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ワクチン接種の混乱は菅首相が原因だとわかった件 & 今すぐ完了予定期日の1か月延長を‼

このnoteの要約

○今起きているワクチン接種の混乱は100%、菅首相が「7月末迄に65歳以上の高齢者全員にワクチンを接種する」と決めたことが原因である
○7月は今のペース(100万回/日以上)で接種が進むが、8月は40万回台/日に減り、逆に10月は150万回/日を超えるペースで接種する体制が求められる可能性がある

○希望する国民に対する接種の完了期日を11月末から12月末に見直すことで、現場の負担は減り、安定した体制で安心して接種事業を実施できる

以下、そう考えるに至った根拠を述べていきます。(長文注意)

ワクチン接種の混乱はなぜ起こっている?

ワクチン接種が混乱している。
国が「7月末までに希望する65歳以上の高齢者にワクチン接種を完了させよ!」と要請(と言うより恐喝?)していたにもかかわらず、6月後半になって一転、要望数の1/3程度しか供給できない、と言い出したからです。接種を加速させるべく体制を拡大していた現場市町村や都道府県ははしごを外された形になり、受付済の予約をキャンセルせざるをえないなど、大きな負担増に繋がっています。

ヤフーニュースで「ワクチン 不足」とワード検索した際に見つかった最初のワクチン不足を伝えるニュースは6/20、福島県の内堀知事が知事会で「一般接種向けワクチンの配分量が市町村の希望量に達していない」として早期の追加配分、配分計画の提示を国に求める記事です。

このような要望の声に対して田村厚生労働大臣は6/22のニュースで「高齢者の接種分は足りている」「医療機関で在庫がたまっている可能性もある」(現場の責任とでも言いたげ?)と述べています。

この発言以降、多くの方がこの問題について「接種の遅い自治体が在庫を大量に遊ばせているのではないか?」と現場のどこかに悪者を探したり、「いやいや、現場が頑張って予想以上に接種能力を高めたから需給バランスが崩れたんだ」とみんなの頑張りの裏返しだから誰も悪くない、と主張したりしていたわけですが、わたし自身、どうにも腑に落ちませんでした。それは、まさに田村厚生労働大臣の発言にある【高齢者の接種分は】足りている、という言い方に引っかかったからです。

つまり…
「もしかして、国の【中のひと】達は、高齢者以降の一般分が遅れることを最初から分かっていたんじゃ???」
という疑念です。そこで、簡単な近似モデルを作って自分なりのワクチン接種計画を立て、どこがボトルネックになったのか/混乱の原因になったのか? 検証してみました。

自己流ワクチンの接種計画モデルの考え方

ワクチンの供給計画を作るのに大切なのは、以下の3点です。

①ワクチンの調達
②ワクチンの配送
③ワクチンの接種

この3点がそれぞれバランス良く速度を上げていくことで、ワクチンをできるだけ早く国民に行き渡らせることが可能になります。

この中で、私たちが耳にタコができるほどニュースで触れていたのは ③ワクチンの接種 についての計画です。すなわち

③ワクチンの接種 は以下の計画で実施する
 ⑴65歳以上の高齢者については、7月末までに完了させる
 ⑵1日100万回接種を目指す
 ⑶11月末までに希望する国民に接種を完了する

です。これを読み替えると以下のようになります。

⑴7月末に4,000万人(※1) が2回目接種を終える
  (※1) 4,000万人=医療従事者等約400万人+65歳以上約3,600万人
⑵⑴を達成する為に必要な目安の接種数が1日100万回接種
⑶11月末に1億人(※2) が2回接種を終える
  (※2) 1億人=12歳以上人口約1.14億人×90%(希望者の割合:端数切り捨て)

続いて、②ワクチンの配送について確認してみます。

②ワクチンの配送 は以下のような流れで実施できていると仮定
 ⑴ある1か月に接種できるワクチンは、前月に流通在庫できた量で決まる
 ⑵ある1か月の流通在庫のワクチン量は、前月のワクチン供給量で決まる
 ⑶流通在庫、および、供給されたワクチンは、翌月全量使い切る

実際にはこのような理想的な配送はあり得ませんが、今回はワクチン配送が理想的にできていると仮定しています。

もし、この理想的な配送想定で検証した結果、現実に起こっているようなワクチン供給の混乱が起こらないとすれば、混乱の原因は配送にある可能性が示唆されます。一方、理想的な配送をしても混乱が生じる事が分かれば、他に真の原因があると分かります。

最後に、①ワクチンの調達について考えてみましょう。これは首相官邸が大雑把な情報を提供してくれています。

実際にワクチンが日本に最初に到着したのは2021年2月でした。

そして同2月中に医療従事者向けの初回接種が始まってます。ただ、これは日本に着いてからの日程なので、実際の「供給」はそれ以前から始まっていたと考え、②ワクチンの配送で仮定したスケジュールを逆算して、2020年11月から供給準備を開始、12月に2021年2月接種分の供給を受けた、と仮定します。つまり

