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パパ活してたら間違って異世界に召喚されてお詫びとして女神とパパ活してたら人類最強になっていた件(4)

辺り一面の草原である。
遠目に岩肌の山々が見える。
「ここは……、一体……」
視線を戻すと、美しい背の高い女性が目の前に立っていた。
スラリと伸びた白い足に、青を貴重にした光沢のあるドレス、輝くような金色の長髪が風にたなびいて揺れていた。
「おかえりなさい」
目の前の美女は懐かしそうに微かに目元を綻ばせて、続けて言った。
「おかえりなさい。勇者、ギデオン様……」
「あ、ああ……」
俺は思わず是とも否ともとれない返事をした。この世のものとは思えない美貌に気圧されたからだ。
「本当に、本当に、お待ち……、おま、おま……」
「おまえ、誰だ!?」
美女が唐突に目を見開いて、俺を指差しながら叫んだ。
「お、俺?」
俺は俺を指差して美女に尋ねる。
そして答える。
「俺の名前はやすぴー。やすぴー・フェルナンデス13号」
それを聞いて美女は、はああぁ、とため息を吐いた。
「あなたの名前のことはいいわ。ところで貴方は異世界の人だけど、勇者ギデオンじゃないわね?」
「勇者ギデオン? 誰だそれ?」
それを聞いた途端、女神は右手のひらで額を覆い、とても困ったような様子を見せた。
「なによ……これ。再開を楽しみにしてたのに、あの子ったら……」
「あの子? もしかしてあの、異世界カフェの女性店員か? 彼女も訳の分からないことを言っていたが」
「そうよ、あの子よ。勇者ギデオンを連れてくるはずだったのに、まさかこんな、冴えない中年男性を連れてくるなんて」
そう言われて、俺は少しムッとした。
「おいおい、俺を変なところに連れてきたのはお前らだろう? その勇者ギデオンとやらのことは知らんが、とっとと元いた世界に返してくれ」
「ハハハハハハ!!」
ビクッ! 女が突然、大声で笑い始めたので俺は驚いて後ずさった。
(なんだコイツ、あの女性店員に似ている……)
「元の世界に戻る? 戻す? 何を言っている。そんな器用なことが出来る訳がないだろう」
「はあ?」
冗談じゃない。ここが異世界であることは分かるが、本来呼ばれるべきは俺じゃなく勇者ギデオン。いわば人違いで召喚されたと言うことだ。それなら俺がここにいる意味は無い。なんか、歓迎されてるような雰囲気でもないしな。
「いや、分かった。あんたがあの女店員が言っていた女神サマなんだろう? それなら、早く帰してくれ。日本に、ヤポン、分かるだろう?」
「知らんな。そんな場所は知らん。それに召喚することは出来ても送還することなど出来ない。術者もどこから呼び出したか知らないのだから」
女神の話をまとめると、俺は知らん場所の知らん人(女神)から召喚され、知らん土地に来てしまい、何も知らん女神は、俺を元いた場所に戻す方法も知らんとのことだ。
「……あのなあ? これは誘拐だぞ? 分かる?」
「お前みたいなおじいをどこに連れていこうが誘拐とは言わんわ。誘拐とは子供とか女がされるものだ」
「な、なんだと! おじにも人権があるんだぞ! 知らんのか!?」
「知らん」
「き、貴様……」
「分かったら早よどこへなりと行け。私はドッと疲れた。帰って寝る!」
「こ、この野郎!」
俺は女神に掴みかかった。ざまあみろ、この世界に警察はいない。女に掴みかかろうが、押し倒そうが、自由なのだ。自由最高!
ビリビリビリビリビリビリ!!
「うぎゃぁぁああぁぁあぁあぁあぁぁあァゐァァアァァァ」
突然、俺の全身を超強力な電流が走った。そして、全身を大火傷して、白い煙を吐きながら俺はばたりと倒れた。
死んだ……。お父さんお母さん、今までありがとう。僕の人生は幸せだったよ。そう、この女神に会うまでは。
……。
……。
……。
死んでない?
俺はすっくと立ち上がり己の両手のひらを見た。……何ともなっていない。さっきは大火傷していたはずなのに……。
「ほう、固有スキル超回復か。お前のような冴えない中年男にも、一つは取り柄があるものだのう」
「一言余計だよ。ところで、なんで俺は生きてるんだ?」
女神はクックックと楽しそうに笑いながら言った。
「この能力は、固有スキル超回復じゃ。さっきの私の攻撃を受けて目覚めたようじゃな。これは前途有望じゃぞ」
「そうか、ところで、なんでお前さっきから、年寄りみたいな口調になってるんだ?」
「女神は長命だからのう。油断するとこういう口調になる。気をつけねばのう」
「……俺が冴えない中年男だったら、お前はジジババじゃねぇかっ!!」

つづく

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