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開業20周年!感謝!

 介護保険制度が始まった2000年、私は在宅医療専門のたんぽぽクリニックを開業しました。それまで愛媛県には、外来も病床も持たずに、在宅医療だけを行うクリニックはありませんでした。
 先日、開業当初からお付き合いのあるケアマネジャーに、こんなことを言われました。「先生が開業した頃は、在宅医療なんて誰も見向きもしなかったのに、今は誰も彼もが在宅医療ですね」。当時は、医師仲閒からも「在宅医療だけを専門でやるなんて変わったやつだな」という目で見られていたと思います。しかし、超高齢社会から多死社会を迎えようとする今、医療の在り方は大きく変わってきています。「治す医療」から「支える医療」へと価値観の変革が進み、超高齢社会における社会保障問題を解決する手段として、在宅医療は国策として推進されているのです。
 今年10月1日、たんぽぽクリニックは開業20周年を迎えました。これまで多くの患者さんの在宅療養や家での看取りに関わらせていただきました。20年の歴史を振り返って思うのは、患者さん一人一人との関わりが、かけがえのないドラマだったということです。それぞれの患者さんが望む最善の選択を、ご本人やご家族と一緒に悩みながら考えていくことで、私たちは大きく成長させていただきました。
 開業当時は、患者さんから「医師が家に来てくれるだけでありがたい」と驚かれたものでした。余命の限られた方の自宅に初めて訪問した際に「本当に家で看取れるのか」と不安を漏らされたこともあります。医療的ケアを必要とする患者さんが退院し、在宅医療で引き受ける際、病院の医師から「病院と同等のことを自宅でもできるのか」と言われたこともあります。しかし、時が経つにつれ、「近所の人がたんぽぽクリニックに診てもらい、自宅で看取ってもらったので、うちもお願いします」という人が増えてきました。私自身が在宅医療に対する技術や理念が不十分だった頃から、患者さんやご家族から頂いた経験と学びを、自分の中だけに留めておくのではなく、地域社会に還元していきたいと思います。
 現在、松山市には約10カ所もの在宅医療専門クリニックがあり、自宅での看取りに対応できる在宅療養支援診療所も増えました。私は、「在宅医療のレベルが上がると、地域住民のニーズが上がる」と実感しています。今では、「在宅医療はどのように自分たちの希望を叶えてくれるのですか?」と聞かれるようになりました。在宅医療の質が問われる時代になったのです。

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