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2023年のビジネス環境<仮説>

皆様あけましておめでとうございます。2023年のスタートにあたって、主にスタートアップや既存企業の新規事業の戦略を考える観点から、どのような変化が起こるのか、自分なりの仮説を考えてみました。

もとより私は金融や国際情勢といったものについての専門家ではありませんので、以下に書くことについて正しいかどうかということで言えば、おそらく正しいとは言えない部分もあるでしょう。

これが正しい、というつもりは全くありませんが、皆様ご自身の検討や思考の材料として、ご自身の考えをまとめるための言ってみれば壁打ちの壁として使っていただけるなら幸いです。

■下からのグローバリズムの終焉と上からのグローバリズムの加速


トランプの反グローバリズム

思えばトランプ前大統領がMake America Great Againというスローガンとともに反グローバリズムの政策を掲げて当選したのが2017年、すでに6年前のことです。

グローバリズムの進展が特に先進国の国内産業にダメージを与え、そこで働く人々にとって不利益を生じていたことから反グローバリズムの動きが生まれていましたが、この動きを決定づけたのが昨年のロシアによるウクライナ侵攻とも言えるでしょう。

これに先立って新型コロナウイルスの蔓延に伴い国際間の人流や物流の動きが滞っていたことなどが伏線としてありましたが、こうしたさまざまな要因が重なって「グローバリズムは終わった」という言い方をする方もいます。

私自身は、この「グローバリズムは終わった」というのは一面では正しく、また一面では正しくないのではないか、と考えています。

正しい、つまりグローバリズムが終わったと考えられるのは、言ってみれば基礎的なモノづくりや国内でまかなえる産業の部分についてです。ここではこれを「下からのグローバリズム」と呼ぶことにします。例えば新型コロナウイルスが蔓延し始めた初期においては、マスクや PPE の不足が各国で問題になり、日本もその例外ではありませんでした。

 こうしたモノを作ることについての国際分業については今後、グローバリズムによる国際分業から国内での生産への移行も生まれてくるように思います。

デフレ基調からインフレ基調に

ただ、これによって国内産業が復活することは、メリットばかりでもないでしょう。各国の、特に先進国での国内産業が復活するということはコスト的には高い生産になっていき、それが物価に反映するということです。つまりこれまで100円ショップで気軽に買えていたようなものが100円では買えなくなるということです。円安といった他の要因もありますが、私の身近なところにもあったいくつかの独立系の100円ショップは、ここしばらくですべて姿を消しました。またチェーン展開している100円ショップでも、100円以上の品揃えが増えていることは皆様お感じになっているのではないかと思います。

こうして、後に述べるインフレ基調・物価高基調の経済が、グローバリズムの終焉とともに起きてくると考えておくべきだと思います。

リモートワークの定着とポルトガルのノマドビザ

一方で人の移動という面でいうと、特に物理的な生産設備に依存せずに価値を生み出せる、いわゆるノマドワーカーと呼ばれるような頭脳労働者を中心にグローバリズムは今後一層進展するのではないかと思います。ここではこれを「上からのグローバリズム」と呼ぶことにします。これは新型コロナウィルスの蔓延によってリモートワークやオンライン会議が広範囲に普及した結果、どこにいるかを問われない働き手が増え、自分のいる場所を自由に選べるようになったからです。こうした人々の動きをとらえようと、例えばポルトガルのノマドビザのようにこうした働き手を自国の経済の中に取り入れようとする国が出てきている、という事象も見逃せないでしょう。

動ける人から、人は動いて行く

こうした動きは人のグローバリズムを一層加速させることになると思いますし、こういう人たちを取り込めない国は、製造業を中心とした国内産業は復活するかもしれませんが、ソフトウェア産業は復活せず、いわゆる頭脳労働者が流出して行くという状況に陥るかもしれません。一方で、生活環境のよい国なら、海外の仕事をしながら国内で生活し続ける人たちが残り、さらにはそういう人たちが移り住んでくるかもしれません。日本にとって、これは一つのチャンスでしょう。

