見出し画像

緊急事態宣言後のシナリオを想定してみた

4/8から始まった緊急事態宣言からまもなく2週間。
日本の住民全員を巻き込んだ新型コロナウイルス対策の成果が間もなく見え始めます。その前に現状を整理しておくことで、5/6以降に日本の対策がどう変化していくか見えてくると思われます。特に都道府県毎の状況に差が生まれている原因を探りつつ、今後の対応についていくつかのパターンを私なりに想定しておこうと思います。

実は緊急事態宣言の前から行動変容が始まっていた

前回のnoteでも4/12以降の感染者数の伸びに鈍化の兆しが見えると書いたのですが、その後も傾向は持続し、私が検討のために使っている計算式上での再生産数(R0)が2.0→1.45と大きく下がっています

ちなみに、私が採用しているモデルは以下の計算式で表せます
(X日の感染者数)
 =([X-7日]の感染者数)
 +{([X-7日]の感染者数)-([X-14日]の感染者数)}×(再生産数:R0)

感染したひとは7日間感染力を持ち、その間に再生算数と同じ人数に感染を広げる、というかなり単純なモデルです。

この再生算数(R0)の減少は緊急事態が宣言された4/8以前(具体的には3/30頃)からの行動変容が反映したものですが、そのお陰で緊急事態宣言の効果が見え始める4/22頃に2万人を超えるだろうと予想していた感染者数の伸びが大幅に抑制され、13,000人を切るくらいの人数に抑えられそうです。

画像1

最良のシナリオをたどれば4/23以降新規感染者数が減り続けるようになる

そこに緊急事態宣言による外出自粛効果が重なることで、4/22以降の拡大速度がさらに下がることが期待されます。再生算数「1」以下、仮に「0.9」まで下げることに成功すると、4/22まで1日当たり800人近い新規感染者数が確認されるけれど、4/23以降の新規感染者数は300人を少し超える程度に急落したのち安定~徐々に減り始めるようになります。
このような推移をたどるのがおそらく厚労省の対策班が目指す最良のシナリオです。

この「最良のシナリオ」に乗れたかどうかの判断は、5/6の感染者数が17,200人以下に抑えられるか? が目安になります。この人数以下であれば、日々の新規感染者数は少しずつ減っているということであり、終息に向けたコースに乗ることができた、と判断できるのです。

ただし、最良シナリオであったとしても4/22に想定される13,000人からたった2週間で4,200人増となります。しかもその場合、後述しますが東京より地方での拡大がその主要な部分を占めると思われます。よって感染が爆発する地方にとってはかなりのインパクトが想定されます。

最良シナリオをたどった場合の5/6以降の日本の姿は

この最良のシナリオを選べた場合、5/6以降は全国一律の外出自粛要請は段階的に解除され、クラスター対策(ver2.0)+行動変容社会への呼びかけが展開する形に移行すると思われます。ただし、高齢施設や医療機関などはしばらく一般の出入りを可能な限り制限したり、職員一人ひとりに協力してもらいつつ、外出をできるだけ減らしてもらって施設内感染を防ぐ取組は続けられると思います。

クラスター対策にどんなバージョンアップが行われるかは分かりませんが、私の予想では、

1)新型コロナウイルスの感染を判定するルールが変更される
 「PCR検査一択」という判定方法を変更し、「胸部CT+臨床像を総合的に医師が判定した場合」などとする
2)無症状の濃厚接触者に対して片っ端からPCR検査を実施する
 対策1)によりPCR検査に空きができるので、これをクラスター対策に特化して振り向けて無症状/軽症の感染者を見つける
3)無症状/軽症者は専用の施設へ
 対策2)で見つかった陽性者は無症状/軽症専用の施設(ホテル等)に入所してもらって隔離/健康観察する(重症化の兆候が見られたら病院へ移送)
(加えて、家庭内感染を防ぐためにも自宅療養は可能な限り避けるよう軽症者も専用施設に誘導する)
という形が考えられます。
一方、行動変容社会への呼びかけ、という点では
4)集客施設やイベント、飲食店の営業形態を工夫しつつ再開
 無理なくソーシャルディスタンスを保てる集客施設の営業方法やイベントの実施方法について知恵を出し合い、できるだけ感染防止措置を取ることができた事業所から事業再開されていく

という方法になると思っています。これらの取組で、市中にいる無症状/軽症の陽性者を捕捉、社会から隔離することでクラスター連鎖を断つことができ、行動変容が一般化した社会になることで、散発的な感染発覚は出てくるものの大きな感染爆発をさせずに社会活動を再開できる目処がつくと思います。

一方、5/6時点で感染者数が28,300人を超えるようなら、かなり深刻な状況に突入

一方、最悪のシナリオの場合はどうなるでしょうか?
予想グラフから分かる通り、仮に非常事態宣言に伴って実施した対策が一切効果を発揮せず、再生算数(R0)=1.45のまま推移した場合は感染者数が28,300人程度になります。この人数を超えてしまう、つまり、何らかの事情により状況が現状より悪化すると、この先感染者数はぐんぐんと伸びていきます。対数ではなく実数グラフの方が実感が湧きやすいので貼っておきますが、R0=1.45のまま推移した場合でも、5月末には全国の感染者数が100,000人を超えると想定されます。

画像2

対策がかなり効果を発揮した最良シナリオの場合、感染者数は下の空色のライン以下に留まります。

5/6時点で感染者数が28,300人に近いか、これを超えるような状況だと、今回の外出自粛要請/指示では事態を改善の方向に向かわせられなかった(より副作用の大きい対策が必要)、と結論づけることができます。この場合は自粛要請以上の対策を可及的速やかにうたないと、日本全土で医療崩壊が決定的になり、かなりの関連死が出てきてしまう、かなり過酷な状況に陥ってしまうと思われます。厚労省の専門家チームが勉強会で紹介していた「対策を打てなかった場合の想定」が現実になってしまう、それがこの最悪ルートです。

