夏至のうたたね、棕櫚の木、カンカン帽


募る、花の色にほぞを噛む、どんどんと濃く鮮やかになつてしまつて。
天蓋のついた寢臺ベツドで見た、みどり色の雨晒しのゆめ。

さかなたちが建てた圖書館としよかんで、背表紙に指を滑らせた。
愛にかんする文獻ぶんけんは尾鰭をひらめかせて
わたしを嘲笑うように次々と凍っていつてしまつた。

「はだかで睡ることがすつかり 癖づいてしまつたよ」

ヘリオトロオプ芳る。
淨瑠璃ぢやうるりを太夫がくちずさむのだ、小首を傾げ
小さく紅ひ唇から、夏至がうとうととうたたねるに。
棕櫚の木の下、カンカン帽、眩んだ目はきつと愛しすぎたせゐでしやう。

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