六月九日
夜更け深くから雨が降るのだと云ふ。鳥たちのつゐばむマスカルポオネチイズのやうに正常で幸福だ。
連絡事項は蔦に絡めとられ、生籬の奥でくぐもつた呼吸を繰り返す。むせかえるような息苦しさの放送コオド。
時間と政治は浄らかでなければ、とシャマンが云ひ、民も同意する。はらひきよめたまへと燃された大麻の煙がアイコニツクな微笑の実に皮肉めいた優しさを覆い包む。
ストライプシャツ、顔は翳になつて見えなゐ。夏の突然の駿雨。水玉模様のスカアトの翻ったサマは夏の夢……。寝苦しく汗ばんだ皮膚に吹く風の見せるそれ。
リュウジンヅタの伸びてゆく先に入道雲。
くしゃみの瞬間、まばたき、宇宙がまぶたの裏で反転した。窓から流れ込むどろどろに溶かされた晴れ間の切れ長な青さ。
顔を動かすとそれらは、さらりと消えた。
駅の雑踏だけがやけに乾いている音質で近ひ。
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