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最近流行している「DePIN」の解説とその事例

この「Web3最新動向」マガジンでは、Web3の世界で流行っていたり、注目度が上がっている事柄についてわかりやすくまとめていきます。
さて、今回のテーマは「DePIN」です。
DePINとは、Decentralized Physical Infrastructure Networkの略です。少し無理やりですが日本語に直すと、「分散化された、物理的なインフラのネットワーク」となります。
日本語にしても結構わかりづらいですね。
今回はこのDePINについて、概念からわかりやすく解説していきます。
またDePINは2023年12月ごろから急に話題になり、関連しているプロジェクトの多くが注目されました。今回はなぜそうなったのか、そしてどのような事例があるのかという点も、事例とともに紹介していきます。

DePINとは何か

DePINの定義は、ざっくりとされてはいるのですが、かなり抽象的で難しいです。また、定義が抽象的なだけあって事例も多岐にわたります。
その定義は、CoinGeckoの記事によると以下のようになっています。

DePINとは、コンピューティングパワーや実世界データのマーケットプレイスのような、現実世界の施設のためのブロックチェーンベースの管理システムを開発するプロジェクトを意味する。

https://www.coingecko.com/learn/depin-crypto-decentralized-physical-infrastructure-networks (翻訳)

やはり少しわかりづらいと思うので、もう少し簡単に言い換えてみましょう。

DePINとは、何らかの現実世界のインフラをブロックチェーンを利用して向上させようというプロジェクトのことを意味する。

意訳や簡約化を含んだ説明にはなりますが、こんな感じになります。
かなりかみ砕いた説明ではあるのですが、それでもやはり抽象的でわかりづらいので、ここからは実際の事例を紹介していこうと思います。事例を通じて概念を学んで、その後に改めてこちらの説明を見ていただけると、より分かりやすいかと思います。
「現実世界のインフラ」をブロックチェーンを利用して向上させるプロジェクトのため、DePINのプロダクトには何らかの物理的な機械が関連してきます。そういった点も意識すると理解が容易になるかもしれません。

Hivemapper:ドラレコを買って運転するだけで稼げる?

先ほどの説明で出てきた「何らかの現実世界のインフラ」とは例えばどのようなものを指すのか、この説明には現在結構流行しているHivemapperがいい例えになると思います。
Hivemapperは、簡単に言えば「Drive to Earn」のアプリケーションで、Solana上で展開されています。
Hivemapperに登録したユーザーは、専用のドライブレコーダーを購入し、それを取り付けた自身の車を運転し地形情報を送信することによって、$HONEYトークンを手に入れることができます。
ユーザーから見た説明はこのような感じですが、実際Hivemapperはどのような目的のために作られたのでしょうか。詳しく見てみましょう。
現在、我々が普段使う地図アプリの中の情報は、GoogleやApple等の少数の大企業がほぼ完全に占有している状況です。また世界的な地図アプリの構築には多くのコストがかかります。
そして問題点として、現在の地図アプリはユーザーに対価を支払うことなくユーザーのデータを収集している点があります。さらに地図アプリは、特に発展途上の国において、更新されていない古いデータを提供していることも少なくありません。
Hivemapperは、$HONEYトークンを使用したインセンティブを通じてユーザーが常に地図の更新を行うようにして、これによって世界規模で地形のマッピングのコストを削減することを目指すDePINです。また地図を作るだけではなく既存の宅配業者や配送業者に、ユーザーらによって最新の状態に保たれている欠落した住所やその詳細な情報を提供することも視野に入れているようです。
このように、Hivemapperは「世界地図」という現実世界のためのインフラを専用のドライブレコーダーを使用して分散型で作成するプロジェクトです。
ブロックチェーンを用いて、世界地図という現実のものを向上させるという、とても分かりやすいDePINの例ですね。
Hivemapper本家サイトから、世界中での現在のマッピングの度合いを見ることができます。日本も都市部はかなり利用者がいるようですが、地方のほうはほとんどいないので、穴場なのかもしれません。
ちなみに現在この専用のドライブレコーダーがかなり高騰しているようで、メルカリでかなり高額で転売されているそうです。