③ワクチンの供給 は、以下のスケジュールで実施される
 ⑴ファイザー製1億回分:
   2020年12月〜2021年6月末までの必要な時期に供給
 ⑵ファイザー製7,000万回+モデルナ5,000万回=1億2,000万回分:
   2021年7月〜9月の必要な時期に供給
 ⑶ファイザー製2,000万回分:
   2021年10,11月の必要な時期に供給
☆各期間内で、ワクチンは遅延無く希望数通り供給される

このワクチン供給計画も、計画を最も理想的な形で実現できると仮定しています。加えて、注射器の調達など他の資材については想定していません。(ワクチンの調達速度がボトルネックであると仮定している)
また、実際にはモデルナ社製が6月から供給開始されており、この計画よりも更に前倒しされている状況と思われますが、それでも混乱が生じているので、供給の遅れが生じていたり、供給の速度が混乱の主因では無いとも仮定してモデルを作成していきます。)

簡易的なモデル作成のための近似ルール

さらに、ワクチンの供給計画を計算しやすくするために、以下のような大胆な近似を採用しています。

近似1:ワクチン1回目と2回目で空ける期間を1か月とする
   (実際はファイザーの場合3週間、モデルナの場合4週間)
近似2:ワクチン1回目を接種したひとは100%2回目を予定通りに接種する
   (実際は体調の不良や急な用事などでキャンセルするひとが居る)
近似3:接種ミスや管理ミスなどのロスは起こらない、ワクチンの使用期限切れも生じない
   (実際は接種ミスや冷蔵庫の管理不備などでロスが生じている)
近似4:2〜5月の1回目接種数は実施数を基に見やすい数字に切り上げている  
   (6月は実施数より大きい数字にしないと7月末に完了できないため参考値)
       近似     現実
   2月   30,000    28,530
   3月  1,000,000   848,929
   4月  3,000,000   2,145,263
   5月  9,000,000   8,924,539
  (6月 25,970,000 18,058,680)

簡易的ワクチン接種計画その①:現在起こっている状況とは…

いよいよ、上記仮定や近似に沿って、簡易的なワクチン接種計画を作成してみます。
まずは、破綻した現在の状況を再現してみましょう。条件は以下の通りです。

○2月〜6月は「65歳以上の高齢者全員が接種を終える=7月末に2回目接種者数が4,000万人に達する」
○7月の1回目接種も6月並の人数の予約を受け付ける

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7月末に「2回目接種の累計数」を4,000万人にするためには、6月になんと2,597万人が1回目接種を受ける必要があります。そして、その方々は7月に2回目接種を受けます。これと同じ人数1回目予約を7月に入れるとどういうことが起こるでしょうか?なんと、7月の1か月接種回数は5,000万人超、1日あたり平均167.5万人にも達する状況になります。現場の方々の苦労たるやとんでもない状況ですが、それが可能になるよう体制を強化して、国から届くワクチンを現場の方々は待ち構えていました。

【しかし、ワクチンは届きませんでした……】

そう、実はこれ、実現できません。
なぜなら、仮に8月の1回目の予約を「0」にしても、6月迄に契約済の1億回分のワクチンを使い切ってしまい、7月後半から8月分に充当するワクチンの供給が受けられないんです。

供給を担う国の担当者は、かなり早い段階で「このペースでは供給すべきワクチンが足りなくなる」と分かっていたはずです。しかし、「⑴65歳以上の高齢者については、7月末までに完了させる」ためには、ブレーキを呼びかける事ができなかったのでしょう。

簡易的ワクチン接種計画その①’:修正した結果(今後の想定)

そこで国は「⑴65歳以上の高齢者については、7月末までに完了させる」条件を堅持しつつ、突然ワクチンがなくなってしまう、という状況を起こさないための奇策にでます。それが

一般向け(つまり、7月1回目接種希望分以降)として要望されたワクチン量に対して、供給量を絞る

という現在起こなわれている方法です。しかし、一方でもう一つの到達目標「⑶11月末までに希望する国民に接種を完了する」は残っています。この2つの条件を両立できる今後の供給計画を簡易モデルで実現すると、次のようになりました。

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・5月の段階で供給不足が生じないよう、7,8月の1回目接種数を大幅に下方修正(6月1回目比で約1/4)
・一方で、11月に2回目接種の累計数が1億人に到達するよう、9,10月の1回目接種数は6月並に再び急加速必要
・その結果、8月は平均43.5万回/日のペースに体制を急縮小し、一転して10月は平均150万回/日を実行できる体制が必要

特に後半になればなるほど、接種に消極的/懐疑的なひとが増え、現場でのコミュニケーションのトラブルや無断キャンセルなども増えるでしょうし、希望しない人達をどうやって接種にまで結びつけるか? 今まで以上に複雑な取組が増えるのは目に見えています。

このようなアップダウンの激しい接種計画でも、実現不可能ではないとは感じますが、現場の方々の負担は現在以上、限界値を超えるものになるのは容易に想像できます。

「高齢者7月完了」の目標設定が諸悪の根源である証明

現在のワクチン接種の混乱と、今後の楽しくない想定が分かったところで、本当に「⑴65歳以上の高齢者については、7月末までに完了させる」条件が100%諸悪の根源なのかどうか? を検証してみましょう。

