グラジオラスを書いた日の詩
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スクリャービンと玩具の兵隊。燕子花のブルウな雨情。夢一夜と三日月を微笑んで見てゐるシリウスの窓辺には薔薇の匂ひが似合う。
あの時、どんな氣持ちだった?
只、翳つた横顔は口元だけで笑ふ。
最期の七日間、綺麗な水だけを栄養に生命を耀らせてゐた貴女の儚ひ指先は鍵盤を弾きたかつたことだらう。
思ふ存分飛ぶと良い。甘やかな幸福にその身をゆだねて、六月の恋に郷愁を燻らせて。
西瓜の淡ひ青臭さ、潮風とマーチングバンド、古民家を改装した喫茶店で飲む店主こだはりのアマレロに映したヴイジヨンで占う星賣りの男の恋のゆくえ。
各駅停車の蛍の寂しさ行きに乗車して、鼻歌を幾人かのこびとと。暖色のくちづけと壁時計の憂鬱、子どもたちの聲を意識が追いかけた。欠けた切符とポツケごしに会話した。
もう外はすつかり溟ひから氣をつけるんだよ。麦酒はちよつと温くて、発泡は抜けていた。
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