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医療現場が落ち着くにはどのくらい耐えれば良いのか? 想定してみた

やっと政府がブレーキを踏む方向に舵を切りました

新型コロナウイルスの感染のこれ以上の拡大を抑えるために、年末年始に掛けて(12/28~1/11)、GoToトラベル事業の一時停止が決定されました。

正直な気持ちとしては、【やっと】それなりのメッセージが伝わるブレーキを踏んでくれたという気持ちですが、この方針転換は評価したいと思っています。

実は、11月の後半から目に見える形で感染拡大そのものにはブレーキが掛かっていました。具体的にはR=1.5→1.1程度に減少していました。
(この「R」は「7日後の感染増加率」を示しています。よくニュースに出てくる再生産数(Rt)とは似ていますが少し違う値になります)

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この減速は政府が「勝負の3週間」と言い出す前から始まっており、いわば国民の「自助」「共助」の結果が反映したものです。

一方、政府が「勝負の3週間」と言い出してからの3週間の間では、目に見える減少傾向は現れていませんでした。(R=1.1前後をふらふらとしていますが目に見えて下がっている様子は見えない)

感染の抑制は
①国民一人ひとりの自己防衛や支え合い(いわゆる「自助」「共助」)
②政府の打ち出す対策(「公助」ですね)
この両輪で達成されるものですが、現時点では、①国民全体の自助・共助によるブレーキ聞いていたものの、政府の打ち出す対策はむしろアクセルとして効いていて、減速に至ってはいなかったわけです。

この状況の中、やっと政府が重い腰をあげてブレーキを踏む決断をしたのは良かったと思います。(もっと早ければとの思いはありますが、もっと遅いかも? そもそもブレーキ踏むつもりないかも、と危惧していたことがひとまず杞憂に終わってホッとしています)

いつまで我慢したらもう一度経済再建に取りかかれるの?

感染症は人の事情や気持ちを忖度はしてくれません。(医学面においても経済面においても)命を守るためには、非常に微妙な対応が求められますし、状況に応じて臨機応変に取り組みの方向性の舵を切るのは仕方ないと思えます。
ただ、今までも今回もそうなのですが、政府の対応について「いつでも方針転換するという前提(アクセルとブレーキの仕組がちゃんと整っている事業設計」「どんな場合に舵を切る(方針転換する)のかという条件提示」がないため、多くのひとが右往左往し、言ってしまえばすべての人が「裏切られた」感を持ってしまう状況が生まれています。

今回のブレーキも「1/11までやって、その後についてはその時の感染状況を見て判断」と言われてしまうと、「何をどう判断するのか?」分からないために国民は出たとこ勝負せざるを得ないことになります。

現在のブレーキの一番大きな要因は「医療現場の切迫」であるなら、例えば「2万5千人を超えている入院患者数を半分以下の1万2千人に減らすまで頑張れば、政府のブレーキを緩めることができる(GoToトラベルを再開する)」という目標を立てて貰えると私たちとしてもゴールが見えるのですけどね……

仮に入院者数を半数まで減らす事を目標にするなら?

例えば、現在2万5千人を超えている入院療養者数を半数以下、1万2千人迄減らす事を目標にした場合、強いブレーキをいつまで踏み続ければ達成できるでしょうか?

なぜ1万2千人を今回私が当面の目標に据えたかというと、第1波での最大入院者数が11,935人、第2波が13,724人だったので、当面この数を下回る事ができれ、医療現場の切迫感は和らぐのでは? と見込んでいるからです。

ここから仮定の計算をたくさんします。

☆新規陽性者数について
・12/15時点の新規陽性者数を2,600人と仮定
・12/23まではR=1.1で新規陽性者数が増え続けると仮定
・12/24以降、GoToトラベル全国一律停止決定のインパクトで移動が減少し、Rが1未満にさがると仮定
☆入院療養者数について
・12/15時点の入院療養者数を25,400人と仮定
・入院療養者は平均10日で病院を出ると仮定
 (国の治療・退院の目安に「10日」があるのでこの数字を採用)
・つまり、翌日の入院療養者数は
  今日の入院療養者数+翌日の新規感染者数-10日前の新規感染者数
 で計算できると仮定

この2つの仮定を基に今後の入院療養者数の推移を予測した結果をグラフにすると以下のようになります。

R=0.8まで下げることができた場合
第2波のブレーキがほぼR=0.8でした(上のグラフを参照ください)
今回も同程度にブレーキを効かせることができた場合が以下の通りです。

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入院療養者数が1万2千人を下回るのは1/27と想定されます。

R=0.9まで下げることができた場合
第2波ほどのブレーキが効かない場合はどうなるでしょうか?

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新規感染者数がなかなか減らないため、入院療養者数の減少もゆっくりになり、入院療養者が1万2千人を下回るのは3/2まで伸びると想定されました。

1月末まではブレーキを踏み続ける事が求められそう

医療機関が落ち着いて対応できる為に「入院療養者数を現在の半分以下、1万2千人以下にする」事を当面の目標と掲げた場合、とても簡単な仮定の計算ですが、第2波を乗り越えた頃と同じ程度の対策(感染拡大している都道府県毎に独自に緊急事態宣言を発出して県境を越える移動の制限を呼びかけていました)を1月末までとり続ける必要がありそうだ、と予想できました。
ここまで医療現場の状況を回復させて初めて、もう一度経済の立て直しに取りかかる環境が整います。

もしその手前で手綱を緩めてアクセルを踏み始めてしまったり、そもそも今回の全国一律停止決定がブレーキとして機能しなかった場合……
かなり深刻な状況に進んでいく、という仮定のグラフを最後に載せておきます。

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こんな未来を迎えずにすむよう、みんなでしっかりブレーキを踏んで経済再建に踏み出せるような環境を整えましょう!

(蛇足ですが)もし11/20の3連休前の時点でブレーキを踏めていたら…

今回と同じ予測について、時間をさかのぼって適用できていたら? の「if」を計算してみました。
11/20に新型コロナ対策分科会がGoToトラベルの見直しを強く要請した段階で強いブレーキに取り組めていたらどうなっていたでしょうか?
11/20にブレーキをかけて11/30からR=0.8に下がったと仮定したグラフです。

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この「if」が実現していたら、年末年始は注意深くという前置きはあっても、もう少し手綱を緩めた形で迎えることができたかもしれません……
あくまで「if」なので今更ですが……

(12/24追記)今日以降の動向に注目(減ってほしい:祈)

年末年始のGoToトラベル停止という「ハンマー」が振るわれた12/14から10日が経ちました。今まではほぼ予想通り、R=1.1程度で推移しています。

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もし12/14の「ハンマー」が効果的に行動変容につながり感染にブレーキが掛かるならそろそろ陽性者数に「変化」が出てくるはず

第2波のブレーキと同じくらい(R=0.8程度)まで落ちてほしいけど、最悪そこまで行かなくてもいいので、せめて1未満(少しずつでも減っていく状態)で年末を迎えたいですね……

明日からの陽性判明者数、要注目です!

☆減り始めたら……

 今の行動を継続しつつ、年末年始は在宅年越し

☆減り始めないなら……

 より強力な対策(例えば、全国で年末年始は県境を越える移動を自粛するよう呼びかけると共に全飲食店の営業時間短縮要請をおこなう、など。もちろん休業補償込で)が必要になる

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