Filecoin:ストレージ系ブロックチェーンもDePINの仲間

FilecoinはIPFS(Inter-Planetary File System)を使用して設計・運用されている分散型ストレージネットワークです。Filecoinが属するこの分散型ストレージネットワークも、DePINの仲間の一つとされています。
FilecoinやArweaveなどの分散型ストレージネットワークは、ブロックチェーンを使用した分散型のデータの保管サービス、いわゆるクラウドストレージのようなサービスを展開しています。通常のクラウドストレージと大きく違う点は、ブロックチェーンへの記録としてデータを保存するため、記録したデータが永続的に保持される可能性が高いことと、一度アップロードした物は基本的には変更ができないというところです。
Filecoinでは、ユーザーはFilecoinのトークン$FILを使用することによって、Filecoinブロックチェーン上に自分の意図したデータを刻み付け、データを保管することができるようになります。
これらの分散型ストレージ系のプロジェクトは、「未使用のハードドライブ領域をネットワークに貸し出す」という形で現実世界のインフラのネットワークを形作っており、この点をもってDePINの一部分だと数えられています。
FilecoinやArweaveなどのプロジェクトは「分散型ストレージ系ブロックチェーンプロジェクト」として区分けされていた印象が強いですが、現在はDePINの一部として吸収されたようです。

ICP:流行の分散型クラウドサービス

ICPはInternet Computer Protocolの略で、独自のブロックチェーンを作成しているレイヤー1プロジェクトです。
先ほどFilecoinのことを「分散型のクラウドストレージ」と表現しましたが、これをICPに当てはめるならば、ICPは「分散型クラウドコンピューティング」を行うネットワークです。
ICPはブロックチェーンを使用した分散型のネットワークで、AWSやGCPなどと同じように動くクラウド・サービスを作成しています。AWSなど従来のサービスでは、計算なども提供されたサービスのサーバーで行いますが、ICPではネットワークに参加している世界中の何万台ものコンピューターにこの計算を行わせる、というプロトコルになっています。
とてつもなく簡単に表現すれば、Web3版のAWS、と言ったところでしょう。
DePINブームが世界で始まってから、ICPは特に大きな盛り上がりを見せているようです。
日本でも有名な方が反応しており、見逃せない動きです。

Leohio氏は新しいイーサリアム基盤のレイヤー2プロトコルを作成している方で、shingen.eth氏も有名な発信者の一人です。
両者とも、Web3界隈で有名な方で、多くの方に認知されています。どちらも見たことある、という方も多いかもしれません。
DePINブームによってICPが活気を取り戻した結果、ICP上のNFTプロジェクトMOTOKO Ghostsの取引量が大幅に増える、という結果にもつながるなど、現在の流行を形成しています。

ICPはブロックチェーンを使用して現代のクラウドコンピューティングを向上させる技術であり、この点をもってDePINの定義である「何らかの現実世界のインフラをブロックチェーンを利用して向上させる」に当てはまります。DePINのPがPhysicalのPなので、これは電子的なものでDePINには当てはまらないのでは?と思うかもしれませんが、実はそういうわけではありません。クラウドコンピューティングやクラウドストレージも、コンピュータやデータストレージを基盤にしており物理的なものに含まれます。FilecoinやICPなども、立派なDePINということになります。

まとめ

DePINに関連する事例を通じて、DePINの意味や概念については理解できたでしょうか?ここで改めて、最初に提示したDePINの定義を見てみましょう。
CoinGeckoの記事より:

DePINとは、コンピューティングパワーや実世界データのマーケットプレイスのような、実世界の施設(facilities)のためのブロックチェーンベースの管理システムを開発するプロジェクトを意味する。

https://www.coingecko.com/learn/depin-crypto-decentralized-physical-infrastructure-networks  (翻訳)

私がわかりやすく言い直したもの:

DePINとは、何らかの現実世界のインフラをブロックチェーンを利用して向上させようというプロジェクトのことを意味する。

Coingeckoのものはまだ少しわかりづらいかもしれませんが、私の言い直したものについては幾分かわかりやすくなっていると思います。
現実世界のインフラとは「世界地図」であったり「クラウド・サービス」であり、DePINとはこれらをブロックチェーンとそのトークンを用いたインセンティブを用いることで分散型で作成し、従来のものより向上させようというプロジェクトのことです。
少し前にツイートした「a16zが2024年に期待すること」というツイートスレッドの中に、「AIの学習にブロックチェーンと報酬を」という項目がありました。これもDePIN関連の話題になります。他のメディアの記事でも「DePINは10年以上注目されることになる」と言われていることもあり、個人的にも目が離せない領域となっています。

おまけ

ちなみにですが、DePINという名がこのジャンルに名付けられたのは2022年の9月のMessariというリサーチレポートを出している企業(とても良質なのでおススメ!)のツイートが初出であり、2023年の後半から出始めたものではないです。現在のブームは第二次ブームだということですね。

さいごに

私が代表を務めるクリプトリエでは、企業によるNFTのビジネス活用を簡単かつ迅速に実現する、NFTマーケティング・プラットフォーム「MintMonster」を提供しているほか、法人向けにweb3領域のコンサルティングや受託開発サービスを提供しています。Web3 / NFTのビジネス活用にご興味ある企業様はお気軽にお問い合わせください。

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