■日本を取り巻く地政学的環境の変化について

元には戻らないロシアのポジション

日本にとってロシアは国境を接する隣国であります。このロシアが先に述べたようにウクライナへの侵略戦争を仕掛け、核兵器の利用までちらつかせながらその軍事侵攻を正当化しようとしていることは、必ずしも国際社会全体とは言えませんが、特にいわゆる西側諸国からは大きな反発を受けていることは事実です。

そしてこうした西側諸国の一員であり、また国境を接する国として日本は、ロシアのウクライナ侵攻に対して明確に反対と非難の意思を明確にしています。こうした中で日本とロシアの関係は、一時期考えられていたような融和の方向ではなく、少なくても当面はしばらく冷えた関係が続くと考えるべきでしょう。

中国の動向 ますます下からのグローバリズムは終わる

そしてこうした動きとともに大陸中国の台湾をはじめとした領土拡張の動きが今後どうなるのかという点は、日本の近い将来にとって大きな影響があります。

中国はロシアのウクライナ侵攻がどのような結末になるかということを注視分析しているでしょうし、その結果の如何によっては自らの軍事的な領土拡張の試みを実際の行動にうつす可能性もあります。こうした中国の動きはもともと発生していた米中対立を一層深刻化するものであり、その意味でもますます「下からのグローバリズム」は終焉を迎えるという考え方が妥当なように思います。

このようにロシアや中国の動き、さらにはミサイル発射を繰り返す北朝鮮の存在も相まって、東アジア、特に日本の国際的・地政学的な立場は大変不安定なものになっていると考えるべきでしょう。現に次年度の予算案においても防衛費の増額が決定されるなど、戦後以降これまでとは明らかに違う流れになってきています。

台湾を手中にしても、本質的には変わらない中国の体制の課題

ただ、中国の問題に関して言えば、これは中国の政権維持の問題とも深くかかわっている動きと見るべきかと思われます。仮に中国が台湾や南シナ海方面での領土侵略拡張に成功したとしても、一時的な国内の不満や反発の動きは抑えられるかもしれませんが、長い目で見た時に中国の体制が抱える問題解決には寄与しないのではないかと思います。

東アジアは当面不安定化

その意味では、軍事的・外交的な中国の動きの如何に関わらず、中国の国内問題が解決しない限りはこの東アジア地域の不安定な状況は解決しないのではないかと考えています。そしてそれは取りも直さず日本にとって不安定な状況が続くということでもあります。

■国際的な経済金融の動向について

アメリカのリセッション(景気後退)と物価高の継続

歴史的な米国市場の株安で終わった2022年でしたが、アメリカのリセッション入り景気後退は2023年になってから顕在化すると言われています。2022年にはFRBの高金利政策による株安が発生しましたが、仮に高金利がおさまったとしても、先に述べたような下からのグローバリゼーションの終焉によって物価高・インフレが元の水準まで戻るということは、おそらくアメリカにおいても考えにくいのでしょう。

また高金利もそう簡単におさまるとは考えにくいところがあります。短く見ればコロナショックから、中期的に見ればリーマンショックから、長期的に見れば80~90年代からの低金利政策によって通貨の流通量が増えていることで経済の上昇を計ってきた政策が、ここに来て大きく裏目に出ていると見ることもできるのだと思います。そうだとすれば、短く見てもここ数年、長ければ数十年にわたって取られてきた政策の巻き戻しが起きるということで、大きな経済的な停滞ないし落ち込みが、それほど短くもない間続くと考えておいた方が良い状況ではあると思います。

ドル高が招く発展途上国の通貨安と経済不安=政情不安

こうした中でドル高にともなう自国通貨安が途上国を中心に大きな経済的ダメージを発生させ、それに伴って経済の不安定化が起きた場合に、経済にとどまらない社会的な混乱が増幅される可能性もあり、これは単に中国やロシアと国境を接する地域だけの問題ではなくなるとも考えられるでしょう。

