0628 夜更け
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深呼吸、森の翳でひつそりと月を見上げる獣は、つい先月投獄された恋文の安否を気にしている。
陰鬱さがやってきた時には、冷えた水を美しい江戸切り子の硝子盃で一杯喉に流し込む。氣に入りの古書店の窓辺に溜まつている夏の日差しの影との端境を記憶の裡の指先でなぞるやうにして。
冷えた水が通る私の軀、クリスタルのように透明にすきとほつて見えてくれるだらうか?
裸のむねとむねをひたりとくつつけて、わたしの中の月光、あなたの中に流し込んでしまう。署名。夜行列車、車内には誰もいない。窓の外は暗くてそこに映し出される森の輪郭と私の寂しさばかりが、遠くの家の明かりと混ぢつて吐息を雲に変えてしまふ。
酷ひ雨が土砂土砂と降つたせいか、妄言ばかりが胸にうずく。
添削は、詩情のねじれている内に済ませてしまふことだ。
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