万が一このような事態に進んでしまった場合、状況を打開する鍵になるのは現在でも休業要請がされていないオフィスや工場など、ライフラインには関わらないすべての事業所に対する出勤業務の自粛指示(要請より強く、拒否した場合企業名を公表される取組)が残されたウイルスへの有効手段になると思われます。
現在クラスターが発生している場所として職場感染が多いため、ほぼすべての職場を出社を自粛することでクラスター連鎖を断つことができると考えられるからです。

17,200人以上、28,300人以下の感染者数だったなら???

では、最良のシナリオは達成できなかったけれど、最悪のコースほど悪くない、という状況になったら、5/6以降はどうなると想定されるでしょうか?

この場合、緊急事態宣言が5/6で終了せず全国的な外出自粛が更に継続される、という未来が待っているはずです。外出自粛が更に徹底されるように追加の施策が考えられると思いますが、基本は今と変わらず「出歩かない」を後1ヶ月くらい追加する近未来になると思われます。

ひと-ひと接触80%減や急速な感染拡大を防ぐにはどこに力点を入れれば良いか考えよう

具体的に私たちが何をすれば良いか考えるため、日本全国ではなく各都道府県での感染拡大状況を見てみましょう。

画像3

もっとも感染者の多い東京都ですが、実は拡大のペースは4/12以降低下しています。
(実は、全国での影響はこの東京都でのペース減少が反映しています)
しかし再生産数は1未満に届いておらず、緩やかになったものの指数関数的拡大を続けています。
よって、4/22以降に現れはじめる緊急事態宣言の効果がどの程度出ているか?により、今後の対応が変わってくると思われます。
1)R0が1未満に下がった場合
 感染は収束の方向に進み始めますので、5/6迄は外出自粛を続けつつ、上でも書いた「行動変容社会」に移行するための「事業再開プラン」の検討を始めるような呼びかけがスタートすると思われます。
2)R0が1以上で拡大が続く場合
 R0が1未満になるまで、今の取組が延長されるでしょう。いよいよ事業の継続が苦しくなってくるので、それらの追加支援が必要になるかもしれません。

画像4

大阪府、神奈川県から石川県までの感染者数が180人を超え始めた道府県は、今まさに指数関数的拡大が始まっている状況であることが分かります。
これが意味するのは、市中に見えない感染者が広がり始めている段階だということです。これらの地域は、誰が感染者であっても(自分が感染者であっても)おかしくはない、と考えて行動する必要があります。今は東京と同等以上に、これらの都市の状況が危険です。4/22以降に大幅に拡大にブレーキが掛からない限り、これらの都市では5/6以降も外出自粛を強力にすすめる必要が残る可能性があります。とにかくひととの接触を減らす、外出を減らすことを徹底して進める必要があるのがこれらの道府県です。

また、これらの道府県では医療機関での院内感染が多数の病院で見られています。これは《感染していると思っていなかった》通院者や、勤務外時間の病院関係者が市中で感染し持ちこむ、という状況が起きていると思われます。新型コロナウイルス患者の受入を行っている病院だけでなく、すべての病院での感染拡大防止の取組が急務と思われます。

画像5

石川県より感染者の少ない県を拡大すると、これらの県では指数関数的な感染者の拡大はまだ起こっていない様に見えます。つまり、(少なくとも2週間前の段階では)市中での感染拡大はまだほとんど生じていないと考えられます。ただし、ところどころで感染が”ジャンプ”する日があることが分かります。

例えば群馬県、4/10→11の1日で感染者数が35人→79人と、一気に倍増していますが、これは老人ホームを舞台にした集団感染が原因です。

他のジャンプでも原因は高齢者施設での拡大という例が多くを占めます。つまり、外出自粛と共に、高齢者施設内の感染防止対策を徹底する事が、感染者数を増やさないためにもっとも効果が出る対策だと思われます。

また、現状ではまだ事例が確認されていませんが、地方都市のスーパーの過密はかなり危険な状況にあると思えます。特に食事前の時間帯、なぜか家族総出と思えるような人数で買い物に来る人達が多くおり、小さな子ども達が店内を走り回る、レジ前には長蛇の列が複数できる、店員にマスクせずに商品の有無を問いかける、などという状況が生まれています。ここはぜひスーパー側も来客者の入場制限など強制的に過密状況を緩和する対策を取るべきではないかと感じます。利用する方々も、買い物は家族から代表一人だけが外出する、という方法でひと-ひと接触の機会を削減するという作戦に協力しましょう。

まとめー5/6はゴールではないけれど、重要な到達点になり得る

長く考察を書きましたが、5/6をすぎればすべて元通り、ということにはなりませんが、かなり状況が変わり得る転換点にさしかかっています。

この転換点を、前向きな気持ちで過ぎることができるか? 沈んだ気持ちで過ぎることになるのかは、私たち一人ひとりの行動いかんに掛かっています。

ぜひひと-ひとの接触を避けるための取組を、自らの工夫を重ねて実行しましょう。
検討すべき優先順位は次の通りです

家に居る > 外出せざるを得ないならひとと2m以上距離を空ける > どうしても密集してしまう、感染リスク高いところに出かけるならマスクを付け続けて、なるべく話さない

その上で、こまめに石けん手洗いをする、という対策でウイルスを拾わないように予防しましょう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?