ただ、景気循環自体がここで歴史的に終止符を打つとは考えにくく、いつまで続くか分かりませんが、経済的なダウントレンドが終わった後には復活する時期が巡ってくるのだろうと思います。ただ問題は、それがいつになるのかは誰にも分からないし、ひょっとするとこれまで歴史的に経験した回復までに要する期間よりも長くなるかもしれない、と想定しておかなければならないのではないかと思われます。

■日本国内の社会経済環境はどうなるか

下からのグローバリズムの終焉で、物価高基調

以上述べてきたような国際的な動きの中に日本もありますので、大きな社会や経済の流れは日本においても変わらないと言えるでしょう。ただ日本において特徴的なのは、少子高齢化と各国が利上げに動いた中でも原則的なゼロ金利政策を最近まで維持してきた日本の経済政策にあります。

反グローバリズムで国内産業を復活させる方向に、というのが大きな流れにはあるとはいえ、日本の場合少子高齢化によって働き手、特に若い働き手が減少しているという現実があります。一方で日本は公式にはこうした国内産業の復活に資するような労働力の海外からの受け入れをしていません。事実上こうした外国人がたくさん日本に入っていることは言ってみれば公然の秘密ではありますが、それにしても国内産業をの復活の担い手になるほどの人数を継続的に確保できるのかはよくわかりません。

一方で日本は、諸外国と比較してもいわゆるデジタル化や機械化・自動化といった動きに関して必ずしも進んでいる国ではないということを考えると、引き続き人的な労働力に頼る部分が大きいままになっているのが現状だと思います。これが急に変われるかと言うと、これは経営者の理解力やデジタルスキルによるところも大きく、一時的な設備投資も要するため、急に何かが変わるということはなく、ゆるやかな変化として起きてくるのではないかと考えています。

もしこの予測が正しいなら、日本の国内産業の復活は緩やかなものとなり日本国内での生産による必要な物質の量の充足ということには時間がかかることになるため、物不足や物価高中需要に応じた供給が満たせないことによる物価高は当面継続していくと考えておくべきなのでしょう。

金利をあげると国家財政が逼迫するので、インフレ基調、円安基調

また、若い働き手が少なく新しい収益源(新規事業)を見つけあぐねている会社も多い中で、税収が伸びる期待は難しく、現に日本は次年度の予算も大きく国債に頼っています。国債は国の借金ですのでこれに対しては利息を付けなければいけませんが、高金利に誘導すれば当然のことながら国債の利息も上がっていくことになります。この国債の利息が上がるということは国家財政を大きく逼迫することになるため、日本政府はおいそれとは高金利政策をとることが難しいでしょう。そうなれば低金利のままにインフレを容認するといった方向に日本政府の経済政策は行かざるを得なくなるのではないでしょうか。仮に税金が上がらなかったとしても物価高によって家計は苦しくなっていくということになると思われます。

こうしたことも踏まえて、日本政府としては貯蓄から投資へといった方向性を打ち出し現行 NISA 制度の大幅な刷新、いわゆる新 NISA の導入などを打ち出していますが、これは高度成長期以降続いてきた貯金はするけれども投資をしないという日本国民一般の考え方にはすんなりとは馴染まないものであるため、これが定着するには1世代=30年程度は必要なのではないかと思われます。

人が入ってくる国になるか、出ていく国になるか

この思考を切り替えられた人たち、若い世代が中心になると思われますが、そうした人たちとそうではない人たちの差が、ますますいわゆる「格差」として開いていくというのが、ここ数十年の状況になるのではないでしょうか。そして、仮にこの考え方に馴染めなかった層から馴染めた層への風当たりが強くなると、馴染めた人たちから「上からのグローバリズム」に乗って日本国外に出て行く人たちというのも出てくるかしれない。こうした流れに乗った人たちにとって、日本の国内が働きやすかったり住みやすい場所であるかという点については、どちらかというとネガティブな要素が多いと考えられるからです。

