、確実に日本人の希望者はすべてワクチン接種を終えた状況で迎えることができますし、世界のアスリート達の状況も改善するはずです。

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2回のワクチン接種を終えてから2週間で体内に充分な抗体を獲得できます。
医療従事者のみなさんや行政のみなさんなど、日々全力で取り組んでくれています。
みなさん、自分が抗体を手に入れるその日まで、一緒に逃げ切りましょう!
(既に感染した方も、追加でワクチン接種すると非常に強い抗体が得られるので、ぜひ接種しましょう)

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