おそらくですが、国のワクチン接種担当者は当初「8月末には高齢者のほとんどが、年内には希望者全員がワクチン接種を完了できる」見込みで計画を立てていたと思われます。その計画を菅首相に情報提供した時にどのようなやり取りがなされたのかは想像するしかありませんが、菅首相は五輪や選挙日程などと見比べて

「8月末では遅い! 1か月くらい前倒ししろ‼」

と指示したのではないでしょうか?(あくまで私の妄想ですが…)
 たった1か月くらいなら気張ればできるだろ? と、菅首相ならその影響の大きさを考えずに怒鳴りつけそうな、そんな雰囲気を感じます。
(そして、高齢者の8月末予定が怒鳴った結果7月末予定に前倒し目処が立ってきたところで、もう一つの目処である年内完了も、1か月前倒しで11月と言いだした?)

しかし、その違いはとんでもなく大きなものでした…

簡易的ワクチン接種計画その②:仮に高齢者完了が8月末、希望者全員が年内の目標だったら?

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この計画は、以下のような条件で作成しました。

○5月までの接種者数は変更なし
○8月末までに2回目接種者の累計数が4,000万回を超える
○12月末までに2回目接種者の累計数が1億回に達する

この大きな違いに、驚きを隠しきれませんでした。

なんと、6月以降、1回目の予約受付数を約1,400万回/月ペースを続けることで、凹凸無く年内に希望者全員の接種を完了できます。

高齢者の達成目標を8月末から7月末に1か月前倒ししただけで、

(従来あったと思われる計画)
 6月:80万回/日 7月以降:90数万回/日のペースで年内完了
  ↓
(首相指示によって変わった現計画)
 6,7月:100万回/日以上 8月:43.5万回/日 9月:100万回/日以上
 10月:150万回/日 11月:77.5万回/日の凸凹ペースで11月末完了

このように、非常に複雑怪奇な接種体制の構築を現場に強いる計画に変わってしまいました。

これが、タイトルに書いた「ワクチン接種の混乱は菅首相が原因」と断じるに至った理由です。

今からでも完了予定期日の1か月延長をすれば、現場の負担はかなり軽減される

続いて、タイトル後段に書いた「今すぐ完了予定期日の1か月延長を」の根拠を示します。
7月末までに2回目接種者の累計数4,000万人は既に既定路線で現在に至っていますので、この状況を少しでもマシにするにはどうすれば良いか? しかし一方で、できるだけ早くワクチン接種は終えたいのは国民の殆どの方が感じる、偽らざる本音です。しかし、予約数が急増/急減を繰りかえすより、「今後は一定のペースで受付を続けます」となった方が、多少完了期日が延びたとしても、先の見通しもできて、逆に安心度は増すのではないでしょうか? また、現場の方々も計画が立てやすくなると思えます。

そこで、現在からでも完了目標を1か月先延ばしするとどんな変化が起きるか確認していました。

<7月末に65歳以上全員接種完了後、希望者全員を11月末→12月末に変えた場合

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<7月末に65歳以上全員、11月末に希望者全員を接種完了させる場合(再掲)>

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2つの表を見比べて頂くと、8月の接種回数に大きな凹みができるところまでは、もう取り戻すことはできませんが、9月以降の体制について、かなり改善が見込めることが判ります。

(現在のまま進む想定:11月末完了)
 9月は8月比で2.3倍の体制、10月は3.4倍、11月は1.78倍の体制を準備する必要がある
 ↓
(12月完了予定に変更できた場合)
 9月は8月比で1.7倍、10,11月は2.4倍、12月はほぼ同規模の体制で対応可能になる

このように、準備すべき体制の凹凸がかなり減り、安定した体制での接種が可能になります。見立てもしやすく、場所や人員も確保しやすく、予約も受け付けやすくなると思われます。

まとめ・今すぐ接種完了の期限目標を1か月延長すべき

長文になってしまいましたが、
○簡易的に新型コロナワクチンの接種計画を検討できるモデルをつくることで
○現在生じているワクチン接種の混乱は、65歳以上の接種完了目標を7月末にした菅首相の指示が原因である事を証明し
○今後の混乱を減らすためには、接種完了目標を1か月延長することが有効であることを論じました

国民や地域、地元の声に耳を傾ける議員であるなら、与野党問わず、今すぐ国に対してワクチン接種完了目標の見直しを提言すべきです。そして、菅首相は、周囲の議員から指摘を受ける前に、自ら国民や現場の声に耳を傾け、計画の見直しをはかるべきです。

完了目標の先延ばし提案に対して、大きな非難の声が上がるでしょう。
しかし、現在のまま走り続けることは、国民一人ひとりにとって、現場で汗をかく行政職員や医療従事者のみなさんにとって、よりダメージの大きな結果となります。こんな時に決断をして舵取りすることこそが「政治決断」だと、私は思います。

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