例えば現政権が今後どの程度国民の支持を得られるのか、また仮に新しい政権ができたとしても、こうした大きな流れの中で政権の指導者が変わるだけで大きく日本の状況を変えられるのかというと、これについてはかなり時間を必要とする問題である可能性もあり、その間日本は政治的には若干不安定な状況が続くのかもしれません。

■今、何をやるべきか

以上、私なりの仮説を述べてきましたが、今(年)何をやるべきなのかということを最後にいくつか考えたいと思います。例えば金利をどうするかといったことや、あるいはロシアや中国の動きといったことは、個人でできることの範囲を超えますので、主に自分や自分の属する組織ができることに絞って考えてみたいと思います。

次の時代に向けての仕込み

まず大きくは次の時代に向けての仕込みをする、ということが2023年の課題だと思っています。先に述べた通り次の時代がいつやってくるのか、それは誰にも分かりません。経済的に世界経済の回復がいつ頃おきるのか、あるいは不安定なロシアや中国の動きがいつ落ち着くのかといったことは誰にも分かりません。

ただ、いつかこうした動きが一定の決着を見て次の時代に向けて動き出す時がやってくると私は思っています。その時までにいくつか考えておかなければいけないし、将来のビジネスチャンスになると思うことがあります。

健康に関する安全保障(保険、創薬、医療)

一つは健康に関する安全保障の問題です。新型コロナウイルスについてはその大規模な流行から3年が経過しましたが、まだこれについても十分な解決を見ているとは言えない状態にあると言えます。また、サル痘のような新しいウイルスの流行も現実の問題として懸念されています。さらには、地球の温暖化によってこれまでまさに凍結されていた新しいウイルスが溶け出して人間の社会に影響を及ぼすことも懸念されています。こうしたことから創薬・製薬や医療の分野もさることながら、保険といったことに至るまで健康に関する個人の安全保障をどのように確保していくか、というところには将来のビジネスチャンスが生まれるであろうと考えています。

下からのグローバリズム衰退への対応

また国内産業やブロック経済化した世界の中で産業を起こしていく「下からのグローバリズム」の衰退に対応する産業政策や新たな産業のイノベーションというところにもチャンスが生まれてくるでしょう。いかにグローバリズムの時代に近いリソースとコストで生産していくか、という課題です。効率化・省力化・自動化とともに、国内・域内のサプライチェーンを、いっそう精密に動かしていくことにビジネスが生まれる気がします。

特に日本は、先ほども指摘した少子高齢化の中で、どのように人手のかからない形で経済を復活させていけるのかという問題があるでしょう。人口が少なくなる分だけ工場用地の確保などは容易になるというメリットはあると考えられます。こうしたメリットを活かしながら人手が少なくても必要以上のコストをかけずに物を生産できるような体制が構築できるかという点にイノベーションの余地があるでしょう。

上からのグローバリズム進展への対応

そして、それと呼応して、ますます進展するであろう「上からのグローバルリズム」に対しても、国境と関係なく移動する頭脳労働者のニーズをいかに捉えて、それを自国とその産業にとってプラスの動きとして定着させるのか、ということは、個別の会社・組織としても、自治体や国の産業政策としても、考えておくべき課題になると思います。

笛吹けどr>gの現実に乗れない多数の国民をどうするか

また r >gの現実に乗れない多くの国民を放置することは、物価高・インフレが基調となる社会の中でますます人々の生活を難しくしていくことになります。この国の人にとっていかに r の側に乗って家計を賄えるようにしていくかという中にも、今後のビジネスチャンスがあるように思います。

■本年もよろしくお願いいたします

以上、私が断片的につかんでいる情報とそれに基づいて必ずしも専門知識があるとは限らない中で考えた仮説ではありますが、何かしら皆様の今年(以降)の新規事業やスタートアップの事業戦略を考える上で参考にしていただけるのであれば大変幸いです。本年もよろしくお願いいたします。 


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