翠玉色の翅の話


あくび、芍薬、Ficedula narcissina黄鶲(きびたき)の鳴き聲。平面的で真っ直ぐ伸びる陽光の、ひなびた溜め息の音。ゆっくりと細かく揺れている呼吸、まるで生命を慈しむ余りに終わりの来るのをおそれてゐるひとの泣き聲に似て。

真っ青。踊りなど習っていないのに踊る體は、みずみずしい季節の言祝ぐ坂道が紡ぐ六月を知っている。

明晰夢の中に居る時のやうに、陽炎はゆらゆらと揺れ木製の建物の輪郭を暈かす。うなだれて痩せた犬はエナジイを使はぬやうにとうつぶせて動かない。

安楽椅子、濃く淹れた珈琲かへ、構造色に染まる地球。この星は大きなシャボン玉のやうだ。けっして割れないシャボン玉。

かはゐた道を往くひと、書き込まれた文字片手、そそのかされるままに続かされるひなた。水をかへた花瓶の花が少し萎れてきたこと。

注釈は水楢に止まるアイヌ緑小灰を愛してしまつてゐる。

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